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逆に米国からの安い牛肉や乳製品の輸入が激増する(C)AP
TPPで「農林水産物の輸出が増える」は悪質な虚偽である 永田町の裏を読む
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/190669
2016年9月29日 日刊ゲンダイ
9月26日の所信表明演説で安倍晋三首相は「TPPの早期発効を大きなチャンスとして、農林水産物輸出の1兆円目標の早期達成を目指す。おいしくて安全な日本の農林水産物を世界に売り込みます」と強調した。野党の農林系議員がこう言って首をかしげる。
「今国会の最大課題がTPP承認だと言っている割には、それに触れたのはここだけ。しかもこの言い方では、TPPが発効すると日本からの農林水産物の輸出が増えるかのように聞こえる。何を言っているのか分からない」
確かに、これでは何のためのTPPなのかを国民に説明したことにならない。第1に、TPPが農業との関わりで一番問題なのは、今でさえ農林水産物の輸入が9兆5000億円に達して食糧自給率を39%(カロリーベース)まで押し下げているというのに、今後、米国産や豪州産の安い米、牛肉、乳製品などがドッと入ってきて、輸入額が増えるくらいならまだしも、日本の農業や畜産業の基盤が破壊されかねないということである。そのことを農家も国民も心配しているというのに、安倍はそれには一言も触れない。
第2に、農林水産物の輸出が増えて、昨年は7452億円に達し、この調子でいけば1兆円到達も遠くないとは思うが、その仕向け先は香港が第1位で24%、台湾が第3位で13%、中国が第4位で11%(以上「大中華圏」計48%)、以下、韓国7%、ヨーロッパ6%、タイ5%で、これらの国々はTPPとは関係がない。上位10カ国でTPP参加国は米国(第2位)、ベトナム(第7位)、シンガポール(第9位)で、その合計シェアは22%でしかない。だから、TPPで農林水産物輸出が増えるかのように言うのは虚偽である。逆に米国からの輸入が激増する。
個別品目を輸出金額の大きい順に並べると、ホタテ貝、真珠、清涼飲料水、サバ、菓子、日本酒、ブリ、リンゴ、牛肉、茶が上位10品目だ。おおむね、大中華圏を中心にした東アジア共通の食文化圏で日本の高品質の食品がもてはやされていることが分かる。繰り返すが、TPPとは何の関係もない。これら輸出を増やすには、日中韓自由貿易協定(FTA)、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を先行させるのが有効である。その中でアジアの農業の実情に即した緩やかな農業自由化の論理を構築した上でTPPに対処すべきだと、私は5年前から提唱してきたが、安倍にその戦略観はない。
高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。
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