Column | 2016年 07月 30日 09:00 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:QQE長期化なら債務膨張リスクも、政府の積極財政でhttp://s4.reutersmedia.net/resources/r/?m=02&d=20160730&t=2&i=1147666145&w=644&fh=&fw=&ll=&pl=&sq=&r=LYNXNPEC6S0MZ 7月29日、日銀の黒田東彦総裁(写真)はETFの購入増を柱とする追加緩和策が、不透明感が強まっている内外経済情勢の下で、最も適切な政策対応であると説明した。(2016年 ロイター/Kim Kyung-Hoon) 田巻 一彦 《東京 29日 ロイター》 - 日銀の黒田東彦総裁は29日の会見で、ETF(上場投資信託)の購入増を柱とする追加緩和策が、不透明感が強まっている内外経済情勢の下で、最も適切な政策対応であると説明した。 ただ、2%の物価目標達成が確実さを増すのか、不透明感が依然として強い。マイナス金利付き量的・質的金融緩和政策(QQE)の長期化が鮮明になれば、政府の積極財政も長期化し、債務残高の膨張に歯止めがかからなくなるリスクもはらんでいる。 <2年・2%に強気の黒田総裁> この日の黒田総裁は、いつにも増して強気の姿勢を貫いた。最も印象的だったのは「2年程度を念頭にできるだけ早期に2%を達成するという点は、今後も変更するつもりはない」と述べた点だ。 ただ、29日に発表された6月全国消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)は前年比マイナス0.5%と低迷。2%のゴールは足元で遠ざかる動きになっている。 黒田総裁は、英国のEU離脱(ブレグジット)や新興国経済の減速などで国際金融市場における不安定さや不確実性が増し、日本国内の企業や家計の心理に悪影響を与えるリスクに注目。それに対応して今回の緩和策を打ち出したと述べた。 ETF買い入れ額をほぼ倍増の6兆円としたが、それがどのルートで効果を発揮し、最終的に物価を押し上げるのか、具体的な波及ルートに関する説明はなかった。 株式市場では、ETF購入増額は株価の押し上げに一定の効果があると言われている。株価が上昇し、リスクオン心理が台頭すれば、企業は設備投資を増やし、家計では消費拡大方向に動き出す、との見立てだ。 それが望ましいシナリオだろうと推測するが、この日の日経平均は乱高下を繰り返した後、前日比92円43銭高の1万6569円27銭で取引を終えた。 2万円方向に株価を押し上げ、それを起爆剤に景気回復方向のメカニズムを全開させるというシナリオの実現には、かなり高いハードルが待ち受けているのではないか。 政府が策定中の景気対策の事業規模は28兆1000億円、財政支出は13兆5000円億円に達することが明らかになっているが、それでも株価の上値は重い。 足元で公表されている弱い物価や個人消費のデータからみて、国内経済の「体温」は、政府・日銀が実感しているよりも「低い」のではないかという疑問が生じる。 もし、展望リポートで示された物価見通しよりも下振れの軌道を走り続けるようなら、2017年度中の物価目標2%の達成は危ぶまれることになるだろう。 その結果、QQE政策は当初の2年から大幅に長期化される可能性が高まる。実際、18年3月に達成(日銀の17年度中の最後のタイミング)なら5年間かかったということになる。 <QQEに甘える政府のリスク> そこからさらに達成が遅れるようだと、日銀の信認に打撃となるだけでなく、別のリスクを増大させる問題を抱えることになるのではないかと懸念する。 それは、政府の財政規律を弛緩(しかん)させるという問題だ。黒田総裁が29日の会見で指摘したように、QQEの効果としてイールドカーブがフラット化し、その結果、企業向けの貸出金利も低下して、金融緩和効果が出ている。 日本の長期金利は一時、マイナス0.30%まで低下した。その背景には日銀の大量購入がある。仮に市場が日本政府の財政規律に懸念を持ち、売りが増大しても、それを日銀の買いが相殺し、市場の「警報装置」が機能しなくなるという副作用が生じる。 現実に、政府の中長期試算では、2020年度の基礎的財政収支黒字化を達成しようとしても、名目3%成長のシナリオでも、5兆円超のギャップが生じてしまう。 しかし、だからと言って無駄な歳出を削ろうという声は与党内では目立たない。むしろ、マイナス金利を利用して国債増発で景気を回復させるべきだとの意見が多い。 実質的に財政規律が弛緩しようとしている時に、QQE政策を仮に10年間も継続するようなら、歯止めのない財政膨張と債務残高の急増を招くことになると危惧する。 日銀が金融緩和を強化して、景気回復を支援する姿勢を強めるなら、そのタイミングで政府に対し、財政規律の維持を再確認するような「合意」が必要ではないか。 「過ぎたるは及ばざるがごとし」とならないよう、「知恵」を駆使することが政府・日銀に求められている。 ○背景となるニュース ・日銀総裁会見詳報5 2年で2%を今後も変えるつもりはない [nKjtVUj] *このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。 http://jp.reuters.com/article/column-boj-idJPKCN10916M?sp=true
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