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もっぱら1人区を遊説(C)日刊ゲンダイ
「初めて尽くし」が参院選の結果にどう影響するか 永田町の裏を読む
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/183569
2016年6月16日 日刊ゲンダイ
今度の参院選は「初めて尽くし」である。第1に、安倍政権は昨年、一片の閣議決定で憲法の根本精神を覆して、安保法制を強行成立させた。それが違憲であるという世論が大きく広がると、安倍晋三首相は、安保法制に合わせて憲法のほうを変えてしまおうという魂胆で、参院でも与党で3分の2の議席を確保することを目指している。時の政府が公然と憲法を踏みにじるという前代未聞の事態を国民が容認するのかどうかがかかった、初めての国政選挙である。
第2に、それに対して野党は、32の1人区すべてで統一候補を立てるという初めての戦術で対抗しようとしている。今のところ各種の調査で野党の情勢は厳しいが、1人区で10を超えて15〜16の選挙区で勝てるかもしれないということになると、「お、これは安倍のやりたい放題にお灸を据えられるチャンスかも」と考える人が増えて“風”が巻き起こり、複数区や比例にも影響を与える可能性がある。安倍はそれを最も警戒していて、すでに事実上始まった選挙戦の冒頭、もっぱら1人区を遊説して回っている。
第3に、しかしこの統一候補擁立には、野党4党だけでなく「市民」が加わっている。各地の政策協定には昨年の安保デモを担ってきた平和団体や市民団体が当事者として参加し、またシールズ、ママの会、学者の会などが全国的な「市民連合」を結成してその動きを促している。3人区の千葉や北海道では、自民2、民進2、共産1が立候補する中、「安保法制にはっきりと反対する民進や共産の候補を応援して自民党を少なくとも1議席に追い込む」という勝手連的な運動が始まっている。また、北海道衆院補選でも活躍した「でんわ勝手連」の活動もめざましい。このように、市民が投票を働きかけられる側にとどまるのでなく、働きかける側に回って全国的に選挙活動に携わるというのはこの国の政治にとっての「未体験ゾーン」で、それが選挙結果にどれほどのインパクトを与えるのかは誰にも分からない。たぶん安倍は、この要因を甘くみている。
第4に、言うまでもないが、選挙権が18歳に引き下げられて初めての選挙で、総じて保守志向が強いといわれる240万人の若者たちの中に、シールズなどの影響を受けて、自分の頭で考え行動する者がどれだけ現れるのか。これもやってみなければ分からない。面白い選挙になりそうだ。
高野孟 ジャーナリスト
1944年生まれ。「インサイダー」編集長、「ザ・ジャーナル」主幹。02年より早稲田大学客員教授。主な著書に「ジャーナリスティックな地図」(池上彰らと共著)、「沖縄に海兵隊は要らない!」、「いま、なぜ東アジア共同体なのか」(孫崎享らと共著」など。メルマガ「高野孟のザ・ジャーナル」を配信中。
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