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もんじゅ問題。なぜこの国の為政者は「失敗」を認められないのか 血税1兆2000億円がパー
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49868
2016.10.09 週刊現代
これまで何度も無駄と指摘され、それでも、様々な人々の利害のために、ゾンビのように生きながらえてきた「夢の原子炉」。このプロジェクトの中心には誰がいて、誰が責任を取るのか——。
■元幹部の告白
かつて高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市・以下、もんじゅ)の運営主体である日本原子力研究開発機構(原研機構)で上席研究主幹という幹部職を務めた経歴を持つ田辺文也氏はこう語る。
「『もんじゅ』はいまの日本の技術力では、到底制御できるものではありません。そこに1兆2000億円もの膨大な予算が投じられてきたというのは正常な状態ではない。
もんじゅは、'95年にナトリウム漏れ事故を起こして、世界的にもその技術は疑問視されています。ましてや福島第一原発の事故という悲惨な経験をしたあとならなおさらです。
もんじゅ〔PHOTO〕gettyimages
もんじゅの運営を行う職員の間でも、『ほかの研究にカネを遣いたい』『もう批判されたくない』と不満が出ています」
そのもんじゅについて、8月末、政府が菅義偉官房長官のチームの下、廃炉も視野に入れながら、今後を検討していることが発覚し、大きな波紋を呼んでいる。
全国紙政治部記者が言う。
「政府は、現行計画でもんじゅを運転しようとすると、約6000億円の追加支出が必要だという試算を出しました。その額があまりに大きいため、廃炉の可能性も考慮し始めたようです」
こうしたなか、9月16日には、安倍晋三総理の側近であり、経済産業相を務めたこともある自民党政調会長の茂木敏充氏がインタビューで、
「もんじゅは運転停止が6年間続き、この22年間で運転した期間はわずか250日にとどまっています。昨年11月には原子力規制委員会が運営主体の変更を勧告しましたが、新たな運営主体も決まらない状況。廃炉以外の選択肢はないとまでは言わないが、私の想像力を超えています」
と答えた。
しかし、この発言は違和感をもたらすものだ。
茂木氏は、あたかも自分たちは、もんじゅの問題に巻き込まれた被害者、あるいはこの施設を廃炉に導く決断をした正義の代弁者といわんばかりだ。だがそもそも、戦後の原子力政策を進めてきたのは、そのほとんどの時期で政権与党にあった当の自民党である。
元東芝の原子炉技術者・後藤政志氏が言う。
「日本では、一貫して政府が原発を推進し、その一環として資源の再利用のために『核燃料サイクル』政策を進め、長年の間もんじゅを維持してきました。
茂木さんをはじめとして、現政権はこれ以上もう対応の仕様がなくなって廃炉を言い始めたのでしょうが、他人事のような顔をしていたのではおかしい。
最終的に責任を取るべきなのは政府にほかなりません。『文部科学省に任せていた』なんて言い訳は決してできないはずです」
■廃炉にも3000億円かかる
'11年の福島第一原発の事故は、まさにこうした「オレは知らなかった」「私は担当ではなかった」という「誰も責任を取らない」政府(当時は民主党)の姿勢によって、大惨事に発展した。
現在の政府の態度もこれと同じだ。しかも、こうした態度で青森県の六ヶ所再処理工場の建設を進めようとしているのだから、正気の沙汰とは思えない。
仮に廃炉が進むとしてもそれで話が済むわけではない。これまでもんじゅにつぎ込まれてきた1兆2000億円というすさまじい額の血税は二度と戻ってこない。
そして、「停止中」のもんじゅはいまこのときもカネを食い続けている。
将来性ゼロの巨大装置を「維持」するためだけに、原子炉を冷却するナトリウムの管理、放射線量のチェック、部品の点検といった作業が行われ、年間約200億円ものカネが、停止中のもんじゅにつぎ込まれている。
問題は政府・与党だけではない。
'60年代以来、国策を推し進めてきた文科省(旧文部省、科学技術庁)や原子力発電を推進する経済産業省(旧通産省)、そして予算をつけてきた財務省(旧大蔵省)からは、「反省」の声は聞こえてこない。
