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現職大臣の島尻安伊子氏を大差で破り初当選した伊波洋一氏(C)日刊ゲンダイ
これから沖縄基地問題の論戦は格段にレベルアップする 永田町の裏を読む
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/186998
2016年8月4日 日刊ゲンダイ
先の参院選の沖縄選挙区で現職大臣の島尻安伊子を大差で破って初当選した伊波洋一議員に、8月1日初登院の夜にお目にかかった。
「選挙前には接戦かと言われていたのに、大差でしたね」と称えると、「ええ、おかげさまで10万6400票差でした」と晴れやかに言う。市町村別の得票数を見ても、従来は自公両党が強かった石垣市や宮古島市でも互角に近いところまで票差を詰めており、「明らかに『オール沖縄』勢力が力を増している」とのことだった。伊波さんの勝利で、沖縄の衆参すべての選挙区から自民党が駆逐されたことの意義は大きい。今後は、同じく沖縄から参議院に出ている沖縄社会大衆党の糸数慶子議員と新会派「沖縄の風」を結成するとともに、民進党リベラル派を中心に社民、生活の一部など40人余りがつくる超党派の「立憲フォーラム」にも参加して活動を展開するという。
伊波さんが国会に乗り込んできたことで、私が期待するのは、沖縄の辺野古はじめ基地問題や、その背景となる米軍再編、海兵隊の動向などについての論戦が格段にレベルアップするだろうということである。彼は、県議2期、普天間飛行場の地元の宜野湾市の市長2期という公式プロフィルには出てこないが、実は沖縄では誰からも一目置かれている軍事問題研究家で、市長時代には市の予算も使って膨大な米軍関係資料を収集し、翻訳し、分析してホームページで公開した。私たち沖縄基地問題に関心を持つ者にとっては、この「伊波ファイル」は貴重な情報源だった。今もその研究熱心さは変わらず、例えば「世界」の今年1月号には「沖縄は新基地を拒む」を寄稿してその最新の成果の一端を披露しているので、一読をお勧めする。
伊波快勝に報復するかのように、日本政府は開票翌日の早朝から、本島北部・高江のヘリパッド建設の強行に着手、本土から動員した機動隊員を使って、ピケ隊の暴力的な排除を始めた。そのことを話題にし、建設工事やオスプレイ飛行でヤンバルの森に生息する特別天然記念物の県鳥「ノグチゲラ」や、準絶滅危惧種のチョウ「リュウキュウウラボシシジミ」の生息環境破壊が危ぶまれていることに触れると、彼はすぐに「あ、それは平成12年9月に日米が合意した『環境原則に関する共同発表』とそれに基づく米軍の『日本環境管理基準』への明白な違反ということで、政府を追及できます」と、日付から文書名までスラスラと口をついて出てくる。外務・防衛官僚がタジタジになるのを早く見たいものだ。
高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。
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