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「日本は移民を受け入れたことがない」は間違い
働き方の未来
堺屋太一氏、2度の移民受け入れが成長に繋がったと指摘
2016年9月30日(金)
磯山 友幸
鎖国を実施するまで、大量の移民が入ってきた
「将来の日本人を作るために、今こそ移民受け入れを行うべきだ」──。
元経済企画庁長官で、現在の安倍晋三内閣で内閣官房参与を務める作家の堺屋太一氏が9月25日、NPO法人「万年野党」(理事長・宮内義彦氏)の総会で基調講演を行い、外国人人材の受け入れを加速させるべきだと力説した。堺屋氏は現在の日本にとって「人口減少が最大の危機」だとしたうえで、次のように語った。
「日本は移民を受け入れたことがないという人がいるが、それは間違いだ。日本は近世以降、2度にわたって大量の移民を受け入れてきた。1度目は17世紀前半。1600年から1640年頃までの間。江戸幕府が鎖国を厳格に実施するまで、中国や韓国といった外国から大量の移民が入ってきた」
移民の多くは、高度な技術を持った人々
当時の移民の多くは医師や陶工、染め物師といった日本人よりも高度な技術を持った人々だった。1644年に滅びることになる明朝が、清に制圧されていく過程で、それを嫌った多くの明の人々が日本に逃げてきたとみられる。そうした人たちを日本社会は積極的に受け入れたと堺屋氏は語る。
堺屋 太一(さかいや・たいち)氏
作家・経済評論家
1935年、大阪府生まれ。東京大学経済学部卒業後、旧通商産業省(現・経済産業省)に入省。1962年の通商白書で「水平分業論」 を展開して注目され、1970年には日本万国博覧会を手がけた。1978年同省を退官し、作家や経済評論家、イベントプロデューサーなどとしての活動を開始。1998年7月から2000年12月まで、小渕恵三内閣、森喜朗内閣で経済企画庁長官を務めた。「団塊の世代」や「秀吉」「油断」「第三の敗戦」「歴史の使い方」など著書多数。
「日本全国の藩が、こうした外国人を医師や右筆(ゆうひつ)として積極的に召し抱えた」というのだ。右筆とは武家の秘書役のことで、公文書や記録を作成した。漢文の素養が必要だったこともあり、中国人が重用されたのだろう。しかも、そうした外国人が日本社会の中で着実に融和していったと堺屋氏は指摘する。
「実は、赤穂浪士の中にそうして渡って来た中国人の孫がいる。武林唯七(たけばやしただしち)で、おじいさんは赤穂藩に医師として仕えた中国人だった。その武林唯七は、主君の仇を討つという最も日本的な行動に参加している。当時の赤穂藩の士分は300人ほどで、討ち入りをしたのは全員ではなく、その一部。全員で47人ですが、その中に武林唯七はいたわけです」
武林唯七は、赤穂浪士の討ち入りを題材とした「忠臣蔵」では、最も日本人的な、おっちょこちょいとして描かれている人物。大石内蔵助がなかなか討ち入りを決断しないと、早期実行を訴える日本の侍の鏡のような存在として取り上げられているが、実は中国人3世だったわけだ。祖父は浙江省杭州武林の生まれで、出身地から取って武林を名乗ったとされる。
新しい文化とともに、日本社会に溶け込んだ
江戸初期の「移民」は日本に新しい文化を導入する役割を担うと共に、見事に日本社会に溶け込んでいったわけだ。日本文化は決して単一の価値観から出来上がっているのではなく、外来の様々な文化と融合する中で磨き育てられてきたと言っていいだろう。
堺屋氏が2度目の「大量移民流入だった」と指摘するのが19世紀後半。明治維新をはさんだ1850年から1900年ごろまでの間に、やはり中国大陸などから大量の移民がやってきたという。
「日本に移民がやってくるのは中国側の事情が大きい。この時も清朝が力を失う中で、多くの中国人が日本に渡ってきた」
流入外国人が「オシャレな事業」を切り拓く
神戸で洋服店を開いたり、コーヒー店を開くなど、日本の最先端をいくオシャレな事業を切り拓いた人たちに外国人が多かったという。もちろん彼らは日本に定着し、孫世代になって、日本人として活躍している有名人も多い。
大正時代に花開く日本近代文化も、明治維新前後に日本にやってきた多くの外国人がもたらした外国文化の影響を多大に受け、花開いたものだった、と見ることができるわけだ。
移民受け入れが、日本の成長の起爆剤になった
堺屋氏は、この2度にわたる大量の移民受け入れが、日本の成長の起爆剤になったと指摘しているのだ。1度目の移民受け入れは江戸初期から中期にかけての高度経済成長を生み、元禄文化として完成される。また、2度目の明治維新もその後の明治から大正にかけての高成長につながり、大正ロマンと呼ばれた文化の華を咲かせた。
堺屋氏は、過去2回の歴史に学び、外国人を受け入れることで経済や文化を発展させるべきだとしている。そして過去と同じように日本社会が外国人移民を受け入れたならば、彼らは2世代後には、日本人以上に日本人らしい存在になっていくと見ているのである。
