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野党候補猛追 新潟県知事選次第でデタラメ政治も激変
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/191657
2016年10月12日 日刊ゲンダイ 文字お越し
米山隆一候補は激戦を制するか?(C)日刊ゲンダイ
@前知事の不可解な不出馬表明の裏で見え隠れした原子力ムラの底知れぬ闇に少しは光が当たっていく
16日に投開票の新潟県知事選が全国から注目を集めている。「原子力ムラ」VS「再稼働反対」の対立構図が鮮明になり、この国の針路を決する分岐点になる可能性があるからだ。
4選出馬を表明していた泉田裕彦前知事が突然、立候補を取りやめたことで、当初は自公推薦の森民夫前長岡市長が圧勝とみられていた。無投票の声もあったほどだ。ところが、脱原発候補の登場で情勢は一変。9月29日の告示直前に名乗りを上げた野党系の米山隆一候補(共産・社民・生活推薦)が、「柏崎刈羽原発の再稼働反対」を掲げて猛烈な追い上げを見せている。
「最大野党の民進党が自主投票を決めたこともあり、森は楽勝と思われていた。その緩みはあった。告示前の世論調査では森が7ポイントのリードでしたが、どんどん差が縮まり、今では1ポイント以内。ほぼ横一線です」(自民党関係者)
予想外の大接戦に自民党本部も青くなり、続々と幹部クラスを新潟に送り込んでいるが、そもそも、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働に慎重だった泉田前知事が出馬を撤回した経緯からして不可解なものだった。県内シェア6割を誇る地元紙「新潟日報」が、県出資事業のトラブルをめぐる疑惑を連日のように報道し、泉田批判キャンペーンを展開した結果、「この状況では自分の声が有権者に届かない」と出馬取りやめに至った。その裏には、官邸や原子力ムラの暗躍があったとされる。現地で取材を続けるジャーナリストの横田一氏が言う。
「原発推進の官邸や東電にとって、柏崎刈羽原発の再稼働を認めない泉田知事の存在は目の上のタンコブでした。地元の自民党県議が官邸や党本部へ陳情に行くと、『知事を代えるのが先だ』などと難癖をつけられたそうです。そうした官邸の意向を受けて、県議会の反知事派が新潟日報に泉田批判記事を書かせたという話もある。官邸の意向に忠実に従う知事にスゲ替えて、再稼働を進めるつもりなのです」
東電は今年、新潟日報に5回も広告を出している。
泉田前知事さえ引きずり降ろせば、再稼働に一直線とタカをくくっていた官邸にとって、野党候補の善戦は誤算だろうが、この際、原子力ムラの底知れぬ闇もあぶり出されるべきだ。
A老朽原発稼働のなし崩しや損害賠償、廃炉負担の国民押し付けなど、あらゆるデタラメ行政への国民的追求が始まっていく
「再稼働反対」で支持を集める米山の猛追にビビった森陣営は、「再稼働が前提ではない」「国や東京電力に対しても強く意見を言う」などと言い出しているが、必死で争点隠しに走っているだけだ。
「柏崎刈羽原発は世界最大級の出力を誇り、自民党も東電も、なんとしてもここを動かしたい。そのために泉田前知事を引きずり降ろしたのです。安倍首相から推薦状を受け取った候補が、再稼働に反対したり、『強く意見』なんて言えるわけがない。柏崎刈羽を動かすことに成功すれば、なし崩しで全国の老朽原発を再稼働させていくでしょう。あの手この手で前知事を引きずり降ろした原子力ムラの暗躍も闇に葬られてしまう。逆に、ここで脱原発候補が勝てば、再稼働の拡大を食い止められる。1強多弱にあぐらをかいて、やりたい放題の安倍政権には大打撃です」(政治学者・五十嵐仁氏)
姑息な原子力ムラと政府は有識者会議を立ち上げ、福島第1原発事故の賠償や原発の廃炉費用を国民に負担させようと画策している。電気事業連合会の試算によれば、福島原発の廃炉費用は想定の2兆円を大きく上回り、損害賠償は当初見通しの5.4兆円から8兆円に、除染費用も2.5兆円から7兆円に拡大する見通しだという。これを電気料金への上乗せ、あるいは国の支援で賄おうというのだが、いずれにせよ国民負担だ。
要は廃炉費用で東電が債務超過になることを防ぐための救済策だが、冗談じゃないのだ。「原発のコストが一番安い」と言い続けてきたのは誰か。事故の責任も取らず、公金をつぎ込んだ凍土壁も失敗。費用も負担できないのに、危険な老朽原発を動かすことにシャカリキで、そのツケは国民に押し付ける。こんな横暴が許されるのか。
