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安保法の議論が深まらない理由ー(天木直人氏)
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19th Sep 2016 市村 悦延 · @hellotomhanks
安保法が強行採決されてからきょうで1年になるという。
早いと言えば早いが、逆にあの騒ぎが遠い昔のようにも思える。
それほど現実感がないのは、安保法の議論がまるで深まらず、今後も深まる気配はないからだ。
なぜか。
安倍首相も野党も、日米軍事同盟の是非という本質的な議論から逃げているからだ。
安倍首相は集団的自衛権行使容認の本質を絶対に口にしない。
つまり、米国とともに戦う、そのためには自衛隊の犠牲もやむを得ない、とは絶対に言わない。
野党はそのことを追及せず、立憲主義を守れという憲法論、抽象論ばかりだ。
日米同盟は軍事同盟であり、軍事同盟は憲法違反だと、なぜ詰め寄らないのだろう。
みているがいい。
まもなく始まる臨時国会でも、うんざりするほどの不毛な議論に終始するだろう。
この矛盾を見事に証明してくれる記事を、きのう9月18日の日経新聞に見つけた。
それは「安保法成立1年 統幕長に聞く」というインタビュー記事だ。
そこで河野克俊統合幕僚長が語っている。
この人物こそ、安倍首相の下で猛烈な勢いで進むシビリアンコントロール逸脱の執行人である。
その経歴を見ると、父親は1941年の真珠湾攻に参加した旧海軍の軍人であるとなっている。
いまの自衛官の幹部の中には、このような旧日本帝国軍の血が流れている者が多いことを私は知っている。
その彼が、安保法の下で新たな任務を任される自衛隊についてこう語っている。
「リスクは当然上がるかもしれないが、我々は国民のリスクを下げるために、あえてリスクを引き受ける。
それが我々の仕事だ」と。
すばらしい言葉だ。
そんな自衛隊なら敬意を表する。
しかし、ここでいう国民のリスクとはいったい何か。
北朝鮮の核攻撃のことか。
それとも米中戦争に巻き込まれることか。
あるいはイスラム国との戦いのことか。
そんなリスクが国民に降りかかって来たら日本は終わりだ。
百歩譲って、そのようなリスクが起きたとして、自衛隊はそのようなリスクにそなえ、
国民のために率先して戦う訓練をするというのか。
河野統幕長はこう語っている。
「(南スーダンの)駆けつけ警護、他国軍との宿営地の共同防衛は(真っ先に)訓練する。
武器の使用は、間違いがあってはならない。ここを徹底する。目の前で民間の方々が助けを求めているのに
武器を持った自衛官が助けられなかったらものすごく悲しい。
人間として常識の事が出来るようになったという意味で、もし任務が付与されれば、
やりがいをもってやると思う・・・」
お笑いだ。
日本国民のリスクとは何の関係もない南スーダンにおいて、
駆けつけ警護をすることが安保法の最重要任務といわんばかりだ。
ここに安保法案の議論の不毛さがある。
安保法の議論を国民の前で堂々とする覚悟があるなら、
米国の戦争に日本がどう参加するかを真っ先に議論しなければいけない。
その議論をした途端、安保法のいかさまぶりが白日の下にさらされることになる。
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