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日本に再び核を投下する国があるとすれば米国だと「ゴジラ」は教えてくれるー(田中良紹氏)
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14th Aug 2016 市村 悦延 · @hellotomhanks
8月9日の長崎原爆記念日、被爆者代表の井原東洋一さんは、
オバマ大統領が5月の広島訪問で
「雲一つない明るい朝、空から死が落ちてきて、世界は変わった」と述べたことに対し、
原爆は落ちてきたのではなくアメリカが落としたもので、
広島のウラン型原爆に対し長崎にはプルトニウム型原爆が投下され、
二種類の原爆による実験ではなかったかと怒りをぶつけた。
至極当然の怒りである。
しかし日本人の中にはオバマ大統領の広島演説を高く評価し、感動を覚えたという人も少なくない。
フーテンは大統領の広島訪問を評価はするが、当たり前のことを遅まきながらやった話で、
また米国民を代表する立場から「謝罪」できないことも理解するが、
しかしアメリカによる原爆投下の極悪非道を消し去るものではないと考えている。
オバマのいう「核なき世界」もあくまでもアメリカの優位を維持するための主張であり、
オバマは核の威力を高める近代化計画に110兆円という莫大な資金を投入する人間であることを
忘れてはならない。もし日本に再び核攻撃を仕掛けてくる国があるとすれば、
それは周辺諸国ではなく間違いなくアメリカだとフーテンは考えている。
ルーズベルト大統領の下で1942年に原爆開発(マンハッタン計画)に着手したアメリカは、
44年9月に日本への原爆投下を決め、実行部隊が編成されて秘密訓練を開始した。
一方で核開発に関わった科学者たちは都市への原爆投下に反対し、
ルーズベルトも駐日大使を務めたジョセフ・グルーを国務省極東局長に任命して和平工作を模索する。
ところが45年4月にルーズベルトが急死し副大統領トルーマンが大統領に昇格することになる。
トルーマンは原爆開発について何も知らされていなかったが、
原爆投下目的地の選定作業が彼の仕事として残されていた。
5月末に京都、広島、横浜、小倉が候補地に選ばれ、6月中旬にはそれが小倉、広島、新潟に変更される。
45年3月から米軍は東京、名古屋、大阪など大都市への焼夷弾爆撃を続けていたが、
原爆投下目的地への爆撃は、原爆の威力を測定する目的を損なうとして禁止された。
例えば横浜は候補地であった時には空襲されなかったが、
候補地から外れると翌日に空襲された。7月16日、アメリカは世界初の原爆実験に成功する。
その成果をもってトルーマンはポツダム会談に臨み、
スターリンにアメリカの威力を誇示しようとするが、
スターリンはすでにその情報を知っていてトルーマンは当てが外れた。
そのポツダム会談の最中にトルーマンは日本に対する原爆投下を承認するのである。
その間に原爆投下目的地に長崎が加わり、
また実行部隊は原爆と同じ形状の模擬爆弾を使い30都市を対象に述べ49回の予行演習を行う。
8月2日、ポツダム会談が終わってトルーマンが帰国すると、
原爆投下の日程は8月6日、第一目標は広島、第二目標が小倉、第三目標は長崎と決められた。
8月6日、広島にウラン型原爆リトルボーイが投下される。
そして8日に、2回目を9日に第一目標小倉、第二目標長崎に対して行うことが決められた。
当日、小倉上空は八幡市空襲の影響で視界不良のため目標を長崎に変更して
プルトニウム型原爆ファットマンが投下された。
原爆投下に反対した科学者たちは原爆の威力を示して戦争を終わらせるのであれば、
砂漠か無人島で爆発させるデモンストレーションで目的は十分果たせると主張したが、
アメリカの目的は戦争を終わらせることではなく原爆の破壊力を正確に測定することで、
そのために十分な広さを持つ市街地が目標にされた。
日本が降伏間近であることは軍中枢のマッカーサーもアイゼンハワーも知っており、
彼らは原爆投下に反対したが、それとは異なる論理で原爆は投下され、
にもかかわらずアメリカ兵の命を救うという後付けの論理で正当化され、
アメリカにはいまだに原爆投下の正義を信じる国民が少なくない。
そのことを強烈に思わされた経験がフーテンにはある。
前にも書いたが1992年の通常国会で宮沢総理がマネーゲームで金持ちが
さらに金持ちになるアメリカの風潮に対し、「労働の倫理観に疑問を感ずる」と発言した。
「額に汗してモノづくりすることが大事」という意味だが、
これに新聞が「アメリカ人は怠け者」と見出しを付けたことから大騒ぎになった。
アメリカ議会で議員たちは「戦争に勝ったのはどっちだ」、「怠け者が戦争に勝てるのか」、
「それをわからない日本にはもう一度原爆を落とせ」、「原爆を落として目を覚まさせろ」
といった発言が相次いだ。
宮沢総理が「アメリカ人は怠け者」と言ったわけではないので
真相を知らせれば収まるとフーテンは思ったが、
それよりも敗戦国の日本にはアメリカ批判を絶対に許さず、
原爆使用を躊躇しない考えを今も持ち続けていることにフーテンは驚いた。
その姿勢はその後も続く。小泉政権で外務大臣を務めた町村信孝氏はアメリカ側と会談した際、
アメリカが中国の軍事的脅威を強調して日本の協力を要求してきた時、
米中が合同軍事演習を定期的に行っていることとの整合性を問い質した。
するとアメリカ側は「それは戦争に勝ってから言え」と言ったと言う。
アメリカは日本には中国と敵対しろと言いながら自分は中国とも付き合う。
それに敗戦国の日本が文句を言うのを許さないと言うわけだ。
つまり日本はアメリカにとって永遠の属国なのである。
最近「シン・ゴジラ」という傑作映画を見た。
怪獣映画を装っているが、アメリカの属国日本が国家的危機に陥ったとき
日本の官僚と政治家はどう動くかをテーマにしたもので3・11の大震災を強く思い起こさせる映画である。
日本政府は危機に直面すると右往左往するだけで決断ができない。
するとアメリカが出てきて日本政府を操るようになる。
そして危機(ゴジラ)が容易に取り除かれないと東京にいるゴジラに核攻撃を決定する。
東京が核攻撃されれば日本は消滅の危機にさらされるがアメリカはそれを躊躇しない。
日本がどうなろうともアメリカに向かってくる危機を阻止するためだ。
映画では主流から外れた異端の官僚や学者が集まり、
ゴジラの活動を止める薬品を製造してアメリカの核攻撃より前に
ゴジラ制圧に成功するのだが、
それに協力してくれるのは欧州のフランスという設定になっていてなかなか興味深い。
日本人の中には日米安保でいざとなればアメリカが日本を守ってくれるという神話を信ずる人が多く
フーテンは唖然とするが、アメリカ議会を10年余見続けたフーテンの結論は、
アメリカが他国の利益のために動くことはありえない。
一方で自国の利益が脅かされれば同盟国であろうとも核攻撃を躊躇しない。
そうした意味で「シン・ゴジラ」はフーテンの見方と共通する。
日本に危機が生まれ、それを日本政府が除去できないとなれば、
アメリカは自国の利益のために日本を消滅させることも躊躇なくやることを肝に銘じておいた方が良い。
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