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尖閣諸島に大挙襲来する中国漁船を蹴散らす、最も有効な手段はコレではないか 漁民という名の「民兵」たち
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49391
2016年08月08日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
■「キャベツ構造」
6日午前、中国海警局の船6隻が沖縄県の尖閣諸島周辺の接続水域(領海の外側)に入り、中国の漁船およそ230隻がその周辺を航行した。
これに対して、外務省は以下のような抗議を行っている。(http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_003572.html)
1 本6日午前8時5分頃、我が国尖閣諸島周辺の接続水域において中国海警船舶6隻(そのうち外観上武器を搭載している船舶は3隻)及びその周辺に中国漁船約230隻を確認しました。
2 これを受け、同日午前11時45分頃、アジア大洋州局長が在京中国大使館公使に対し、当該公船が直ちに接続水域から立ち去ること及び我が国領海に決して入らないことを強く求めるとともに、公船による尖閣諸島周辺での活動は現場の緊張を更に高める一方的な情勢のエスカレーションであり、我が国としてかかる状況は決して受け入れられない旨強く抗議しました。
尖閣周辺では、中国船による侵入は常習的になっている。6月15日午前3時半ごろには、中国海軍の情報収集艦1隻が鹿児島県口永良部(くちのえらぶ)島西方のわが国領海に侵入している。中国海軍の軍艦による領海侵犯は12年ぶり、2度目である。その前の9日未明には尖閣諸島の大正島と久場島の間の接続水域に中国の軍艦が侵入した。
中国船とは、中国海軍の軍艦、中国海警局の公船、その他漁船と大別できるが、これらは見事に連携がとられている。一般に、中国海軍の軍艦が中心となり、その外側が中国海警局、さらにその外、一番外側が漁船となっている。これを「キャベツ構造」という人もいる。
実際、尖閣の北方100キロには常に中国海軍の軍艦が航行している。中国海警局の公船は漁船を引き連れて尖閣周辺に侵入してくるが、それらを中国海軍の軍艦が常時護衛しているのだ。
■漁民ではなく民兵
ここで注意しなければいけないのは、中国漁船である。日本のような純粋な漁民による漁船ではなく、射撃などの軍事訓練を受けた漁民であり、中国当局や中国海軍の意向で動く民兵の一種である。
これは半ば常識であるが、新聞報道などでは単純に漁船と書かれているので、要注意だ。
この民兵の正確な数はわからないが、従来より行われてきた手法である。そうした民兵による漁船には、軽兵器などが持ち込まれているともいわれている。
民兵を活用した漁船のほうが、中国海軍の軍艦、中国海警局の公船より、国家の意図を隠せるので、今の段階では重宝されているのだろう。なお、こうした民兵の維持に、中国の軍事予算が使われているのはいうまでもない。
一方、日本はといえば、こうした中国船の侵入に対して、政府がその都度抗議をしている。が、翁長雄志・沖縄県知事は明確に見解を示していない。そのため、漁業関係者は尖閣周辺の漁場に行けないと思い込んでおり、実際に行くようなことはない。そもそも、海上自衛隊が背後にいて守ってくれるのでもなければ、海上保安庁の少ない巡視船だけが守ってくれても、漁民も尖閣周辺に行こうとは思うはずがない。
一体、どこに問題があるのだろうか。
もちろん、中国の国際法を無視した挑発が一番の元凶だ。その中国の行動をただすのは至難の技だ。一党独裁体制で、民主主義国家では当たり前の情報公開がないので、日本への挑発のために、軍事予算で民兵による漁船集団を組織化していることを、国民が知るはずもないだろう。
このコラムでは、中国が民主化していないのは日本にとって大きな脅威であることを何度も指摘してきた。その意味で、迂遠なようだが、中国の民主化がやはり必要なのだろう。安保法制を「戦争法だ」と国会前に叫ぶのであれば、その声を中国政府や中国国民に届けるほうが、日本の安全保障によって有益である。
■一党独裁が問題なのだが…
さて、日本側はどう対応すればいいのか。中国船による尖閣周辺への侵入は、いわゆるグレーゾーンの問題であるといわれている。
しばしば日本政府から持ち出される例は、多数の武装した漁船が領海侵犯したり、一部の漁民が不法上陸するケースだ。
