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誰がNHKに命令し、NHKはなぜ隷従したのかー(植草一秀氏)
http://www.twitlonger.com/show/n_1soq63g
17th Jun 2016 市村 悦延 · @hellotomhanks
NHKは2011年3月12日正午のニュース放送で次のように放送した。
「そして、原子力発電所に関する情報です。
えー、原子力安全保安院などによりますと、福島第一原子力発電所一号機では、
原子炉を冷やす水の高さが下がり、午前11時20分現在で、
核燃料棒を束ねた燃料集合体が水面の上、最大で90センチほど露出する危険な状態になったということです。
このため消火用に貯めていた水など、およそ2万7000リットルを仮設のポンプなどを使って
水の高さをあげるための作業を行っているということです。
この情報を繰り返します」
この原稿を読み上げたあと、約7秒間の沈黙があった。
すると、アナウンサーの横から
「ちょっとね、いまの原稿使っちゃいけないんだって」
という声が入った。
するとアナウンサーは、最初の原稿を繰り返し読み上げるのをやめて、
「改めて原発に関する情報です。
福島県にある福島第一原子力発電所の一号機では、原子炉が入った格納容器の圧力が高まっているため、
東京電力が容器内の空気を外部に放出するベントの作業を始めましたが、
格納容器のすぐ近くにある弁を開く現場の放射線が強いことから、作業をいったん中断し、
今後の対応を検討しています。」
と別の原稿を読み上げたのである。
いまもネット上に、この音声が公開されている。
2011年3月11日とは、東日本大震災が発生し、
東京電力福島第一原子力発電所がステーションブラックアウト=全所停電に陥った日である。
原発が電源を失えば、炉心を冷却することができなくなる。
原子炉内の水が蒸発し、炉心がむき出しの状態になれば、炉心が自己の熱によって溶解する
炉心溶融=メルトダウン
が生じる。
メルトダウンが生じれば、原子炉内の空気圧が高まり、格納容器が爆発する惧れが生じる。
つまり、
原子炉内の水分が蒸発し、炉心がむき出しになること
イコール
炉心溶融=メルトダウン
なのである。
福島第一原発1号機においては、すでに、3月11日の午後7時29分の時点で原子炉内水位が、
燃料棒の最上位を下回ったと見られている。
つまり、3月11日の午後7時29分の時点から燃料棒がむき出しの状態に移行し、
メルトダウンが始まったのである。
そして、午後11時50分に原子炉内の圧力が600キロパスカルに達したことが確認された。
600キロパスカルは通常の原子炉内圧力の6倍にあたり、
原子炉格納容器圧力の限度圧力を超える水準だった。
この数値が確認されて、原子炉の空気圧を引き下げるための外気放出=ベント実施方針が示されたのである。
NHKは6月16日のニュース報道で、福島原発事故について、
第三者委員会が東京電力に報告した内容として以下のことを伝えた。
「当時の清水社長が事故から3日後の3月14日夜、記者会見中だった武藤副社長に対し、
広報の担当者を通じて、炉心溶融と書かれた手書きのメモを渡させ、
官邸からの指示として、「炉心溶融ということばを使わないよう」指示していたことが分かったということです。」
この問題を巡っては、新潟県が技術委員会を作って追及を続けていて、
東京電力のこれまでの説明では、
「正確な定義があるわけではなく、誤解を与えるおそれがあり、使わなかった」などとされていて、
具体的な指示関係が明らかになったのは初めてです。
しかし、清水社長などへのヒアリングで官邸の誰から、
どのような指示や要請を受けたかは解明できなかったとしています。」
一連の報道は、菅直人首相の官邸が、
東京電力に対して「炉心溶融」の言葉を使うなと指示を出したことを示唆するものである。
参院選を目前に控えて、当時の民主党政権を貶めるための報道が展開されているとも見える。
しかし、NHKのこれまでの取材によって、
東京電力内部では、3月11日の夕刻には、電源喪失で原子炉内部の水が蒸発し、
燃料棒がむき出しになる状況が生じること、すなわち炉心溶融=メルトダウンが生じることが
確認されていたことが明らかにされている。
その詳細な証拠は、NHKが制作したドキュメンタリー番組
「原発メルトダウン 危機の88時間」
