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“茶坊主”と“お友達”だけ優遇 安倍改造内閣の恐怖人事
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/187018
2016年8月3日 日刊ゲンダイ 文字お越し
第3次安倍再改造内閣で予想される顔ぶれ=左表(C)日刊ゲンダイ
安倍晋三首相の独裁がエスカレートするのは間違いない。
3日に行われた内閣改造で留任閣僚がズラリ並んだ。麻生太郎財務相、岸田文雄外相、菅義偉官房長官という2012年末の第2次政権発足時からのメンメンに加え、高市早苗総務相、塩崎恭久厚労相、加藤勝信1億相、石原伸晃経済再生相まで続投である。「内閣の骨格を維持して、安定した政権運営」などと解説されているが、要は自分の言うことを聞く“お友達”や“茶坊主”を置いておきたいだけ。世界情勢が混迷を深め、経済の先行きも不透明になっているのに、安倍にとっては国民生活より、やりたい放題の暴政を続けることの方が大事なのである。
閣僚人事に先立って決まった自民党役員人事もその最たるものだ。特にケガで復帰できない谷垣の続投を断念した後の幹事長ポスト。総務会長からの昇格となった二階俊博を、大メディアは“重量級”“調整力に定評”だとか実力者扱いしているが、ちゃんちゃらおかしい。
昨年の総裁選で安倍支持をいち早く表明したことや、年寄り過ぎて寝首をかかないという“忠誠心”がホントの起用理由だ。二階は最近、18年9月の総裁任期の延長まで口にしていた。安倍へのスリ寄りがミエミエで呆れるほどだ。
政治学者の五十嵐仁氏はこう言う。
「調整型といいますが、機を見るに敏なだけ。敏過ぎて政党を渡り歩き、出世できなかったから重鎮になった。今、安倍首相にくっついているのもそう。総裁再選を真っ先に支持し、総裁の任期延長でタイミング良く自分を売り込んだ。中身は、公共事業にバンバン予算をつける古いタイプの政治家ですよ」
二階が国土強靱化の旗振り役だったのは有名な話。2日、閣議決定された28兆円超の経済対策に、リニア中央新幹線の全線開業前倒しやクルーズ船を受け入れる港湾施設の整備などの事業を盛り込ませたのも二階という。公共事業重視で利権のにおいがプンプンなのに、持ち上げるメディアはどうかしている。
細田博之が総務会長に決まったのは、出身派閥の長で安倍にとって気心知れた間柄だからだ。茂木敏充の政調会長起用は、選対委員長として参院選を仕切った論功行賞。
「茂木さんは額賀派の領袖を狙っている。総理との距離感の近さで実力をアピールしたいのだろう」(自民党ベテラン議員)というから、党三役が政府に異論を挟むなんて光景は今後もなく、安倍に唯々諾々が続くことになる。
相変わらずのお友達人事(再入閣の稲田=左と初入閣の世耕)/(C)日刊ゲンダイ
超タカ派の防衛相でますますナショナリズム高揚
初入閣、再入閣の大臣もヒドい顔ぶれだ。稲田朋美は安倍の一番の子飼い。直前まで政調会長だった上、当選4回で2度目の入閣。それも防衛相である。女性初の首相にするため、自分のそばで帝王学を学ばせようということか。
官房副長官だった世耕弘成の経産相抜擢も、お友達人事だ。第2次政権発足後から長期にわたり副長官を務め、在任期間は歴代1位。当選3回の入閣は当たり前の参院で当選4回まで入閣を待たされた。安倍からすれば「今までお勤めご苦労さん」てなところだろう。
麻生の子分の松本純など、その他も派閥の要望を受け入れた形。政治家としての能力や資質なんて、全く考慮しない布陣なのである。
「安倍さんは何でも自分が一番じゃなきゃ気が済まないタイプ。自分に従順であるかどうかが重要で、逆らったり、盾を突くような人は徹底的に干し上げる。稲田さんの起用はお友達人事ではありますが、入閣させられるような女性が他にいなかったという理由もあるようです。稲田さんなら首相の言いなりですからね。ただ、防衛相というのはいかがなものか。自衛隊の最高司令官がウルトラタカ派では周辺諸国に刺激を与えてしまう。ま、安倍さんは、安全保障上の危機感をあおって、国民のナショナリズムが高揚するのを、むしろ好都合とでも思っているのでしょう」(政治評論家・野上忠興氏)
留任閣僚で驚愕なのは石原伸晃だ。都連会長として都知事選に敗れたこともあり、閣僚も交代と噂されていた。「安倍さんが個人的な関係もあり残した」(前出のベテラン議員)とされるが、無能無政策で従順なのも、安倍が伸晃を重宝する理由だろう。
失敗が明らかなアベノミクスを、これからも最大限ふかさなければならないし、TPPもある。留任する麻生財務相とともに経済オンチ大臣の方が、安倍にとってやりやすいわけだが、国民にとっては悲劇としか言いようがない。
■自民党と国会の“ダブル1強”で強権
こんな最悪人事なのに自民党内は強権首相の前に皆ひれ伏し、沈黙。異様で異常としか言いようがない。
国会も衆参で憲法改正発議に必要な3分の2の勢力を確保し、いつの間にか改憲が既定路線になってしまった。安倍は「おおさか維新の会」を取り込むため先週末、橋下徹前代表と会食。「憲法審査会で改憲の議論をやっていきたい」と伝えたという。
自民党は参院選後に無所属議員を1人入党させ、あれよあれよという間に、衆参とも単独過半数を達成している。いざとなれば、改憲に慎重な公明党を福祉政策などをエサに揺さぶることもできるわけだ。
「今や安倍さんは、自民党内と国会内の『ダブル1強』です。参院選でもそこそこの成績を残したので、これまで以上に誰も物を言えない空気になっている。ただ、改憲については急ぐと失敗しかねません。改憲勢力とはいえ、維新の会は何を改憲するかの項目が違います。経済が順調とはいえない中で、世論を納得させるのも簡単ではありません」(五十嵐仁氏=前出)
恐怖政治が吹きすさぶ今度の改造で唯一、安倍に抵抗したと言えるのは石破茂ぐらいだ。農水相などでの閣内残留を打診されたものの拒否。次期総裁選で「ポスト安倍」を目指すため、「野に下るべき」という仲間の意見に耳を傾けざるを得ない事情もあった。
「みんなおとなしくしてはいますが、相変わらずのお友達人事には、入閣待望組を筆頭に不満がマグマのようにたまっている。そんな中で石破さんが安倍さんの要求をはねつけたことは、アリの一穴になるかもしれません。交代が確実視されていた伸晃さんを留任させたのも、野に放って、石破さんと連携されるのを恐れたからともいわれていますからね」(野上忠興氏=前出)
いずれにしても、どこぞの国の将軍さながらの、国民そっちのけの亡国政治が続くことだけは確実である。
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