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[ニュース複眼]かすむ野党 再生への処方箋
参院選で安倍晋三首相に国政選挙4連勝を許し、「安倍1強」体制を強めた野党。政権が遠くかすむ民進党は、万年野党と呼ばれたかつての社会党に似てきたともいわれる。野党再生に何が必要か。旧民主党、霞が関、経済界のOBが説く処方箋とは。
■10年かけて政権交代目指せ 元民主党最高顧問 藤井裕久氏
今回の参院選は、比例代表で民進、共産、生活、社民の4党と「国民怒りの声」をあわせると、自民、公明両党の8割近くの得票だ。怒っている人は相当いる。野党はもっと自信を持つべきだ。
熱狂は必ず崩壊する。僕は今回の選挙を熱狂の最後だとみている。自民党にも安倍晋三首相に批判的なマグマはたまっている。それが政権交代につながる可能性はある。
野党は奇をてらうのではなく、地道に政策提言をすることが大事だ。いい気になっている政権は必ず間違える。少子高齢化が進んで低成長の時代に必要なのは、社会保障と雇用政策で経済の基礎を支え、海外と交流を強めることだ。社会保障を充実するには目的税化した消費税率の引き上げをやらなければいけない。
民主党政権がダメだったのは、野党体質が抜け切れていなかったからだ。党内で議論ばかりしていた。2番目に、役人は敵だとの考えの人がいた。今はそれが失敗だとわかっている。3年3カ月の民主党政権時代に閣僚や党幹部だった人が、これを若手に教えることが重要だ。
民進党は共産党が呼びかける連立政権構想の「国民連合政府」を目指すべきではない。天皇制や自衛隊で相いれないからだ。しかし安倍政権が崩壊するまで、選挙で協力するのは当たり前だ。民進党には共産党に拒否感を持つ人もいるが、それは違う。首相がどれだけ悪いかと、共産党とどれだけ仲良くするかは比例関係にある。
共産党が変われば二大政党に近づくという考えに同意する。共産党は党名変更も乗り越えてほしい。昔のイメージと違い、今は暴力革命をやるような党ではない。民進党も共産党に変わるよう働きかけるべきだし、現に僕はそうしている。
憲法改正は野党第1党も「今の大原則は正しいが、加えるものがある」と掲げたらいい。公明党の「加憲」はうまい言い方だ。国際協調主義を入れる改正は賛成だ。共産党も今は「絶対護憲」だが今後はわからない。
民進党は10年かけて政権交代を目指せばいい。自民党の一党支配でなくなった平成の初めから、民主党政権ができるまで十数年かかっている。今から「政権準備政党」として臨むべきだ。ただそれでも何年もかかる。世論はそう単純には動かない。今の世論はムードで動いている。時間はかかるという認識で基礎を固める作業が大事だ。
1党だけ強いのでは、必ず独裁政治になる。やろうと思えば何でもできるとすれば、暴力革命が起きてしまうことだってあり得る。国民生活が安定しない限り、平和は保てない。
(聞き手は宮坂正太郎)
ふじい・ひろひさ 東大法卒、旧大蔵省へ。参院2期を経て衆院7期。1993年自民党を離党し新生党に参加。細川、羽田両内閣で蔵相、民主党政権で財務相を務めた。84歳。
■官僚組織生かし政策提言磨け 元官房副長官 石原信雄氏
民主主義の健全な発展には、政権担当能力のある野党が常に存在することが大切だ。野党の存在感があまりに小さくなると、一党独裁の危険が生じる。政権に緊張感をもたらす上でも健全な野党の存在は必要だ。
いつの時代も政策で勝負するのが政治の原点だ。今、経済政策「アベノミクス」が具体策で苦しんでいるのだから、今回の参院選で単に「アベノミクス反対」と唱えるのではなく、民進党の対案を示してほしかった。
経済政策では分配重視を訴えるが、その前に分配を可能とする経済強化策がない。野党ボケせず、もっと地に足を着けた政策提言が必要だ。
かつて自民党の長期政権時代は派閥によって政策が異なった。自民党の政策に幅があり、国民の意見を幅広く吸い上げられた。今は派閥が実質的に解消され、批判勢力が自民党内から生まれにくい状況になった。そういう時代に、対案を示すべき野党第1党の責任は重いと自覚すべきだ。
今回の民共共闘で民進党は「政権交代可能な二大政党」という構図から遠のいた。このままでは新しい「55年体制」の始まりという印象を与えかねない。共産党との共闘で失ったものは大きい。目先の選挙戦術を優先し、政策で相いれない共産党と組んだのは不安を与えた。国民の目にどう映ったか検証すべきだ。
経済政策で共産党は大企業への法人税強化を掲げるが、日本企業の国際競争力はどうなるのか。消費税廃止を訴えるが、社会保障を守るには消費税率の一定の引き上げは必要だというのが、少なくとも野田政権の結論だったはずだ。民進党が共産党との共闘を優先し、自分たちの政策をあいまいにするなら危険だ。