メインとなって事業を推進してきたのは、かつての運営主体の旧動力炉・核燃料開発事業団(動燃)や現在の運営主体である原研機構を管轄する文科省だ。ただし、本誌が取材をしようと担当部局に複数回問い合わせてみるも、
「担当者の許可がなければ公式にお話を出すことができません。本日、担当者は戻りません」
と言われるだけで、コメントを得ることはできなかった。
もんじゅは'60年代に、使用済み核燃料の再生を行う「核燃料サイクル」実現のための中心的な施設として研究がスタートした。核燃料サイクルは、資源小国・日本にとって「夢の技術」だと謳われてきた。
「国策として始まったもんじゅは、着地点を見出さずに計画がスタートしたため、当初数百億円だった建設費が、1600億円、4000億円、5900億円とどんどん膨れ上がっていきました。一度予算がつくとそれに慣れてしまい、やめられなくなる。まさに日本の官僚機構の宿痾です」(「もんじゅ」に関する市民検討委員会委員の福武公子弁護士)
そんななか、'95年にもんじゅは大惨事一歩手前の事故を起こす。前出の後藤氏が言う。
「燃料冷却用の液体ナトリウムが漏れ出し、空気に触れて火災が起きたのです。その後、事故の隠蔽なども問題となりました。
そもそもナトリウムは空気に触れると火が出る危険なもの。また、ほかの原発と違って、トラブルが起きても、原子炉に『不活性ガス』という特殊なガスが入っているので、蓋も簡単に開けることができない。非常にリスクが高い原子炉なのです」
だが、一度始まった国策は止まらない。その後も、対策工事にさらなる資金が突っ込まれ続けた。
運営主体の原研機構の内部にも恩恵を享受してきた人々は多い。前出の田辺氏が言う。
「原研機構は'05年に、それまでもんじゅの運営をしていた核燃料サイクル開発機構(旧動燃)と日本原子力研究所(原研)が合併してできました。私を含めた原研出身者は自分で研究費を集めているにもかかわらず、実用化の目途も立たないもんじゅには多額の国費が投じられてきた。原研出身者からは不満が出ていました」
本誌が原研機構に、これまでの責任について問うと、報道課職員からは、
「1兆2000億円がかかっているのは事実ですが、廃炉するにせよ、廃炉しないにせよ、これからまだおカネがかかっていきます。いまの段階でのコメントは控えたいと思います」
と開き直った回答があった。
■安倍の本音は原発推進
地元・福井の自治体の首長や議員たちも、もんじゅを推進してきた強力な主体だ。田中和義敦賀市議は、政府の廃炉検討を受け、こう息巻く。
「廃炉については寝耳に水。ハッキリ言って迷惑です。地域住民たちの意見を聞かないままあのような話が出るのは理解に苦しみます。
立地自治体としては、国のエネルギーのために、これまでもんじゅを受け入れてきました。今後も継続を強く望みます」
こうしてそれぞれの利害、事情が絡み合い、「もんじゅムラ」とでも呼ぶべき閉鎖的な共同体が出来上がっていたのである。
しかし、前述のとおり「もんじゅムラ」の事情を包含し、もんじゅについての最終的な決定を下してきたのは、ほかでもない自民党だ。原発差し止め訴訟などに関わる弁護士の河合弘之氏が言う。
「そもそも日本が国として進めてきた原発政策は、資源不足を克服する核燃料サイクルと一体になって初めて意味があるものでした。つまり、もんじゅを廃炉とすると、原発政策もろとも否定することになる。
ある時期から、もんじゅが当初の計画を達成できないことはわかっていましたが、国は原発推進政策を続けるため、旗を降ろせなかった」
歴代の政権の系譜にある安倍晋三総理も、筋金入りの原発推進論者。'14年に策定した「エネルギー基本計画」では、原子力を「重要なベースロード電源」に位置付け、原発を守ることに強い意志を持っている。
この時点においても、川内原発(鹿児島)、伊方原発(愛媛)と、着々と原発再稼働は進んでいる。
「9月13日、世耕弘成経産相は青森県知事と会談し、核燃料サイクルを引き続き推進することを明言しました。側近に廃炉を示唆させ、一方で閣僚には原発推進政策を吹聴させる。『もんじゅの廃炉はするが、かわりに原発を稼働させる』と、アメとムチの巧妙な支持率対策をしているように見えます」(前出・記者)
官僚、学者、政治家、それぞれが自身の利益にこだわり続ければ、これまでのもんじゅと同様、誰も事態に「決着」をつけられずに、無駄な国費の垂れ流しが続くことになる。
「週刊現代」2016年10月8日号より
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