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「テレビのニュースがつまらなくなったワケ」とは(※イメージ)
久米宏・独占インタビュー「テレビのニュースがつまらなくなったワケ」〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160622-00000193-sasahi-ent
週刊朝日 2016年7月1日号
テレビをつければ、舛添問題ばかり──。最近は「ニュース番組が面白くない!」と思っている人が多いのではないか。それもそのはず、安倍政権に物申していた人らがテレビから次々と消え、活気はイマイチに。久米宏さんの目には、現状はどう映るのか──。『緊急復刊朝日ジャーナル』(6月27日発売)では、久米さんが今のマスコミに対する率直な意見を吐露。その一部を紹介する。
* * *
──今春、岸井成格さん、古舘伊知郎さん、国谷裕子さんがキャスターを辞め、夜のニュース番組が大きく変わりました。
4月に僕のラジオ番組で「テレビのニュース番組を斬る」という特集をやったんです。それで、普段はあまり見ない各局のニュース番組を見比べてみた。気づいたのは、番組の構成、雰囲気、言葉遣い、何から何まで似ているんですよね。昼のワイドショーは特に同じです。
──今のニュース番組の基礎は、久米さんが1985年に始めた「ニュースステーション」にあるのではないですか。
僕は「他の番組と違うことをやろう」としか考えていなかった。極端な話、キャスターが前を向いて話す必要もないんじゃないかとか。そういった工夫をしないと、他局に勝てなかったから。当時も次々にニュース番組が出てきましたが、ライバルが増えれば、他と違う切り口や、話し方を変えないといけない。「どうやって視聴者に伝えるか」を徹底的に考えて、他とは違う、手触り感のある番組を作ることが大切なんです。
それが今は、北朝鮮取材で平壌から中継しても、どの局も同じ場所にリポーターが立ち、同じ内容を伝える。北朝鮮当局から規制があっても、リポーターは平壌の散髪屋に行って、自分の髪を切ってもらうぐらいのことはできるはずです。それでテレビに映って、「これが平壌で流行の髪形です」と話せばいい。それぐらいの工夫をやる人がいないというのが、不思議ですよね。
──最近では、高市早苗総務相が国会で、政治的公平性を欠く放送を繰り返した場合、テレビ局への停波について言及するなど、テレビ報道への圧力が強まっていると言われています。
今はニュースの現場にいないのでわかりませんが、ニュースステーションをやっていたときに、放送局に圧力があったとは聞いたことがありません。唯一、思い出せるのは、番組を始めて1年ぐらい経ったときに、自民党の幹部から「毎晩見てますよ」と連絡が来たことぐらい。その人からすると圧力なんて思ってもないかもしれませんが。
先日、元NHKの池上彰さんとニュース番組の話になりました。池上さんは、今のニュース番組に元気がないのは、テレビ局に「自粛」の空気が広がっているからだと。たしかに、NHKの会長に籾井勝人さんがなって、「政府が右と言うものを左と言うわけにはいかない」と言っていますから、現場は萎縮しているのかもしれない。
ただ、もっと根源的な話をすると、放送局が持つべき「矜持」が失われているのではないかと思うんです。世の中にはいろんな企業があります。収益をあげて、組織を存続させることを目的としていますが、利益以外にも、その企業が存在している理由があるはずです。
たとえば、宗教法人であるお寺は持続することに使命がありますよね。廃寺になってしまえば、お墓を守る人がいなくなりますから。一方で、宗派の教えを守ることも、お寺にとって第一義的に大切なことです。
民放も同じ。企業として持続することと同時に、ニュースを伝える人間は守らなければならない矜持やルールがある。それが忘れられている。
──いまやニュース番組でも台本通り、打ち合わせ通りに進行することが多いと聞きます。
それでは生放送の面白さは出ない。僕は、前日に考えた質問よりも、当日の本番中に思いついた質問を優先していた。その方が面白いからです。前日に考えた質問なんてつまらない。
──選挙特番の「選挙ステーション」などでも、意表をつく質問で政治家を怒らせていました。
橋本龍太郎さんや森喜朗さんは露骨でしたね。僕は政治家が不機嫌になると、うれしいんですよ。他の番組でニコニコしていた人が、僕の番組では苦々しい表情になる。それを引き出すために、いろんな質問を考えるわけです。
人間、同じ質問を同じように答えるのって面白くない。その場で一生懸命考えてはじめて、命のある言葉になる。顔つきも変わる。
安倍さんが生放送の番組で不機嫌になったら、それは勲章ですよ。ニコニコ笑っていたら、ダメ。その報道番組はロクなものではない。宗派を忘れたお寺みたいなものです。
──安倍政権は「テレビにどう映るか」を細かく考えて、情報発信をしていると言われています。
妻の昭恵さんが言うには、安倍さんは映画好きで、映画監督になりたかったと言っているそうですね。僕は、とても映画監督に向いているとは思えないけど(笑)。
ただ、安倍さんは、映像については、そこら辺のテレビマンより関心があるかもしれない。少なくともテレビマンは、安倍さんより映像のプロであってほしい。
──今の日本で期待できるキャスターはいますか。
いませんね。
──では、今後、テレビニュースを面白くしてくれるキャスターは出てこないのでしょうか。
一人出てくれば、すぐに変わりますよ。テレビってそういうものです。
でも、新聞記者がメインキャスターや重要なコメンテーターをやっている限りはダメでしょうね。ニュースの解説には、もちろん知識や教養が大切です。ただ、テレビでは「何を言うか」よりも「どういう言い方をするか」の方が重要な場合がある。そこがテレビの難しいところ。
踏み込んで言うと、どんな例え話が最も視聴者に伝わるのか。テレビは新聞記事に比べて文字量が圧倒的に少ない。そこを考えているキャスターやコメンテーターがどれだけいるのか。筑紫哲也さんは新聞記者出身でしたが、よく考えていましたね。映画も好きで、テレビについても研究をしていました。
──ニュース番組の現状を変えるために、今でも久米さんのニュース番組復帰を期待する声がありますが。
よく聞かれるんですけどね。毎晩ニュース番組をやるのって大変なんですよ(笑)。
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