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民進党の両院議員総会であいさつする蓮舫・新代表(9月16日午後3時3分、東京都千代田区の民進党本部で、読売新聞/アフロ)
蓮舫民進党、船出から渦巻く不平不満の惨状 執行部人事は党内融和とは程遠いものに
http://toyokeizai.net/articles/-/137143
2016年09月22日 安積 明子 :ジャーナリスト 東洋経済
9月16日の野田佳彦幹事長就任から5日遅れた9月21日、その他の執行部のメンバーが発表され、民進党の蓮舫体制がスタートした。しかし、その選定過程と人事は問題だらけ。党内にさまざまなハレーションを生んでいる。
「今日は気分も新たに、色付きのジャケットを着てみました」。午後1時に始まった両院議員総会で挨拶した通り、蓮舫氏がこの日に着用したのは、ふんわりと薄いサーモンピンクのステンカラーのジャケットだった。あるいは自分の名前にちなんで、薄い蓮の色として選んだものだったのかもしれない。さらに党内円満を願ってのことなのか、ジャケットの身頃には丸状の模様が付いていた。いずれにしろ、新代表として党の融和をアピールする意気込みが感じられた。
しかし執行部人事を見ると、融和とはほど遠いものに思える。野田幹事長を初めとして、安住淳、細野豪志、江田憲司の3氏の代表代行や大串博志政調会長など、重要ポストはおしなべて身内で固められた。山井和則国対委員長の人事は前原選対からの抜擢で、第3次安倍第2次改造内閣で水月会(石破派)から山本有二農水相が1本釣りされた例に重なって見える。すなわち京都6区選出で凌雲会(前原派)メンバーの山井氏を取り込むことで、前原誠司元外相(京都2区)を牽制するという魂胆だろう。
■両院議員総会は委任状なしの欠席が11名
当然のことながら党内の執行部への不満は大きく、それは21日の両院議員総会でも明らかになった。この時の出席者数は総会開始時段階で衆院議員39名と参院議員25名の計64名と、16日に開かれた両院議員総会(衆院議員55名、参院議員21名が出席)より7名も少ない。しかもそれだけでは定足数である党所属の国会議員総数の147名の過半数を満たさず、委任状(72名分)がなければ両院議員総会自体が成立しないという危ういものだった。そして欠席者で委任状を出さなかった11名の中に、なんと赤松広隆元農水相が含まれていたのである。
旧社会党系のサンクチュアリを率いる赤松氏は、代表選でいち早く蓮舫氏への支持を表明した。いわば蓮舫代表の誕生に大きく寄与した存在だ。赤松氏が蓮舫氏を支持した理由については、リベラルな考えが似ていたからと一般的に報じられているが、「蓮舫氏なら安易に操れると踏んだのではないか」とも言われていた。
ところが新代表に就任したとたん、蓮舫氏は赤松氏の期待をいともたやすく裏切ってしまう。赤松氏は新執行部人事について、かねてから枝野幸男前幹事長の留任を希望していた。枝野氏には事前に「打診が来たら、断るな」と念を押した。念のために赤松氏は15日の夜に蓮舫氏に電話をかけ、幹事長人事について尋ねている。この時、蓮舫氏は「考えます」とだけ返答したが、すでに「野田幹事長」を決意しており、枝野氏に打診することはなかった。
蓮舫氏の裏切り行為が明らかになると、赤松氏は激怒し、常任顧問就任の申し出を断っている。委任状も出さずに両院議員総会を欠席したということは、怒りがそれだけ激しいのだろう。
蓮舫氏と代表選を闘った前原氏も、赤松氏と同じく常任顧問のポストを早々と蹴っている。ただしその動機は赤松氏と異なる。前原氏が狙うのは「ポスト蓮舫」。近々、蓮舫体制は立ち行かなくなると踏んでいるのだ。
理由は秋口から囁かれ始めた早期解散説。最も有力なのは「年明け解散・2月選挙」で、立ち行かなくなった蓮舫体制の代わりに「前原待望論」が出てくると見ている。その時に備えてフリーハンドでいたいのである。
しかも「常任顧問」のポストは、これからも党内で活躍したいと思う者には、さほどありがたいものではない。このポストに就任したのは岡田克也前代表だが、岡田氏は9月8日の最後の代表会見で「これからは夫婦で犬を連れて散歩したい」と語っており、その立場はいわば"隠居用"のようなものといえる。党内外で実権を行使できるというものでもなく、蹴ったとしても惜しくはない。
■若手の取り込みには成功
もっとも2名の年長者を祭り上げることには失敗した蓮舫氏だが、若手の取り込みには一応の成功を見せた。代表選に出馬した玉木雄一郎前国対副委員長には幹事長代理、前原陣営に付いた山尾志桜里前政調会長には国民運動局長のポストを与えている。玉木氏は昇格だが、山尾氏にとっては降格人事というところがミソだ。ちなみに山尾氏が「保育園落ちた日本死ね!!!」のブログを国会で取り上げて有名になり、岡田前代表によって政調会長に抜擢された時、蓮舫氏はライバル心をむき出しにしたと言われている。
このようにしてとりあえず、蓮舫体制は発足したわけだが、困難は内部に限らず、その行く手も厳しい。まずは10月23日に行われる衆院補選だが、東京10区と福岡6区で民進党が擁立した候補の情勢が思わしくないのだ。とりわけ東京10区では、補選1カ月前に「候補者すげ替え」の要望が出されるという事態になっている。
その責任を負うのが、選対委員長に任命された馬淵澄夫元国交相だ。21日の会見で馬淵氏は2012年に民主党が下野して以来、選対委員長や特命副幹事長として選挙実務に取り組んできた実績を強調した。しかし馬淵氏のおひざ元である奈良県では、民進党は7月の参院選で現職が敗退し、国会議員は馬淵氏のみという現状だ。
馬淵氏は選対委員長就任直後、さっそく東京10区の鈴木庸介候補と面会して事情を聴いたが、有効な打開策は打ち出しにくい。鈴木氏の対抗馬の若狭勝衆院議員はすでに小池百合子東京都知事との2面ポスターを選挙区内に貼りだしており、21日には自民党から公認も得ている。
「いつか幸せの時がきたら、いつか平時になったら、蓮の花の船をいくつもいくつも繋いでいけるように」。15日の代表選では、蓮舫氏は祖母が付けてくれた名前の由来をこう語っている。その蓮舫氏が率いる民進党に“幸せの時”は来るのだろうか。離れてしまった国民の信頼はいつ戻るのだろうか。ちなみに蓮の花言葉は「離れゆく愛」というらしい。
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