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「豊洲移転問題 問われる都庁の体質」〜都庁を「ぶっ壊す改革」から「壊して建て直す改革」に向けた着地点を見いだせるのか/nhk・西川龍一
「豊洲移転問題 問われる都庁の体質」(時論公論)
西川 龍一 解説委員 2016年09月30日 (金)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/253786.html
東京の豊洲市場の土壌汚染対策をめぐる問題で、都の内部調査が公表されました。一連の問題では、都の意思決定の過程があいまいで、小池知事自ら「無責任体質」と批判するなど、都政そのものの信頼性が揺らぐ事態となっています。
解説のポイントです。
▽内部調査で責任の所在は判明したのか。
▽検証すべき問題は何なのか。
▽市場はどうなるのか。
まず、最初のポイントです。結論から言うと、誰の責任なのかというところまでは、判明しませんでした。
今回の豊洲市場の土壌汚染対策をめぐる問題は、市場を支える地下の盛り土が主な建物の下では行われず、空洞になっていたものです。盛り土は専門家が土壌汚染対策として敷地全体に行うよう提言したにもかかわらず、都が独断で空洞を設けていたうえ、ホームページや議会の答弁などでは盛り土がされていることになっていました。しかも、歴代の市場長の多くは、建物の下が空間になっていることを知らなかったと説明していました。盛り土をしないと判断した経過や責任の所在を突き止めようというのが、今回の調査です。
調査結果の内容です。専門家会議が土壌汚染対策として敷地全体に盛り土を行うよう提案したのは、2008年。豊洲市場の建設着工は、2014年のことです。問題は、この間の意思決定がどのように行われたのかです。調査によると、技術系の担当局内では、2008年から地下に「モニタリング空間」を設ける案が議論されていました。そして、2010年から土壌汚染対策の検討が本格化し、建物の設計を作成する過程で、2011年8月に地下に「モニタリング空間」を設ける「方針」が部課長級の幹部会議で確認されています。いずれも石原都政時代のことです。しかし、盛り土を行わない方針までは明確に意思決定がされないまま工事が進められたということで、盛り土を行わない方針をいつ誰が決めたか、特定できなかったとしています。
結局、技術系の職員から出た案が、いつの間にか都の案となって採用された形です。歴代の市場長は事務系の職員で、内容を精査しないままだったのではないか。一方、技術系職員の中でも基礎となる敷地部門を担当する土木の担当部署と、建物を担当する建築の担当部署の間にも認識の隔たりがあり、最終的に誰がどういった責任で決定を下したのかはわかっていません。これで都民が納得できるのか。少なくとも部下任せにしてそのまま決済していた幹部職員の責任をはっきりさせる必要があります。
では、今回発表された調査結果から検証すべき課題を考えてみたいと思います。調査結果は、結局行政の縦割りの弊害が個々の職員の無責任体質につながったということを改めて示すものとなりました。知事部局と公営企業だけで4万人近い職員を抱える都庁という巨大組織の構造的な欠陥を露呈したと指摘する専門家もいます。ただ、「地下に空間があることはなんとなく聞いていた」と証言する事務系の職員もいます。「事実と違うことが説明されていることに気づいていたのに、なぜそのことを誰にもフィードバックせず、そのままにしておいたのか」を解明する必要があります。それこそが都庁の統治体制の根幹に関わることだからです。小池知事は、会見で、「都庁の内部通報システムを整備することで対応する」としていますが、都庁の組織の中で何が起きたのかを整理し、縦割りをなくすための改善策につなげることが組織改革にとっての重要課題です。
豊洲移転問題については、都の内部の意思決定調査のほか、29日に初会合が開かれた有識者による市場問題プロジェクトチームも議論を始めています。この中で注目されるのが、当初の3926億円だった予算が、4年間で5884億円にまで膨らんだ豊洲市場の整備費の妥当性です。
もっとも膨らんだのが、入札の予定価格が630億円と見積もられていた3つの建物の建設費です。最初の入札では、都の見積額が低すぎるとして入札が成立せず、2回目の入札では、予定価格を一気に60%引き上げて1035億円としたことで、3つの共同企業体がそれぞれ落札しました。ただ、落札価格が、予定価格の99.7%とほぼ見積もり通りとなっていることに不自然だと指摘する声もあります。不透明な費用の増大は、都が予定価格を積算する体制そのものに問題があることや、そもそも税金を使っているとの意識が欠如しているとの指摘もあり、十分検証する必要があります。ただ、プロジェクトチームには捜査機関のような強い権限はなく、自ずと限界があります。
ここまで、都庁のガバナンスの問題について見てきましたが、気になるのは、築地市場を最終的にどうするのかという問題です。老朽化が進むうえ、食の安全面からも今のままという選択肢はありませんから、鍵を握るのは、やはり、豊洲市場の安全性です。このため、東京都は、プロジェクトチームとは別に、盛り土を提案した専門家会議を改めて設置して改めて盛り土がない状態での安全性について検証を始めています。食の安全安心の問題は、都のガバナンスの問題とは切り離して議論する必要があるからです。
土壌汚染対策法では、汚染した土に触れたり地下水を摂取したりすることがないように、50センチ以上の盛り土か、10センチ以上のコンクリートを施設することになっています。豊洲市場は、1階の床の厚さが35センチあるなど、水準は満たしています。また、建物の下にたまった水は地下水があがったもので、微量のヒ素や六価クロム、鉛が検出されたものの、いずれも環境基準を下回っていると、専門家会議の平田健正座長が説明しています。ただ、東京都は29日になって、豊洲市場の地下水のモニタリング調査で環境基準を上回るベンゼンとヒ素が初めて検出されたと発表しました。
損なわれた安心を取り戻すことを考えると、建物内が基準値以下だから即ゴーサインを出すことができるのか。何らかの上乗せ的な対策をなさなければ、市場関係者も都民も納得できないでしょう。
小池知事は、移転の可否の判断は、来年1月に最後のモニタリング調査が発表された段階と繰り返し述べていますが、敷地全体の盛り土が前提となっている環境影響調査のやり直しが求められれば、通常15か月かかるとされます。この間、豊洲市場に移転を予定していた業者の保証をどうするのか。つぎつぎに明らかになる問題で、市場関係者の都に対する不信感は深まるばかりなだけに、こうした不安をどう払拭するかも大きな課題になります。
一連の問題では、都議会の経済・港湾委員会で東京都中央卸売市場の岸本良一市場長が議会への説明が事実と異なっていたことについて陳謝しました。しかし、職員だけに責任を押しつけるような形では、萎縮するだけで、真相の解明や今後の対応に力を尽くそうと考えている職員の気力をそぐことにもなりかねません。今週、NHKの番組に出演した小池知事は、「ここまで事態が広がるとは正直思っていなかった」と述べました。課題を指摘する、いわば都庁を「ぶっ壊す改革」から「壊して建て直す改革」に向けた着地点を見いだせるのか。災い転じて解決策を示すことができるのかが問われることになります。
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