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経団連会館(撮影=編集部)
「安倍首相のポチ」榊原経団連会長、経済界で総スカン…政府の要求を次々と安請け合い
http://biz-journal.jp/2016/10/post_16837.html
2016.10.06 文=編集部 Business Journal
安倍晋三首相は有識者会議が大好きだ。だから会議がやたら乱立する。今度は、「規制改革推進会議」を衣替えし、「未来投資会議」と「働き方改革実現会議」を新設した。アベノミクスの構造改革は仕切り直しである。
安倍政権が進めてきた構造改革で実現したのは2つしかない。ひとつは訪日客対策として、中国、インド、ロシアなどのビザの要件を緩和した。その結果、訪日外国人が急増し、インバウンド消費が盛り上がった。もうひとつは電力システムの改革。今年4月に電力の小売りが完全自由化された。
鳴り物入りでスタートしたアベノミクスだが、実現したのはこの2つだけで、後は先送りのオンパレードである。
安倍首相はアベノミクスを再起動させ、取り組みが甘いといわれている構造改革に本腰を入れる。政府は9月12日、成長戦略の司令塔となる規制改革推進会議と未来投資会議を相次いで開いた。
リニューアルした規制改革推進会議は、農業を当面の重要課題とした。前身の規制改革会議が5月の答申で結論を先送りした生乳の流通改革などは、年内に結論を出す。
未来投資会議は、既存の産業競争力会議と企業に設備投資などを促す官民対話を廃止して一本化した。また、医療・介護で「公的保険外のサービスの組み合わせが必要」と明記した。混合介護などの拡大によって、関連企業や個人の稼ぐ力を高める。
一方、働き方改革実現会議は初会合を開き、日本型の雇用慣行にメスを入れたい考えだ。だが、労使の利害が鋭く対立した難題ばかりだ。
構造改革の手詰まり感が強くなるなか、既得権が岩盤のように固い農業、医療、労働の規制改革に踏み込もうとしているわけだが、看板の書き換え(成果ゼロ)で終わるおそれは否定できない。
■「経団連会長は官邸の言いなり」と酷評
日本経済団体連合会(経団連)会長で東レ取締役最高顧問の榊原定征氏は、新設された未来投資会議と働き方改革実現会議のメンバーに選ばれた。榊原氏は安倍政権の経済や財政の基本方針である「骨太方針」などを議論する経済財政諮問会議のメンバーでもある。
榊原氏と安倍首相の蜜月は、つとに有名だ。7月18日の時事通信「首相動静」によると、安倍首相は午前6時46分から午後2時14分まで山梨県河口湖町のゴルフ場「富士桜カントリー倶楽部」にいた。「経団連の御手洗冨士夫名誉会長、榊原定征会長、渡文明前審議員会議長とゴルフ」とある。安倍首相が財界人とゴルフをするときは、このメンバーが多い。
2014年6月に経団連会長に就任した榊原氏が真っ先に行ったことは、安倍政権との関係修復だった。前会長の米倉弘昌氏(元住友化学会長)は12年11月、政権へ復帰目前の自民党総裁・安倍氏が掲げる三本の矢を「無鉄砲」と批判し、急激に関係が悪化した。この“舌禍”が祟り、経済財政諮問会議のメンバーに米倉氏は選ばれなかった。それまで経団連会長は無条件で加わっていたにもかかわらず、除外されたのだ。
米倉氏は安倍氏が掲げる目玉政策をこき下ろしたため、手ひどいしっぺ返しを食らったかたちだ。政権に復帰した安倍首相は米倉氏を徹底的に無視した。米倉氏が干されたので、経団連の会員たちは頭を抱えた。官邸とのパイプが切れて、経済界の本音を伝えることができなくなったからだ。
榊原氏は安倍政権との関係修復という任務を担って経団連会長に就いた。法人税率の引き下げや原子力発電所再稼働など、経済界が望む政策を進める安倍政権を全面的に支持。政治献金を5年ぶりに再開させる方針を打ち出した。
「車の両輪」と発言し、政治と密接な関係を築くことで、官邸と経団連は和解。安倍政権は14年9月、榊原氏を経済財政諮問会議のメンバーに起用した。関係強化の見返りとして経団連は法人税減税などの果実を手にした。
榊原氏が「安倍政権ベッタリ」と批判を浴びたのは、15年11月26日に開かれた政府と経済界の官民対話の場で、安倍首相の要請を受けて賃上げと設備投資の増額と約束したからだ。榊原氏は「賃上げや設備投資を積極的に行うよう会員企業へ提案する」と表明した。
一方、経済同友会代表幹事で三菱ケミカルホールディングス会長の小林喜光氏は「(賃上げは)各社各様でいい」、日本商工会議所会頭で新日鐵住金相談役名誉会長の三村明夫氏も「設備投資は企業経営者が個別に考えるもの」と発言している。
「賃上げや設備投資に政治は介入すべきではない」というのは経済界の一致した見方だ。政治の要請で賃上げや設備投資をして経営が悪化しても、政治が尻拭いしてくれるわけではないからだ。それなのに、榊原氏は満額回答をした。安請け合いをする榊原氏に「財界トップとしての資質があるのか」と、疑問を持たれたのも無理はない。
榊原氏は「政権にすり寄りすぎでではないか」との記者の指摘に対し、「今は未曾有の(経済)危機。経済界が無責任に政治を批判することが、本当に国のためになるのか。言葉を慎んでほしい」と色をなして反論したことがある。
榊原氏は“国士”のつもりなのだろう。だが、官邸の言いなりになっていることで「安倍首相のポチ」(経団連の元首脳)と口さがないことを言う財界人もいる。
榊原氏に対する批判は、お膝元の経団連内部から火の手が上がることになる。
(文=編集部)
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