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長谷川豊 公式ブログ『本気論 本音論』より
長谷川豊はとうとう全番組降板も…背後にいた“医療自己責任論”を叫ぶ若手医者グループは逃走
http://lite-ra.com/2016/10/post-2606.html
2016.10.06. 長谷川豊は謝罪も…背後の医者集団は リテラ
フリーアナウンサーの長谷川豊が、「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!」というブログ記事の問題で、10月3日、MCを務める『バラいろダンディ』(TOKYO MX)の番組冒頭で謝罪。さらに、昨日には同番組の降板が発表され、これによりテレビのレギュラー番組がすべてなくなった。
だが、同番組で行った謝罪内容は「患者の方々、その方々を支えてらっしゃるご家族のみなさま方、関係者の方々を深く傷つける表現をしてしまったことに関しては、全面的に私のミスです」というもので、“表現は良くなかったが、主張自体は間違っていない”と今も考えているらしい。
しかし、あらためて指摘しておくが、長谷川の主張はデタラメばかりだ。そもそも人工透析患者に限らず生活習慣病と総称される疾病は先天的要因と後天的要因のどちらか一方にのみ起因するわけではないし、経済状況や労働環境など社会的要素や加齢の影響も大きく、同じような生活習慣でも罹患する人もいればそうでない人もいる。ゆえに、「ここからが“怠け者の自業自得”だから死ね」などという線引きは恣意的にならざるを得ない。さらに、生活習慣と疾病の統計的な因果関係を示すことと、臨床の場で個別の患者のケースについて多種多様なファクターを総合的かつ定量的に把握し判断することはまったく別の話であり、後者は事実上不可能である。
だいたい、不摂生によってなんらかの疾病を患ったとしても、だから治療や救済が必要ないとなるわけがない。この国の憲法では、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有し、国はその増進に努めなければならないと定められている。そのうえで、個人の病気などのリスクを社会全体で広く分散させる国民皆保険は社会保障の一部であるという認識が貫かれてきた。だからこそ、医療費抑制を名目として健康保険制度に“自己責任”を簡単にもち込むことはできないのだ。だが、長谷川はこうした前提を全部すっ飛ばして、「実費負担が無理だと泣くならそのまま殺せ!」などとがなり立てる。論外だろう。
もっとも、こうしたありえない暴論に対してはネット上でも批判が殺到し、人工透析患者の偏見助長に対しては全国腎臓病協議会が抗議文を公開、結果として長谷川は前述したように、全番組を降板することになった。
しかし、今回の問題は、たんに“炎上芸人”が人工透析患者に向かって悪罵を連ねたということではない。実は、長谷川豊の背後には、同じような、「医療費を実費負担できない奴は殺してしまえばいい」という“医療ファシズム”ともいうべき思想をもっている医者たちがいるようなのだ。
長谷川のブログでは〈ある「人工透析」を担当しているお医者さんと話をする機会がありました〉として、このように記されている。
〈病院で患者さんと対峙している多くのお医者さんは、少し違う印象を持っているそうです。
「はっきり言って大半の患者は自業自得」
「患者さん?お金にしか見えないですね」
「まー、人工透析を見てると、日本の未来はないってよくわかるwwww」〉
また、ブログが問題になった少し後には、長谷川にこうした考えを吹き込んだとされる若手医師グループの名前も浮上した。そのグループとは、「医信」なる団体だ。
同団体は今年6月17日に設立された社団法人。〈メディカルリテラシーの向上を旗として集った、現役の若手医師を中心としたグループ〉だという。代表理事のO氏(30代半ば)は、埼玉にあるクリニックの院長で、「医信」副理事のY氏(30歳前後)もO氏のクリニックに勤務している。
長谷川はこの「医信」の理事を務めており、O氏やY氏とともに講演活動などを行っていた。そんなところから、長谷川の発言の裏にこのグループがいるのでは? という疑惑がもち上がったのだ。
「医信」は今回の騒動を受けて、先月26日、ホームページ上で見解を公表。〈該当記事自体の投稿に関しては、長谷川自身が義憤に駆られ、独自の取材と倫理的判断に基づき行ったものであり、当社団の公式見解ではありません〉と記している。
だが、実はこの〈公式見解〉の5日前の21日、「医信」は公式Facebookで長谷川のブログを引用しながら、こんな投稿をしていた。
〈今回も予想とおり炎上中、笑。〉
〈ただ、「透析導入の第1位は糖尿病性腎症」、「透析には年間500万円のコストがかかり、それはすべて保険、税金から賄われている」などの事実は、医療社会だけでなく、一般社会でも周知の事実であるようにしていく必要があると思いませんか?〉(原文ママ。削除済み)
また、このFacebookのコメント欄でも「医信」は〈正論とはいえ炎上しますよねー〉などと、長谷川に賛同する投稿していた。
10月6日現在、「医信」のHPからは前述の「公式見解」以外のコンテンツに直接アクセスすることができなくなっているうえ、関係者のネット上のコンテンツもことごとく削除されているが、この集団は明らかに長谷川の主張を支持していたのだ。
しかも、いろいろ調べてみたところ、この「医信」は代表のO氏自身も、長谷川と同様、典型的な「医療亡国論」「自己責任論」をがなりたてていることがわかった。しかも、デマだらけの……。
たとえば、この騒動で閉鎖されてしまったが、O氏は個人のブログもやっており、3月20日、「日本の医療費って正直どうーなのよ!?〈前編〉」というタイトルの投稿をしていた。そこでO氏はこのように記している。
〈実は、日本の医療費はなんと40兆円をついに突破!