https://www.youtube.com/watch?v=eLL1H6iv2sQ
で鮮明に示されている。
そして、3月12日の正午のNHKニュースで、アナウンサーが
「燃料棒を束ねた燃料集合体が水面の上、最大で90センチほど露出する危険な状態になった」
といったんは原稿を読み上げ、
「この情報を繰り返します」
と言ったあと、約7秒間の沈黙があり、
横から
「ちょっとね、いまの原稿使っちゃいけないんだって」
という声が入り、「この情報を繰り返します」に反して、別の原稿を読み上げたのである。
NHKは東電の清水社長の指示の元となる官邸からの支持を探る前に、
どこの誰の支持で、「燃料棒むき出し」の原稿について、
「使っちゃいけないんだって」
ということになったのかを明らかにするべきだ。
官邸からの指示だったのか。
これに対して、報道機関として、真実を報道するという責務を感じたのかどうか。
NHKに対して第三者委員会を設置して、この問題の真相を明らかにするべきだ。
NHKが制作した上記の
「原発メルトダウン 危機の88時間」
https://www.youtube.com/watch?v=eLL1H6iv2sQ
には、地震発生当日である3月11日の午後の段階で、
原発が全所停電に陥り、原子炉が電源を失った経緯が詳細に再現されている。
そして、午後5時の段階では、格納容器内の水位の低下が確認され、
2時間後にメルトダウンが開始するとの予測が明かにされている。
「炉心溶融」
という言葉だけが取り沙汰されているが、
「炉心溶融」
と
「メルトダウン」
と
「燃料棒を束ねた燃料集合体が水面の上に露出する状態」
は、すべて同じことを意味している。
表現方法が違うだけで、意味はまったく同じである。
つまり、NHKは3月12日の正午のニュースで、
「メルトダウン」
を一旦報道した。
しかし、それを、アナウンサーの横で指示を出すプロデューサーが、
「ちょっとね、いまの原稿使っちゃいけないんだって」
と発言して、アナウンサーが、同じ原稿を繰り返し読み上げるのを阻止したのである。
問題は、
誰が、この原稿を
「使っちゃいけない」
と指示したのかということである。
問題は二つある。
NHKのトップが報道の現場に対して指令を出したということであるなら、
それよりも上位の部門から指示、命令があったということになる。
考えられるのは首相官邸である。
あるいは、経産相、経産省ということになるだろう。
NHKに対して調査を実施するべきである。
このときの、
「ちょっとね、いまの原稿使っちゃいけないんだって」
という指示、命令が、どのルートから来たものであるのかを明らかにすることだ。
これは、関係者も特定されるから、調べればすぐに分かるはずだ。
NHKが調査しないなら、国会が国政調査権を活用して、事実を明らかにする必要がある。
もう一つの問題は、仮に政府がNHKに対して
「炉心溶融」
「メルトダウン」
「燃料棒が水面の上に露出する状態」
などの事実を報道してはならないとの指示を出したとして、
NHKがそれに従うことを正しいのかどうかという点である。
放送法は、放送番組の編集について、第4条に次の規定を置いている。
第四条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の
放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
この三番目に注目しなければならない。
三 報道は事実をまげないですること。
他方、NHKが、放送内容について、政府の命令に従わなければならないとの定めは置かれていない。
政府からどのような指示があろうと、
このような重大な事実については、
事実を曲げないで報道する責務がNHKにあるはずだ。
しかし、NHKは
炉心溶融=メルトダウン=燃料棒が水面の上に露出する状態
を確認しながら、これを一旦報道しながら、その後、隠蔽したということになる。
NHKは官邸が東電に支持を出したのかどうかを懸命に報道しているが、
その前に、3月11日から12日にかけて、誰がNHKに対して指示、命令を出し、
NHKがなぜ事実を隠蔽したのかについて、事実を明らかにして、
NHKと受信契約を締結している視聴者に説明する責任、および、国会に報告する責任を負っている。
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