野党の政策提言能力は一時に比べ、明らかに低下した。旧民主党政権時に政策決定過程から官僚組織を完全に排除し、霞が関と健全な関係を築けなかった後遺症だろう。
私が官房副長官として仕えた細川内閣は非自民の連立政権だったが、政権の政策実現に当時の官僚組織は全面的に協力したし、政権側も官僚組織をうまく生かした。ところが鳩山政権はいきなり次官会議を廃止して官僚を排除した。旧民主党政権が短期間で行き詰まった原因はこれだ。
民進党が政権交代を目指すなら官僚組織をうまく活用することも国民を安心させる一つの要素だ。当時の失敗を検証し、次のチャンスに備えるべきだ。民進党は自信を失いすぎていないか。
将来、自民党におごりが出たとき、代わり得る政党は民進党だけだ。「将来この国を預かる」という自負は崩してほしくない。
(聞き手は島田学)
いしはら・のぶお 東大法卒。自治(現総務)次官などを経て、1987〜95年に官房副長官。仕えた首相は竹下内閣から村山内閣まで7人。現在は地方自治研究機構会長。89歳。
■耳の痛い話こそ信頼回復に 元伊藤忠商事会長 丹羽宇一郎氏
参院選は争点がぼやけ、選挙になっていなかった。野党は国民に訴えるべき的を射た政策を持っていなかった。
政府・自民党がアベノミクスの継続を主張するなら、民進党は「オカダノミクス」で対抗すべきだった。国民にどちらがいいか訴え、選択肢を示すだけでも意義は大きかったはずだ。
アベノミクスは日銀の金融緩和で国民の痛みを先送りする政策だ。一時的には心地いいかもしれないが、いよいよインフレになったらどうするのか。利上げすれば、今度は国債が暴落しかねない。非常にリスクの高い政策を取っているのに、野党は問題提起ができていない。
野党は財政再建も、もっと主張すべきだ。日本の国家予算のうち、6割近くが社会保障費と国債利払い費で消える。少子高齢化でますますこうした傾向に拍車がかかる。現実と向き合い国民にとって耳の痛い話をしていくことが野党の信頼回復につながるはずだ。
野党は魅力的な政策立案をするためにもっと学者などから意見を聞き、理論的な数字にもとづいた財政、金融など経済政策を提言できるようにする必要がある。「日本経済再生研究所」のような政策集団を立ち上げて一から出直すのがよい。
政権与党には色のついた学者が多くなり、次第に政策論争が起きにくくなる。若手の学者らを掘りおこし、ブレーンとして味方につける努力が必要だ。政権を取ったときに備えて政策を磨いていくことが大事である。
民主党政権は約3年の短命に終わってしまった。実現性の乏しい政策をマニフェスト(政権公約)として掲げ、政権交代だと国民を熱狂させて政権を取った。
しかし、政策が実現不可能とわかると支持率はどんどん下がっていった。抽象的に夢を語るだけではだめだ。地に足の着いた政策提言が大事になる。
財界から見て野党とパイプを築く利点は、残念ながら今の状況では非常に乏しいと言わざるを得ない。野党はもっと人材育成に力を注ぐべきだ。政権与党は責任を問われるので緊張感から自然と人が育ちやすいが、野党には難しい面がある。
たとえば国会議員になりうる人材を発掘して、米国や中国、インド、ドイツなどに留学させるしくみを考えてはどうか。米国と中国では外交で激しくやり合っても若者同士はしっかり交流している。日本の政界も見習う余地がある。
野党の立て直しには10年かかるかもしれない。だが強すぎる権力は必ず腐る。野党は将来を見据え、腰を落ち着けて取り組むべきだ。
(聞き手は羽田野主)
にわ・ういちろう 名大法卒。伊藤忠商事の社長、会長。第1次安倍政権で経済財政諮問会議の民間議員。民主党政権の2010〜12年に中国大使。15年から日中友好協会会長。77歳。
腰据えた再建へ政策論議覚悟を
国政選挙で自民党に4連敗を喫したにもかかわらず、いまの民進党には奇妙な静けさが漂う。大惨敗した3年前よりは議席を増やし、党の退潮に歯止めをかけた。とはいえ、改選議席を大きく割り込み自民党にさらに水をあけられた。この評価が定まらない。
岡田克也代表は共産党などとの野党共闘にカジを切り、一定の効果はあった。では政権選択選挙の衆院選にどう臨むのか。連携するなら、政策の擦り合わせは欠かせない。
野党転落からすでに3年半余り、有権者にはなお旧民主党政権時代の混乱の記憶が残る。信頼を取り戻し、二大政党の一翼たり得る政党になるには、5年、10年先を見据え、腰を据えて再建すべきだ。そのためには憲法改正や安全保障など、党が割れがちな政策論議から逃れられない。その覚悟が問われている。
(永沢毅)
[日経新聞7月14日朝刊P.11]
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