前者の場合、多数の漁船に対して海上保安庁が対応するのはかなり困難である。その場合には、自衛隊に「海上警備行動」を命じることになる(自衛隊法第82条)。海上警備行動は、これまで、能登半島沖北朝鮮不審船事件(1999年)、中国潜水艦領海侵犯事件(2004年)、ソマリア沖海賊対策(2009年)と3回発動されている。
後者の場合、警察での対応は困難である、その場合には、自衛隊に「治安出動」を命じることになる(自衛隊法第78条)。なお、治安出動はこれまで発動されたことはない。
こうした事態が起これば、海上保安庁、警察から自衛隊にバトンを渡すことになるが、それが迅速かつ切れ目なく行えるかどうかがポイントである。
2015年5月17日の閣議決定によって、グレーゾーン事態に対応するために電話閣議方式が導入されている。国務大臣全員が参加する臨時閣議の開催が困難なときには、総理大臣が主宰して電話等で閣議決定をするのだ。
それ以前には、総理から閣議書を各大臣に回して閣議決定する「持ち回り閣議」が行われていたが、それをさらに緊急事態用に、迅速に政府の意思決定を行えるようにしたのだ。おそらく、電話閣議による海上警備行動等の発動も実際にシミュレーションされているだろう。
ただ筆者は、今の中国の海軍、警備局、漁民(民兵)の一体化は、とても「グレーゾーン」とはいえないと思う。形式的には漁民を装っているが、事実上彼らは民兵であり、真っ黒、軍事行動そのものである。
こう考えると、領海侵犯でも無害通航権など認めずに、武力行使のできる自衛隊が防衛出動(自衛隊法第76条)するのが本来の姿だろう。
いずれにしても、中国は一党独裁によって中国海軍の軍艦、中国海警局の公船、その他漁船を一体化・統一化しているが、日本では民主主義の下で、切れ目のない迅速対応をしている。これがうまく機能するかどうかが問われているのだ。
■9月に向けてますます激化する恐れ
しかも、中国は海軍、警備局、漁民(民兵)が一体化しているが、日本では、自衛隊が出動したとしても、通常火器による海上警備行動・治安出動と、武力行使の防衛出動の間には大きな違いがある。これは、相手の出方に応じて、海上警備行動となるのか、治安出動となるのか分かれているのだが、ここに切れ目があるわけだ。
しかし、これは専守防衛に徹する日本としてはやむを得ない。この切れ目をどう乗り越えるのか、後でしっかり国際社会に説明できるような体制を整えておく必要がある。
尖閣諸島については、日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らかであり、現に我が国はこれを有効に支配している。このため、尖閣諸島をめぐって解決しなければならない領有権の問題はそもそも存在しない。
中国政府は、1895年の尖閣諸島の日本領への編入から1970年代に至るまで、日本による尖閣諸島に対する有効な支配に対し一切異議を申し立ててこなかった。この間、尖閣諸島は、中国共産党の機関紙や中国の地図の中でも、日本の領土として扱われてきた。
【参考:『世界地図集』(1958年出版(1960年第二次印刷))】
こうした歴史事実にもかかわらず、中国は尖閣諸島に、海軍、警備局、漁民(民兵)の一体化で仕掛けてくる。先月12日にはオランダ・ハーグの仲裁裁判所が、中国の主権を全面的に認めない判断を示したが、国際法無視の中国は何もなかったかのように振る舞っている。
9月には中国・杭州で20ヵ国・地域(G20)首脳会議がある。その際、南シナ海問題が話題にあがると、中国政府は困るだろう。議長国なので何とかするだろうが、その際、尖閣周辺問題を南シナ海問題とすり替える可能性もあり、尖閣周辺での中国の挑発行動はますます激化することになるだろう。
中国は海軍、警備局、漁民(民兵)の一体化で仕掛けてくるが、日本は正直言って心許ない(下図)。
サンフランシスコ平和条約で尖閣諸島が日本の領土として確認され、米国の施政下に置かれて以降、日本が日米地位協定に基づいて施設提供している米海軍用の射爆撃場が2ヵ所ある。久場島の「黄尾嶼射爆撃場」と大正島の「赤尾嶼射爆撃場」である。
1978年6月以来使用されていないが、この際、ここを米軍に使ってもらってはどうだろうか。尖閣周辺への中国船の侵入をみるにつけ、日本政府もそこまでの対応策を考えておいたほうがいいと思うのだが。
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