2014年の日本の税収が52兆円くらいだから、僕らが稼いでせっせと払っている所得税、法人税、消費税、すべて合わせた金額の約80%が日本の一年の医療に使われているってわけ。。
まじどーすんの、これ、涙〉
のっけから完全なデマである。40兆円という数字は患者の負担分や社会保険からの支出も含めた総額であり、そのうちの国の負担分は約4分の1。国の税収全体における比率を計算すると約20%ということになる。それを税収の80%を医療費に使っているなどというのは、世論をミスリードしようという意図が見え見えではないか。さらに、O氏はこんなことを言い始める。
〈・totalの医療費は他国と比べて平均くらい ・受診回数は圧倒的に多い というわけで、そこからはじき出されてくる答えは、そう。医療費の単価が安すぎる!!ってことです。ここ、めちゃ強調ポイントなんで、もう一回いっとく! せーの!(笑) 医療費の単価が安すぎる!!〉
ようするに、O氏は政府支出を問題にしているではなく、医療費の単価が安すぎる、つまり、医者や病院の儲けが少なすぎると言っているのだ。完全に「医者の側の論理」丸出しである。
また、O氏は副理事のY氏とともに今年4月、インターネットテレビ「AbemaTV」が配信している長谷川の番組『激論!! 長谷川豊の本気論、本音論TV』に「医信」の代表として出演していたが、その際もこのような持論を展開していた。
「日本は単価あたりの医療費がすごい安いですし、先ほど申しましたように、自分のプライベート、支出、自分の個人の負担率というのがよけいに低いわけですから、なのでその、医療に対する、受診ということに対するそのバリアがすごい低いんですよね」
「日本の悪いところはやっぱり、いまのこのセーフティネットがよさすぎて、そこに甘えてしまってる現状があると。これはやっぱり、それを見直していかないと次の世代だったりとか、これからの医療には繋がっていかないですよってのが、僕たち(「医信」)の訴えているとこの本音ですよね」
現状でもすでに貧困層は保険料を支払えず受診抑制が起こっているが、彼らはその現実をまったく無視。逆に、社会保険制度を見直して、貧乏人が病院に行けない状況をさらに推し進め、患者を減らせと言っているのだ。
いずれにしても、今回、長谷川が繰り出した「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!」というアジテーションのバックボーンに、この「医信」なる集団の“患者負担を上げろ”“患者はみだりに診療に来るな”という主張があるのは明らかだろう。しかも、彼らは長谷川と一体になって「糖尿病患者を公費で面倒見る必要なし」と言いながら、いざ問題になると、すべてのコンテンツを閉じて、遁走してしまった。まったく卑劣と言うしかない。
だが、もっとうんざりさせられるのは、こういう医療自己責任論に賛同する医者が、この「医信」以外にも結構いることだろう。実際、医師同士の勉強会や懇親会では同様のセリフが頻繁に飛び交っているし、若手の開業医を中心に、「医療単価をあげて、社会保険制度を見直せ」と主張する医師は急増しているという。しかも、このような「医療亡国論」を唱える医師に限って、金儲けに余念がないらしい。
そういえば、O氏たちもこうしてセーフティネットを批判し、“患者負担を上げろ”“軽症患者は診察を自重しろ”“医者は忙しいんだ”などと訴えている割に、他方であやしげな副業に精を出していた。
そのひとつがY氏が代表取締役を、O氏が取締役を務める「N社」の存在だ。その事業内容は〈ファイナンス、コンサルテーション コンシェルジュサービス〉。同社HP(現在閲覧制限がかかっている)によれば、具体的にはこんな感じだ。
・〈経済、金融の知識を身につけ、自己の資産をマネイジメント〉〈不動産・保険選びから、節税方法や相続税対策〉なる各種セミナーの開催
・〈圧倒的なエレガンス、そして有意義なひと時を。〉と修飾されたイベントの開催。
・〈選び抜かれた至福のサービスを。〉という〈高級クレジットカード〉の事業。
・〈弊社主催のプライベートパーティへのご案内など、他ではできない素敵な1日をお過ごしいただけます〉とする会員制リゾートクラブの案内。
・〈不動産賃貸 コンシェルジュ〉の業務。
一言でいうと、セレブ向けの会員制クラブ的なノリだが、ほかにもHPに設置されたオンラインショップの品目のなかには〈高級時計〉が含まれていることも確認できた。また、同社のブログ(15年12月20日付)からは、O氏が長谷川を〈兄貴〉と呼び慕っていること、そして、〈ブラックユーモアあり、下ネタあり〉のクリスマスパーティを開催し、長谷川がそこに参加していたと読み取れる(なお、このとき一緒に投稿された写真には、長谷川やO氏らの他、ソファでふたりの学生風の女性をはべらす若い男性の姿が写っていた)。
しかし、繰り返すが、これは氷山の一角でしかない。今、連中が目指しているのは、医師の診療報酬をとにかく高くして、医師が楽をして儲けられる社会なのだ。そのためには、貧乏人は治療を受けられず、のたれ死んでも仕方がない、という考え方が急速に広がっている。
そして、今回は、長谷川の方に批判が集中したが、安倍政権は社会保障の基本方針に「自助自立」を据えており、弱者切り捨てのために「医療亡国論」をどんどん喧伝し、世論づくりに躍起になっている。
このままいくと、長谷川や拝金主義の医者が言うように、社会保険が縮減され、「病気にかかったら実費で治療費を払うのが当たり前」という声がむしろ主流になる可能性もゼロではない。
想像してみてほしい。あなたが重い病気にかかって病院に行ったら、いきなり「お金あるの? 払えないなら治療は受けられませんよ」と医師から冷たく突き放され、「助かりたかったら、これだけかかりますよ」と数百万円の手術代を突きつけられるような状況を。しかし、連中が目指しているのはそういう社会なのだ。
(宮島みつや)
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