安倍内閣は9月27日、安倍首相自身が議長を務める「働き方改革実現会議」の初会合を開いた。安倍首相が「今後3年間の最大のチャレンジ」と位置付ける「働き方改革」の具体策を議論する。首相を含む9人の閣僚と民間人有識者15人の合計24人がメンバーだ。
安倍首相が挙げた「働き方改革」9つのテーマ
議論を受けて発言した安倍首相は、今後の議論の順番として9つを挙げた。
【1番目】 同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善
【2番目】 賃金引き上げと労働生産性の向上
【3番目】 時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正
【4番目】 雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の問題
【5番目】 テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方
【6番目】 働き方に中立的な社会保障制度・税制など女性・若者が活躍しやすい環境整備
【7番目】 高齢者の就業促進
【8番目】 病気の治療、そして子育て・介護と仕事の両立
【9番目】 外国人材の受入れの問題
かろうじて一番最後に「外国人材の受け入れ」が入っている。これまで安倍首相は繰り返し「いわゆる移民政策は取らない」と述べてきた。一方で、人口減少が鮮明になり、全国各地で人手不足が顕在化している。そんな中で、外国人労働力の受け入れ拡大を求める声が急速に高まっている。
自民党も今年5月、労働力確保に関する特命委員会(委員長・木村義雄参院議員)が、「『共生の時代』に向けた外国人労働者受入れの基本的考え方」という提言をまとめた。
(自民党Web内 労働力確保に関する特命委員会の提言
「『共生の時代』に向けた外国人労働者受入れの基本的考え方」
ダウンロードページ)
大幅な外国人労働者受け入れに舵を切るべきだ
提言では「専門的・技術的分野の労働者は引き続き積極的に受け入れるべき」「(その他の労働者についても)個別に精査した上で就労目的の在留資格を付与して受け入れを進めていくべき」とした。そのうえで、「国家戦略としても人口が減少する中で我が国の活力を維持するためには、外国人に今以上に活躍していただくことが必要であり、そのような観点から、現在の外国人労働者数(90.8 万人)を倍増しても対応できる制度を構築するべきである」とし、大幅な外国人労働者受け入れに舵を切るべきだとした。ただし、あくまでも、「移民政策と誤解されないように配慮しつつ」、労働者として受け入れよとしている。
日本はこれまでも、好景気の人手不足を賄うために「労働力」として外国人を受け入れてきた。バブル期にはイランなどから建設作業者が大量にやってきた。その後は製造業での人手不足を補うために日系ブラジル人を労働力として受け入れた。バブルの崩壊と共に多くのイラン人は日本を去り、リーマンショック後に急激な景気の落ち込みに直面すると、ブラジル人に帰国を促す政策をとった。それでも多くの日系ブラジル人が日本各地で生活し続け、生活維持や教育などで大きな課題を残している。
一時的な労働者として好景気の時だけ「穴埋め」に使おうとする外国人政策は、先進諸国でことごとく失敗してきた。ドイツが典型で、労働力として受け入れたトルコ人などが都市部に集住し、ドイツ文化から遊離した形でコミュニティが出来上がった。結果、大きな社会不安を引き起こした。
「ドイツは移民国家である」と宣言、方針を大転換
シリアの内戦で周辺国に逃れた人たちは、「移民国家」ドイツに行くことを希望することが多い。2016年3月。(写真:AP/アフロ)
近年、ドイツは方針を大転換し、「ドイツは移民国家である」と宣言。ドイツに住む外国人にドイツ語教育を義務付けるなど、移民とドイツ社会の融合を図る姿勢を取っている。
日本では、今後も少子化の影響で労働力不足が一段と深刻化するのは明らかだ。そうした中で、いつまでも明確な移民政策を持たずに付け焼刃の労働力確保として外国人を受け入れていって良いのか。堺屋氏の言うように日本社会に積極的に外国人移民を受け入れていくべきではないのか。歴史に学ぶ時だろう。
このコラムについて
働き方の未来
人口減少社会の中で、新しい働き方の模索が続いている。政官民の識者やジャーナリストが、2035年を見据えた「働き方改革」を提言する。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/021900010/092900024
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