日本国債価格の暴落を期待するような反日勢力ばりの意見にはホント辟易する。 三菱UFJが資格返上を検討するのは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)の3月末の国債保有残高が28・3兆円(傘下銀行合算)と突出して高いためだ。みずほFGは15・6兆円(同)、三井住友銀行は9・8兆円にとどまる。 ならば他行が追随するかは懐疑的。 国債入札特別資格を持ったままだと、銀行はすべての入札で発行予定額の4%以上に応札する義務があり、マイナス金利のもとで額面より高い値で国債を買わされる羽目になる。国債の相場がその後下落すれば、大きな損失を受けるリスクがあるので、特別資格が邪魔になった。 が、ちょっと待てよ。あなた方、銀行は何か忘れてはいませんか。 銀行は他の業種にはない特権が首相から認められている。製造業などはぎりぎりまで人件費や原材料などコストを切り詰めても、販売価格がどうにもならず、ときには原価割れを覚悟しなければならない。かたや銀行は、低コストの資金を預金者から集め、より高い金利で融資し、利ざやを確実に稼げる。おまけに日銀の当座預金口座に資金を寝かせたままで、銀行員が椅子に座ったままでも、大半は日銀から0・1%の利子が振り込まれる。バブル崩壊後には、総額で十数兆円の公的資金の注入も受けた。 どれもこれも、「国民経済の健全な発展に資する」(銀行法第1条)という銀行の公共性が、国家によって認められているからだ。 国債は金融市場の要である。金融市場が揺らげば、国全体の経済運営に支障をきたす。銀行が国債を購入して市場安定に貢献する。国民から集めた預金を源泉とする資金を政府に供給して、世の中にカネが回るようにするのは、銀行法の趣旨を引用するまでもない、銀行として当然の社会的義務のはずである。 銀行側にも言い分はあるだろう。国債相場が大きく値崩れすれば、資産が目減りする。資産が預金を下回れば債務超過になり、信用危機が起きる、と。 その可能性はゼロとは言い切れないが、日銀が年間80兆円と、新規発行の2倍以上もの国債を銀行などから買い上げるので、国債はむしろ品不足である。そのせいで国債相場は上がり続けてきた。それでも国債暴落リスクを言い立てるのは現実から遊離した架空、仮定の論法ではないか。 消費税増税の延期によって財政再建が困難になり、国債の信認が揺らぐという、一部メディアの自虐論もある。しかし、増税が内需を萎縮させて、企業の借り入れ意欲を冷やす結果、銀行融資への需要がうせる。税収は減り、財政収支が悪化する恐れがある。 三菱UFJの物言いは何よりも日銀政策を縛る。安倍政権内部からは日銀に国債の購入枠を100兆円に引き上げる追加緩和策を求める声はあっても、「マイナス金利については現状維持でやむなし」との声が聞こえるし、日銀側も政策決定会合の議題にも上げそうにない。 預金金利をマイナスにしにくい中で、マイナス金利幅を広げられると銀行の収益基盤が弱くなる。既存の日銀当座預金の超過準備分は0・1%の利子がもらえるのだが、それを廃止されるだけで銀行界全体では年間約2100億円の収入が吹っ飛ぶ。 第2次安倍政権が発足した平成24年12月を起点に、銀行の国内外融資などの推移を見ると、国内銀行の貸し出しは最近になって増え始めたが、いま一つ力強さに欠ける。中堅・中小企業向け融資は信用保証協会による融資の80%保証など政府の支援策にもかかわらず、前年比で3%台の伸びにとどまっている。20%分の融資リスクにすら銀行は尻込みする。 対照的に、海外での融資には積極的で、アベノミクス開始以降、2015年末までの融資増加額は約60兆円で、国内の40兆円余をしのいだ。日銀が銀行から国債を購入する結果、銀行の国債保有額は減り続けるが、銀行はそこで得た資金の多くを国内ではなく、海外で運用している。 銀行側が収益減やリスク増を理由に日銀政策に反発しても、特権享受に見合うだけの役割を「国民経済」に対し果たしているなら、まだ説得力はあるかもしれない。だが、銀行の日本経済再生に向けた意思と行動は貧弱過ぎる。 三菱東京UFJ銀行の国債入札特別資格返上の意味するところは?
