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デタラメの限りを尽くし原発再稼働を進める国家的犯罪
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/190606
2016年9月27日 日刊ゲンダイ 文字お越し
巨額の税金がつぎ込まれたもんじゅ(共同通信社)
「誰のお金でやっていて、誰のための市場なのか。無責任体制と言わざるを得ない」。東京・築地市場の移転予定地「豊洲市場」の問題で、小池百合子知事が都庁の体質をこう批判していたが、豊洲市場問題をはるかに上回る「無責任」と「巨額の税金タレ流し」が露呈しているのが、安倍政権の原発政策だろう。
「本年度中に廃炉を含めて抜本的な見直しを行う」。21日の原子力関係閣僚会議で、菅官房長官は、福井・敦賀市の高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉について言及した。
原発の使用済み核燃料からウランとプルトニウムを回収し、新たな核燃料(MOX燃料)にリサイクルして「もんじゅ」で使用する――。資源に乏しい日本の“切り札”ともいうべき「核燃料サイクル」の中核に位置付けられていた施設が「もんじゅ」だ。知恵をつかさどる仏の象徴とされる「文殊菩薩」から命名され、85年に着工。“夢の原子炉”ともてはやされたものの、95年にナトリウム漏れ事故が発生し、2010年には炉内で機器が落下する事故が起きた。12年には約1万点の機器の点検漏れが判明するなど、トラブルが続発。長期間の運転停止を余儀なくされ、結局、94年の初臨界から、これまでの22年間で稼働した日数はわずか250日しかない。
それでいて、投じられた国費は当初計画の350億円からアレヨアレヨと膨らみ、すでに1兆2000億円とベラボーな金額になっている。稼働停止中でも年間維持費に200億円もかかっているというから、もっと早い時期に廃炉にすべきだったのに、何だかんだと屁理屈をつけてダラダラと事業が引き延ばしされてきたのだ。ニッチもサッチもいかなくなって廃炉の方針を固めたのだろうが、日本原子力開発機構の試算だと、廃炉しても今後30年間で3000億円が必要という。1ワットの発電もできない施設に数千億円もの国費を負担し続けなければならないなんて冗談じゃない。
原子力市民委員会の委員で、原子炉技術者の後藤政志氏はこう言う。
「『もんじゅ』で(冷却材として)使われるナトリウムは水や空気と触れると爆発する危険な物質な上、仮にトラブルが起きても一般の原発と違って原子炉内に『不活性ガス』という特殊ガスが使われているので作業員は近づくことができない。非常にリスクが高い施設で、私はずっと本稼働は不可能と言ってきました。高速増殖炉の技術開発は難しく、英国やドイツはとっくに手を引いているのに日本だけがこだわった。事業を推進してきた文科省が責任を問われるのを避けるため、やめなかったからです」
結論ありきで突っ走り、気付いた時には多額の税金がパー。「誰のお金でやっていて、誰のための施設なのか」という言葉がまさにピッタリだ。
■「核燃料サイクル」は幻想。カネをふんだくる詐欺師の手口と同じ
「もんじゅ」の廃炉方針を打ち出した安倍政権は正義漢ヅラしているが、この政権はナ〜ンにも分かっちゃいない。相変わらず「核燃料サイクル」に固執しているからだ。ウランとプルトニウムを取り出すための青森・六ケ所村再処理工場は93年の着工以来、2兆円もの建設費用が投じられたが、完成時期は20回以上も延期され、本格稼働のめどは立っていない。もはや「核燃料サイクル」の破綻は明らかなのに、安倍政権は「核燃料サイクルを推進するとともに、高速炉の研究開発に取り組む」として、新たに「高速炉開発会議(仮)」の設置を決めた。
あらためて「核燃料サイクル」の仕組みを検討するというのだが、この会議のメンバーは経産相、文科相のほか、原子力機構や原発メーカーだ。何のことはない。「原子力ムラ」のメンメンである。つまり、大失敗した「もんじゅ」や「六ケ所村再処理工場」に代わる新たなカネの受け皿をつくろう――というワケだ。巨額の税金をドブに捨てることになった責任に頬かむりしているどころか、さらに税金をふんだくるための看板掛け替えを画策しているのだからフザケている。前出の後藤政志氏は、「『核燃料サイクル』は幻想」と言い、こう続ける。
「『もんじゅ』や『六ケ所村』の失敗は日本の原子力行政が50年、60年と積み上げてきた結果です。その反省もなく、この手がダメなら、次はこの手でカネをブン捕ろう、なんて詐欺師の手口です。また莫大な税金が使われて借金になるだけです」
福島第一原子力発電所 陸側遮水壁の凍結運転開始の捜査の様子(東京電力提供)
凍土壁が破綻した福島原発廃炉費用を国民にツケ回し
安倍政権の国家ぐるみの“犯罪”とも言うべき原発行政のデタラメは、これだけじゃない。福島原発の汚染水対策と称して進められている凍土壁も大問題だ。東京電力は3月から、1〜4号機を覆う「氷の壁」の凍結を始めたものの、汚染水の発生量は1日約400トンで凍結前とほとんど変わっていない。地下水の流れが速く、凍結できない部分があるためだ。今夏の東日本地方への台風直撃時には、凍結部分の一部が溶ける事態も起き、原子力規制委員会の外部有識者が「破綻している」と断言している。
ところが、国や東電は凍土壁の失敗を認めていない。許し難いのは、どんどん膨らむ福島原発の廃炉費用を国民にツケ回ししようとしていることだ。2014年に公表された東電の新総合特別事業計画などによると、政府は当初、福島原発の廃炉・汚染水対策で2兆円、賠償・除染費用で9兆円――と見積もっていたが、大幅に上回るのは時間の問題。そこで経産省は新たに「東京電力改革・1F問題委員会」(東電委員会)を設置し、10月から、国による廃炉費用の支援強化策を検討するというのだが、「改革」とは名ばかり。ホンネは、新たな枠組みをつくって電気料金や税金を東電にジャブジャブ注ぎ込む仕組みをつくりたいだけだ。委員会のオブザーバーに東電ホールディングスの広瀬直己社長が名を連ねているなんて頭がクラクラしてしまう。国も東電も無軌道この上ない。
■「原子力ムラ」はあの手この手で反原発の動きを封じ込める
原子力を「重要なベースロード電源」に位置付ける安倍政権は原発推進の旗印を降ろす気は毛頭ない。となれば、「原子力ムラ」の連中が「奇貨居くべし」と、あの手この手で反原発の動きを封じ込めようとするのは容易に想像がつく。新潟・柏崎刈羽原発の再稼働に反対し続けてきた泉田裕彦・新潟県知事が突然、知事選への出馬を断念したのが典型だろう。泉田知事を長く取材しているジャーナリストの横田一氏はこう言う。
「『原子力ムラ』はあらゆる手を使って反原発を唱える知事、市長などを引きずり降ろしにかかっています。泉田知事の場合、地元紙が一役買ったと言われていますが、これは6月に辞職を表明した鹿内博・青森市長のケースと『同じ』と言われています」
鹿内市長は「脱原発をめざす首長会議」のメンバーで、六ケ所村再処理工場に反対していた人物だ。ところが地元紙が突然、三セクをめぐる赤字問題を執拗に批判し始め、辞職に追い込まれた。泉田知事が知事選出馬を取りやめる原因になったのも、三セクの問題が発端だったが、単なる偶然とは思えない。
安倍は26日始まった臨時国会の所信表明演説で、「アベノミクスの加速」や「TPP(環太平洋経済連携協定)の早期発効」などを挙げていたが、デタラメな原発政策もしっかりと審議するべきだ。
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