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英国の国民投票を愚弄する エセ民主主義国家の危険な風潮
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/184534
2016年6月28日 日刊ゲンダイ 文字お越し
「EU離脱」が決定した瞬間に喜ぶ離脱支持者/(C)AP
この先、世界はどうなるのか。「EU離脱」というイギリス国民の選択に世界中が揺さぶられている。
日本のメディアによると、「離脱」に一票を投じたことを後悔するイギリス国民もいるという。投票したことを後悔する「Bregret」という造語が広がっているそうだ。ツイッターには「どうせ残留すると思って深く考えず離脱に投票した」といった書き込みもあるという。たしかに、これからイギリスは茨の道だろう。貿易は落ち込み、ポンドは下落し、失業者が増え、不況に見舞われるのは間違いない。
だからか、日本のメディアは「感情に流され離脱」「理性超えた国民感情」と、投票結果を一斉に批判し、「国民投票 危険性はないか」と、〈国民投票〉という制度そのものを疑問視する論調も目立つ。
しかし、本当にイギリス国民は大きな間違いを犯したのか。これはこれでイギリス国民の判断だろう。イギリスに詳しい同志社大教授の浜矩子氏は「離脱が自然だった」と評価している。政治評論家の森田実氏が言う。
「日本のメディアは、経済的な損得をモノサシにして、離脱を選んだイギリス国民を『理性より感情』と半ばバカにしていますが、投票結果が正しかったかどうかは、10年先、20年先まで分からないと思う。そもそも、国のあり方を自分たちで決めたい、EUという機関に勝手に決めて欲しくないという不満は、民主主義において健全な感情です。しかも、政治家も国民も、離脱派も残留派も、自分の言葉で語り、議論していた。民意に従い、キャメロン首相は潔く退陣を表明しています。国民投票自体も、政府が用意したものではなく、国民の要求で行われた。権力サイドが呼びかけた“大阪都構想”の住民投票とはまったく違う。日本のメディアは、国民投票をポピュリズムだと批判していますが、結果はどうであれ、これはこれでリッパな民主主義ですよ」
■自分に都合のよい国民の声だけ聞く
日本の大新聞テレビは、欧米各国に「ポピュリズム」が広がっているとシタリ顔で解説し、イギリスの直接民主主義に疑問の声を上げているが、日本はイギリスの国民投票をポピュリズムだなどと批判できる立場なのか。2世議員とエリート官僚によるエセ民主主義に支配されている日本に、民主主義のお手本であるイギリスの国民投票にケチをつける資格があるのか。
そもそも、安倍首相の政治手法はポピュリズムそのものだ。
参院選に勝利するために消費税増税を再延期し、この3年間、社会福祉をガタガタにしたくせに参院選が迫った途端「保育士を増やします」「介護士も増やします」と平然と演説しているのだから調子が良すぎるというものだ。
しかも、毎回、選挙中は「経済」を訴え、選挙後に「特定秘密保護法」や「戦争法案」など、国民が反対する政策をゴリ押ししている。腹のなかで「国民を騙すのは簡単さ」と有権者をバカにしているのは明らかだ。
「安倍首相の特徴は、民主主義を巧妙に使い分けていることです。国政選挙で勝利すると“国民から信を得た”と胸を張るくせに、沖縄県民から辺野古基地建設に“ノー”を突きつけられても相手にしない。ある時は、国民の声を錦の御旗にし、ある時は無視する。本来、為政者は国民のどんな声にも謙虚に耳を傾けなければならないのに、異論には耳を貸さず、都合よく利用することしか考えていない。これは、イギリスの国民投票をポピュリズムだと批判している大新聞テレビにも通じます。もし、イギリス国民の選択が“EU残留”だったら、日本の大手メディアは国民投票を評価していたでしょう。安倍首相にも大手メディアにも、国民の声を尊重するという姿勢が欠けています」(森田実氏=前出)
安倍首相は、土壇場まで衆院を解散する「衆参ダブル選挙」にするかどうか迷っていたと白状している。これこそ国民の声を都合よく利用しようと考えている証拠である。国民に信を問う「総選挙」の時期さえ、自分の都合を最優先している。
無視される国民の声(C)日刊ゲンダイ
生活を苦しくする政権を支持する異常
こうなったら有権者は、絶対に安倍首相に鉄槌を下さないとダメだ。民主主義を都合よく利用している男をいつまでも許していてはいけない。
この男は、また詭弁を弄して国民を騙そうとしている。イギリスの「EU離脱」のニュースを耳にした時、「エッ」と驚いたくせに「準備はすでにしていた」と平気でウソをつき、「だから消費税増税を再延期した」などと、自分の手柄のようにアピールしているのだから信じがたい。本当はアベノミクスが失敗したから増税を延期したのに、どういう神経をしているのか。そのうえ、EU離脱を政治利用して「経済危機だから政治の安定が必要だ」と訴えているのだから、もうメチャクチャである。
もし、7月10日の参院選で安倍自民党を勝たせたら、「日本こそポピュリズムが蔓延している」と世界中からさげすまれるだけだ。
「過去3回の国政選挙、安倍首相は毎回、同じ手法です。争点は経済だと言い張り、とにかく民進党を批判する。国民も同じように3回とも自民党を大勝させています。アベノミクスの果実が全国津々浦々に行き渡り、国民生活が良くなっているのなら、自民党に一票を投じることも理解できます。でも、労働者の実質賃金は3年連続ダウンしている。つまり、庶民の生活は年々苦しくなっているということです。もし、4回目も同じように自民党を勝たせたら、日本の有権者は、本当にどうかしています」(政治評論家・本澤二郎氏)
イギリス国民の中には、経済が悪くなることを覚悟して“EU離脱”を選択した有権者もいたはずだ。EUに勝手に決めて欲しくない、自分たちで決めるという気持ちが強かったに違いない。翻って、日本の有権者にそれほど強い気持ちがあるかどうか。
「もし、自民党を勝たせたら、安倍首相が国民の声を聞かず、暴走することは目に見えています。自民党に一票を投じるということは、安倍首相に白紙委任状を手渡し、自分で決めることを放棄することと同じです。逆に、自民党が敗北すれば、国民の声に耳を傾けざるを得なくなる。国民はよく考えて一票を投じるべきです」(本澤二郎氏=前出)
参院選の投票日まで2週間を切ったが、シラケムードが広がり、史上最低の投票率になる可能性も囁かれている。世論調査では、自民党は圧勝し、「改憲4党」で3分の2の議席を確保しそうな状況だ。イギリス国民のEU離脱という判断に驚いている日本人も多いようだが、生活が悪化しているのに政権を支持する、日本国民の選択こそ異常なのではないか。
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