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「安保法制に反対し、9条護持をいう平和主義が日本の生活者をとらえているか:子安宣邦氏」
http://sun.ap.teacup.com/souun/20405.html
2016/7/20 晴耕雨読
https://twitter.com/Nobukuni_Koyasu
「天皇退位」問題で大騒ぎしてはならない。
大騒ぎして21世紀の天皇制を創り出すような愚を我々は犯してはならない。
無関心でいよ。
無関心であることが天皇にとっても、日本人にとってももっともよいことだ。
降って涌いた天皇問題が、われわれがいま徹底して考えるべき深重な問題を隠してしまう。
われわれが直面すべき問題とは、すでに改憲の戦略的・戦術的日程を立てうるような改憲派の勝利をもたらした参院選をめぐる問題である。
与党側3分の2を支えた投票者は改憲のために投じたわけではない。
野党側3分の1を支える投票者が主として護憲のために投じたことと著しい対照をなしている。
私がいいたいことは、安保法制に反対し、9条護持をいう平和主義が日本の生活者をとらえているかということだ。
国益と民族感情をもって「前進」を高唱する安倍に対抗しうる政治性も政治戦略も反改憲をいう以外に野党側にはなかった。
その野党が3分の1を保ち得たのは国民の憲法意識のお蔭である。
だがその憲法意識に頼るだけでは安倍を喜ばすことにしかならないのではないか。
この続きはまた書きます。
その続きを書くと予告しながら、書きあぐねていた。
悲観的な文字を書き連ねる気はなかった。
ともあれ「日本会議」を読むことで続章への糸口をつかむことを考えた。
昨日『日本会議の研究』(菅野完)を読んだ。
これを読んで私は「日本会議」に恐れと驚きをもつとともに、その擬似性をも知った。
「日本会議」を作った男椛島有三が率いる日本青年協議会の機関誌『祖国と青年』(2015年4月号)に連載されている漫画「憲法の時間です!」の一コマに「憲法改正まであと480日」と書かれているという。
菅野はこれは日本青年協議会による「改憲のカウントダウン」だという。
480日後とは2016年7月25日、参議院議員任期満了日である。
実際に7月10日の参院選の結果、改憲勢力は衆参両院の3分の2を占めることになった。
安倍による「改憲のカウントダウン」は現実のものになったのである。
私にとってこれは恐れに似た驚きであった。
驚きとは、「改憲」の実現過程を予測し、その実現に向けて多面的に、有効に動く組織・機関が政権の背後に存在したということである。
「改憲」とは安倍とその背後の「日本会議」の戦略目標である。
だが彼らは「美しい日本」と同義の「憲法」の制定をいうだけで、何をどう改正するのかをいわない。
彼らが作る「美しい日本の憲法を作る国民の会」という組織名がいう通りである。
そしてこれらはすべて「日本会議」とその遂行的中心の思惑通りである。
伊勢の五十鈴川を渡り日々に皇大神宮に詣でる数千の日本人に憲法9条の改正の可否を問えば、その多くは改正に反対と答えるであろう。
その反対と答えたものがこの参院選で反改憲の野党に票を投じただろうか。
恐らく逆だろう。
彼らは「美しい日本」の側に票を投じただろう。
あの参院選の結果もこの延長上に考えることはできる。
われわれが考えねばならないのはこの事態の中にある。
『日本会議の研究』はこの参院選の勝利に向けて組まれた運動の実際を教えてくれる。
この本の帯にはこう書かれている。
「80年代以降の日本で、めげずに、愚直に、地道に、そして極めて民主的な、市民運動の王道を歩んできた「一群の人々」によって日本の民主主義は殺されるだろう」と。
これは衝撃的な言葉である。
もしこれが本当なら、議会主義的に議会を壟断していったナチズムの台頭と同じことが安倍・日本会議によって意図され、実現されていることになる。
だが私がこの書によって読んだのは、「愚直に、地道に、そして極めて民主的な」運動とその帯が称するものの擬似性である。
彼らは「美しい日本」というナショナルな理念的目標を掲げた運動が作り出した大衆をしかその基盤にもっていない。
生活的要求をもった生活者が彼らを必要としているのでは決してない。
このことこそ反改憲・反安倍のわれわれの運動の再建への希望を見出しうる根拠をなすものだろう。
われわれの運動に希望を与えるような平和主義とは、21世紀世界におけるアジアと日本の生活者の安定と自立とにとって不可欠であるような平和主義でなければならない。
それは9条を念仏のように護持して、あたかも幻想の平和を己れに描き続けるような平和主義ではない。
私のいう平和主義とは沖縄の戦いも、反原発の戦いも、反貧困と社会的公正のための戦いも、自由と人権のための戦いも一つになった平和的日本とアジアのための戦いである。
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