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日本国憲法は「私たち(米国)が書いた」!? 米副大統領の仰天発言に安倍自民党がダンマリを決め込むワケ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49485
2016年08月20日(土) 歳川 隆雄「ニュースの深層」 現代ビジネス
■憲法は誰が書いたのか
なぜなのか、その理由が分からない。ジョセフ・バイデン米副大統領が8月15日、ペンシルベニア州スクラントンで開かれた民主党大統領候補のヒラリー・クリントン氏の集会に初めて参加し、そこで行った演説の中にあった重大発言に対する反応が日本国内で殆どないことである。
共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏はかつてインタビューの中で「日本が在日米軍駐留経費を全額負担しないと言うのであれば、日本は自力で国を守るべきだ。そのために核兵器を保有するというのであれば、それはそれで結構だ」といった趣旨のこと語った。
もちろん、それを念頭に置いてのことだが、バイデン副大統領は次のように述べた。
「トランプ氏は、私たちが書いた日本の憲法で(日本は)核兵器保有国になれないことを理解していない」
正確を期するために原文に当たってみる。「Does he not understand we wrote Japan’s constitution to say they couldn’t be a nuclear power?」――確かに、「私たち(米国)が書いた」と述べている。
たとえ政治集会での発言だとしても、現職の米国大統領が「私たちが日本国憲法を書いた」と表現するのは極めて異例のことだ。困惑する外務省の幹部も「せめてwroteではなくdrafted(下書きした)と言ってくれていれば」と嘆息する。
本来ならば日本国憲法の制定を巡る大論議に再び火を付けかねない重大発言である。事実、米紙ウォールストリート・ジャーナルのピーター・ランダーズ東京特派員は17日付の同紙で、(同発言が)日本国内に戦争放棄を謳った現行憲法改正論を惹起しつつあると報じている。
■安倍首相が継承した「考え」
ところが不思議なことに、どの国内メディアをチェックしても、護憲派からバイデン発言に対して強い反発があったとは聞かないし、改憲派から「やはり占領軍の押し付け憲法だった」といった類のコメントも見当たらない。
改めて指摘するまでもなく、安倍晋三首相は憲法改正論者である。その根底には、日本の戦争放棄を謳った憲法9条の成立過程について、連合軍最高司令部(GHQ)から押し付けられたものであるとの認識がある。
そこには、とりわけ安倍首相の敬愛する祖父・岸信介元首相の強い影響が見られる。その経緯は、今夏刊行の
『吉田茂と岸信介―自民党・保守二代潮流の系譜』(安井浩一郎・NHKスペシャル取材班著。岩波書店)に詳しい。
安井ディレクターは、岸信介氏が1948年12月に巣鴨プリズンから釈放されてから53年4月に政界復帰するまでの期間、故郷・山口県田布施町に隠遁していた当時の後援会小冊子に岸発言が収録されていることを発掘、単行本化するに当たって同書にこう紹介している。
「憲法は云ふまでもなく独立国の拠つて以て立つ根本法である。現行の憲法が占領下に於て時の占領軍の最高司令官から押し付けられたものであり、原文が英語で書かれた翻訳憲法であることは今日では公知の事実である。斯くの如き憲法を持つて居る独立国は古今東西に其の例を見ざるところである。」(原文ママ)
まさに岸信介氏は議席を得た後の54年3月、当時の自由党内に発足した憲法調査意会の初代会長に就任するはるか前から「現行憲法はマッカーサー=GHQの押し付け」という認識を抱いていたのだ。そして、安倍首相はそれを継承している。
ところが、「安倍1強」の自民党内の保守派・改憲派から今回のバイデン発言に関してのコメントがまったく聞えてこない。繰り返すが、一体全体なぜなのか。
その理由は一つしか考えられない。先の天皇陛下の「お気持ち」表明に込められた生前退位の問題が、事実上の政治イシューとなったからだ。
首相官邸サイドは、9月下旬召集の臨時国会での改憲論議と皇室典範改正・生前退位問題の議論を分離して臨む腹積もりである。当面、日本国憲法の成立を巡る「神学論争」を避けたいというのが、安倍官邸の本音なのだろう。
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