新潟で脱原発派が勝利すれば、デタラメ原発行政に一石を投じることになる。
民意は脱原発(右は脱原発を提言する小泉元首相)/(C)日刊ゲンダイ
B鹿児島に続き新潟が原発拒否すれば、全国に反原発のうねりが伝播していく
今年7月10日、参院選と同日に行われた鹿児島県知事選では、原発推進派で4選を目指した現職(当時)を新人の三反園訓氏が破る大金星を上げた。最大の争点は、全国に先駆けて14年に再稼働に同意し、選挙時には全国で唯一稼働していた九州電力川内原発の是非だった。原子力ムラとズブズブの「自公」VS脱原発の「野党連合」。今回の新潟県知事選と同じ構図だ。
「衆参全ての選挙区で自民党候補が当選している鹿児島は、日本有数の保守王国。そこで野党系の候補が勝ったのは、原発再稼働に不安を感じている有権者がいかに多いかということです。それも、『脱原発』ではなく川内原発の『一時停止』を訴えただけで勝った。新潟県知事選もそうですが、脱原発の受け皿さえつくれれば、民意が掘り起こされ、反原発のうねりが広がっていくことを証明しています」(横田一氏=前出)
鹿児島に続き、新潟でも知事が原発再稼働を拒否すれば、反原発の民意が触発され、全国に伝播していくのは間違いない。
C民意無視で小泉の提言にも馬耳東風のオレ様首相は今後、確実に追い詰められていく
脱原発に舵を切った小泉純一郎元首相は常々、「首相が原発ゼロを宣言すれば、すぐに実現できる。権力を使える状況がこんなに恵まれた時期はない」と言っている。陰に陽に、脱原発を提言してきたが、安倍には馬耳東風だ。だが、いつまで居丈高でいられるか。
「どちらが知事になるかで、今後の対応は変わってくる。原発が争点になった一騎打ちの選挙でことごとく負けるようでは、あまり強引なやり方はできなくなる」(経産省関係者)
小泉は参院選の直前、野党に対しても「野党第1党が原発(即時)ゼロを言い出せないのが不思議だ。争点にして戦う価値のある問題だ」と注文をつけていた。世論の半数以上は脱原発なのだ。争点に掲げれば、必ず民意がついてくる。
泉田前知事を追い落とした新潟日報の世論調査(7〜9日に実施)でも、柏崎刈羽原発の再稼働に「反対」が60.9%と、「賛成」の24.2%を大きく上回っている。昨年12月、今年7月の調査時と比べて差が広がっているという。その背景には、民意を無視して強引に物事を進めるオレ様首相に対する不信感がある。これは一事が万事で、何も原発問題に限ったことではないが、新潟県知事選がアリの一穴になれば、今後の国政選挙の戦い方も変わってくる。暴走政権は確実に追い詰められていく。
小泉が言う通り、民進党は支持基盤の連合に気を使って腰砕けになっている場合ではないはずだ。
D連合に支えられた民進は自主投票で「結構」という新しい選挙協力の可能性
新潟県知事選で脱原発候補の米山を推薦するのは、共産、社民、生活の野党3党。民進は野党共闘に乗らず、自主投票だ。もともと民進党の衆院新潟5区の公認予定者だった米山に推薦を出さなかったばかりか、告示日直前に公認内定を取り消して、民進党から追い出すという冷たい仕打ちに出た。支持団体の連合新潟が早々に森支持を決めたことに配慮したのだ。
「原発がある新潟では、連合の中でも特に電力労組の力が強い。それが相手側についてしまった。直近の参院選で、新潟選挙区は野党統一候補が僅差で競り勝っています。野党が共闘すれば知事選も勝てる場所なのに、不戦敗を決め込んだ民進党は情けないし、有権者の方を向いていないことが分かる。連合は14年の東京都知事選でも、脱原発の細川護煕元首相ではなく、自公推薦の舛添要一候補を支援するなど、野党共闘の障害になってきた。民進党にとって、獅子身中の虫になりつつあります」(五十嵐仁氏=前出)
勝てるムードが出てきたことで、民進党の国会議員も新潟入りして米山支持を訴えている。11日は新潟県連代長の黒岩宇洋衆院議員が応援に入った。連合抜きで勝てれば、今後の野党共闘にも大きな影響を与える。その意味でも試金石となる知事選なのである。連合に配慮せざるを得ない民進党は自主投票で結構。そういう新しい野党共闘の形が見えてくる。
民意に寄り添うことができない野党など不要なのだ。新潟で野党候補が逆転勝利すれば、この国の政治風景はガラリと変わる。
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