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「小池劇場」はこれからが本番
新党結成も? 永田町で膨らむ警戒と期待
2016年8月2日(火)
安藤 毅
東京都知事選は「組織対個人」を強調した元防衛相の小池百合子氏の圧勝に終わった。今後都議会とどう向き合うのか注目される。存在感を高めた小池氏の新党立ち上げ説も浮上しており、「小池劇場」はこれからが本番だ。
都知事選で当選を決め、支持者と喜びをわかち合う小池氏 (写真:アフロ)
自民党が分裂し、野党4党が参院選に続き共闘する構図となった今回の都知事選。終わってみれば、自民党都連との対決色を鮮明にし、「組織対個人」の戦いを演出した小池百合子氏が無党派層などから幅広い支持を集め、元総務相の増田寛也氏、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏との三つ巴の対決を制した。
「劇場型」選挙を演出した小池氏
「土俵の設定で間違ったうえ、テレビのワイドショーが取り上げやすいように対立構図を作る劇場型選挙をやられてしまった」。増田氏の敗北に自民幹部はこう嘆く。
自民は今回の都知事選を巡って対応が後手に回った。「政治とカネ」の問題で辞職に追い込まれた舛添要一氏を支援した負い目から与野党相乗りも可能な「非政治家の実務家」を中心に候補者擁立を模索した。
だが、与野党が全面対決した参院選と並行したことから作業は難航した。
この間に、いち早く「崖から飛び降りる覚悟」を強調して出馬表明した小池氏を止められず、保守分裂選挙に追い込まれた。
一方の野党側も混迷の末、告示2日前に公約を示さないまま出馬を表明した鳥越氏に民進党、共産党など4党が相乗りして支援することになった。
自民、公明の与党側にしてみれば、「国や都議会との関係が良好で、とにかく4年間無事に務めあげてくれる実務家」を選択する選挙にするはずが、ガチンコの殴り合いの選挙戦を強いられる構図となったのが実情だ。
こうなると、小池氏、鳥越氏に比べ増田氏の知名度不足は大きなマイナス材料だった。中盤から組織固めを進め、追い上げを図ったものの、基本的に「既成政治の継承」の印象が強い増田氏に対し、巨大組織に1人で切り込むという「変革」イメージをアピールした小池氏の戦術が功を奏し、ほかの候補を寄せ付けなかった。
もくろみ通りの「先行逃げ切り」を果たした小池氏。「これまでにない都政、これまでに見たこともないような都政を進めていきたい」と意気込みを語るが、カギとなるのが都議会との関係だ。
出馬表明以降、小池氏は自民都連や都議会自民の幹部を批判し続けてきた。「仮想敵」の扱いを受けた都連関係者の間では怨嗟の声が渦巻いている。
都知事の権限が強いとはいえ、都議会で予算案や条例案を通すことができなければ、公約に掲げた「小池カラー」の政策は何も進まない恐れがあるのだ。
カギとなる都議会との関係
こうした点を踏まえ、小池氏はさっそく「都民の利益のため一致点、接点を見いだすよう協力を求めたい」と述べ、都議会の自民、公明両党との連携を重視する姿勢を示した。増田氏に100万票以上の大差を付けての圧勝という「民意」が示され、自民都連内からも「小池氏との対決姿勢を続けるのは得策ではない」との声も上がっている。当面は双方が相手の出方をうかがう展開となりそうだ。
国との関係の在り方も焦点となる。小池氏が公約に掲げた東京五輪・パラリンピック関係予算や運営の適正化を巡っては、政府や五輪組織委員会との折衝が欠かせない。
とりわけ五輪経費の分担の見直しについて迅速な対応が求められているが、透明性確保を訴える小池氏と国などとの調整が円滑に進むのか不透明だ。
五輪以外でも、子育て支援や介護、防災対策、インフラ整備など国と都との連携が不可欠な課題は多い。
安倍晋三首相は2012年の自民党総裁選で小池氏が石破茂氏の支援に回ったことで、小池氏と距離を置いてきた。それでも今回の都知事選で、安倍首相は公の場で小池氏を批判せず、増田氏の応援演説も見送るなど小池氏に一定の配慮を見せた。
安倍首相の側近は「双方が大人の対応をし、関係修復を図るはずだ」と指摘する。
さらに、今回の「小池人気」の広がりを踏まえ、永田町や都政関係者の間では「小池劇場」の続編シナリオが語られ出している。来年夏の都議会選挙に向け小池氏が「新党」を立ち上げ、自らの政策に賛同する候補者を都議選に大量擁立するのではないか、との見立てだ。
こうした説が早々とささやかれる背景にあるのが、小池氏の成功体験だ。小池氏は1992年に細川護煕元首相が立ち上げた日本新党から参院選に出馬し政界入りした。
日本新党は小池氏を含め立ち上げ直後の参院選で4議席を獲得した後、翌1993年の都議選で20議席を獲得する躍進を果たし、その後の非自民連立政権誕生への起爆剤となった。
「都議選の重要性を小池さんは十二分に分かっているはず。動かないはずがない」。自民関係者はこう漏らす。
新たな「第3極」に発展も
減税日本代表の河村たかし名古屋市長が小池氏の応援演説をしたことも憶測を呼んでいる。河村氏はおおさか維新の会との連携強化を模索中。さらに政界関係者は、おおさか維新の松井一郎代表(大阪府知事)と小池氏が都議選を念頭に共闘を検討していると明かす。
小池氏は新党の計画について「現時点ではない」と否定する。だが、安倍政権や自民都連の出方次第では都議選で自民都議に対する「刺客」候補をぶつける展開はありうる。
小池氏を軸とする動きが勢いづけば、国政で新たな「第3極」の影響力が高まる可能性もある。
こうした中、民進党は岡田克也代表が唐突に9月の代表選への不出馬を表明。代表選の候補者擁立を巡る動きが一気に加速した。
次期衆院選をにらみ、代表選では岡田氏が主導した野党共闘路線の是非が最大のポイントになる。
だが、鳥越氏の惨敗で民進内では現執行部への批判が噴出している。仮に野党共闘路線が選択されれば、これに否定的な保守系議員の反発が予想される。民進幹部の一人は「保守系議員が離脱し、小池新党や第3極への合流を模索する展開があり得る」と警戒する。
今回の都知事選では、水面下で小池氏の支援に回った野党議員も少なくない。次期衆院選での生き残りに向け、既に小池新党への期待を口にする議員もいるほどだ。
安倍晋三首相が7月30日におおさか維新の橋下徹前代表、松井氏と都内で会談したことも重要な意味を持つ。安倍首相は橋下氏らに憲法改正論議への協力を求めたが、おおさか維新と小池氏の接近も踏まえ、都政の今後の情勢についても話題になったという。
既に小池氏の今後の動向や都政運営に対し、永田町では警戒と期待が大きく膨らんでいるのだ。
東京五輪、待機児童や防災対策など山積する都政の課題は停滞を余儀なくされている。「しがらみのなさ」を訴え都民の支持を集めた小池氏が着実にこうした問題を前に進めていけるのか、それとも再び混迷が続くのか。
そして、小池都政は国政の先行きにどんな影響を及ぼすのか。劇場の幕はまだ開いたばかりだ。
このコラムについて
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日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/080100403/
- 都知事選・小池百合子にまさかの展開-“再選挙”の可能性が浮上!また50億円の税金がかかる!?(地デジコントロール次第?) 戦争とはこういう物 2016/8/02 12:13:35
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