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平和の党の足下で何が起きているのか
公明党婦人部 手綱の締め方を間違えれば党に深刻な亀裂も
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160822-00000019-pseven-soci
SAPIO2016年9月号
安倍政権が「安保法制」を押し進めた昨年以降、政権の一翼を担う公明党の存在がクローズアップされている。同党が支持母体とする創価学会は、平和主義をかかげる。とりわけ、創価学会の「婦人部」は、改憲への忌避感が強いとされる。季刊「宗教問題」編集長の小川寛大氏が解説する。
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創価学会とは強固な“男性型組織”である。歴代の会長は全員男性。最高幹部職である副会長(300人近くいる)の中にも女性はいない。
しかし創価学会の婦人部は、しばしばメディアなどから「創価学会の最強軍団」などと称されるほどの存在感を見せる。いったいなぜか。婦人部が、学会の日々の活動の柱石たる存在だというのは事実である。新会員の多くが2世、3世信者となり、“外からの新会員”が相対的に少なくなった現在でも、婦人部メンバーたちはママ友仲間を学会の活動に誘うなど、組織の底辺拡大のため尽力している。
選挙時のフレンド票(創価学会員以外から集める公明党票)獲得作戦も、彼女たちは熱心に電話や訪問を行う。ある創価学会関係者はこう分析してみせる。
「創価学会の男性会員の場合、日頃の活動は厳密な評価の対象です。『こいつはできる』ということになれば、幹部コースへの道も開けます。しかし女性たちにそういう可能性はあまりない。ただ、それゆえに、婦人部には“打算なく目の前の活動に打ち込む”という純粋な信仰が培われた」
その婦人部は、必ずしも“本部の意のままに動くロボット”ではない。かつて、ある自民党国会議員の下半身スキャンダルが世間を騒がせた時のこと。ある創価学会の幹部は、苦りきった表情で言った。
「婦人部は、こういう話を一番嫌う。選挙のときこういう状況を前にして、『自民党と協力しましょう』なんて言えませんよ」
彼の表情に浮かぶ憂慮は、創価学会・公明党中央が、婦人部との関係に日ごろ、いかに心を砕いているのかを示していた。創価学会の池田大作名誉会長が、高齢などの問題から公の場に姿を現さなくなって久しい。しかし“池田思想”の根幹とは世界平和の希求であり、池田氏は憲法9条を高く評価していた。ところが現在、公明党は改憲派である安倍政権の方針に基本的に同調している。
そうした矛盾が露呈したのが、昨年夏、安倍自公政権が安保法制を成立させたときのことだった。実際このとき、国会前のデモに「平和の党の看板を汚すな」と叫ぶ学会員らが参加。婦人部の面々も足を運び、創価学会のシンボル「三色旗」がはためく事態となった。
最近でも一部の創価学会員らによる「憲法と平和を考える勉強会」といった集まりが各地で開催されている。今春開かれた会合では、参加した婦人部の女性が「安倍さんの考えていることは怖い。反戦平和や護憲という池田先生のお考えを大切にすべきと思います」と熱弁をふるっているのを私は聞いた。
今年7月の参院選は、全国の創価学会員の不満がどれほど蓄積しているのかを計測する、一つのパラメータだった。しかし公明党は全国から比例票を757万票獲得。前回参院選(2013年)のときの756万票とほぼ変わらない数字で、また議席数も増やした。
ただここにいたるまでの“引き締め”は熾烈だった。昨年からの安保法制騒動の中で、創価学会・公明党はその機関紙誌で「安保法制は戦争法にあらず」といった論陣を徹底展開。そこには元防衛大臣・森本敏氏ら外部の著名論客らも多数招かれて、「安保法制は日本の国益に資する」とのメッセージを発していた。
こうした「内部向けの宣伝戦」に勝利した上で、公明党は参院選にも勝ったのである。事実、ある婦人部メンバーは選挙前、「何で安保法制が危険なの? 公明新聞で偉い先生が評価してたよ」とあっけらかんと語っていた。
ただ創価学会は婦人部を楽に統御しているわけではない。公明党広報部に、「自公連立政権の方針に反対する」学会員への対応を尋ねると、「多くの皆様から党の判断にご理解が得られるよう、丁寧に説明していきたいと思います」と回答。創価学会広報室も「公明党への理解不足から反対されているのであれば、残念です。当会の三色旗などが政治的に利用されるのは大変に遺憾です」と述べる。
その手綱の締め方を一つ間違えたとき、自公政権の現状、池田大作氏の長期不在といった不安材料は、創価学会・公明党に深刻な亀裂をもたらしかねないのだ。
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