2016年6月8日付け日経新聞朝刊の1面トップに、三菱東京UFJ銀行が国債入札特別資格(プライマリーディーラー)の返上を検討していると大きく報道されています。 これはもちろん日経新聞の記者が独自に取材して獲得したネタではなく、またその後のメディア各社の報道も驚くほどに似通っているため、完全なるリーク記事です。 そこで「誰が」「何のために」リークしたのかを考える必要がありますが、これはもちろん「大手銀行グループ」が「マイナス金利」に反対してリークしたものです。三菱東京UFJ銀行だけが国債保有にかかる将来的損失を懸念しているわけではなさそうです。 ここで国債入札特別資格(プライマリーディーラー、以下「特別資格」)とは2004年に導入された制度で、すべての国債入札に相応な価格で(冷やかしではなく)発行予定額の4%以上を応札すること、基本的に発行額の1%以上を落札すること、国債流通市場に十分な流動性を供給するなどが求められます。 そのかわりに財務省との会合に参加して意見交換ができる(時にはインサイダー情報もある)、買い入れ消却入札への参加、流動性供給入札への参加などが認められます。ただ国債入札自体は特別資格がなくても誰でも(個人でも)参加できます。 現在の特別資格は22社が有し(当初は25社だった)、うち19社が内外の証券会社で銀行は3大メガバンクの三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行だけです。 基本的には特別資格とは国債市場(あるいは債券市場)における情報面で優位となるため、あるいは特別資格を有すること自体がステイタスと考えられなくもないため、主に対顧客ビジネスを行う証券会社には「ある程度」必要な資格であるはずです。 ここで特別資格を返上するといっているのは三菱UFJフィナンシャル・グループではなく三菱東京UFJ銀行で、三菱グループでは三菱UFJモルガン・スタンレー証券とモルガン・スタンレーMUFG証券も特別資格を有しており、この2社は返上しないようです。 つまり三菱東京UFJ銀行が特別資格を返上するといっても、もともとグループ内に3つも特別資格があり、それぞれがすべての国債入札において応札で4%、落札で1%の最低基準をクリアしなければならずグループ全体でみれば「無駄な負担」であり、1つくらいは減らしたいと考えていたはずです。 三井住友フィナンシャルグループは三井住友銀行とSMBC日興証券、みずほフィナンシャルグループはみずほ銀行とみずほ証券とグループで2つずつなので、横並びになるだけです。 つまり返上自体はそれだけのことで実質的な意味はほとんどありません。ここで重要なことは三菱UFJフィナンシャル・グループが大手銀行グループを代表して、そのアナウンスメント効果を狙っていることです。 そのアナウンスメント効果とは、どの報道でも解説されているようにマイナス金利導入で10年の国債利回り・入札利回りまでマイナスになってしまったため、将来の損失を回避するために大手銀行の「国債離れ」が加速すると、世間および日銀を含む金融当局にアピールするためです。 そしてここまで日銀を含む金融当局に決して逆らうことがなかった大手銀行が、マイナス金利導入に「遠巻きでささやかな抵抗」を示していることになります。 3年目に入った「異次元」量的緩和に対しては、そうはいっても保有国債の含み益を拡大するため表だって批判することはありませんでしたが、その量的緩和にマイナス金利が加わった瞬間に長短すべての金利体系が想定をこえて大きく低下してしまったため「これは大変だ」となったわけです。 また2016年2月にはマイナス金利導入を受けて、大手銀行を含む金融界が広くベースアップを見送っていまいましたが、今回はそれに続く「遠巻きでささやかな抵抗」となります。 つまり本日の三菱東京UFJ銀行の国債入札特別資格返上とは、大手銀行がこういう「遠まきでささやかな抵抗」だけではなく、「異次元」量的緩和にマイナス金利が加わった日本経済にダメージしか与えない金融政策<大手銀行グループがそう考えているだけのこと、実際にそうなのかは今後の推移を見守る必要がある>に、どこまで本気で抵抗できるのかのスタートラインになると考えます。 大手銀行も自らの収益を気にしているだけです。 2016.6.11 00:46 国債特別資格の返上に言及 三菱UFJ銀の小山田頭取「速やかに判断」 落札業務の履行難しく http://www.sankei.com/economy/news/160611/ecn1606110003-n1.html
三菱東京UFJ銀行の小山田隆頭取は10日、大阪銀行協会会長の就任会見で、国債入札で優遇措置を受けられる特別資格の返上について、「さまざまな観点から検討している」と表明した。同行トップが資格返上の検討を公式に言及したのは初めて。返上の是非や時期は「速やかに判断したい」と述べるにとどめた。 特別資格は「国債市場特別参加者」と呼ばれ、財務省が3メガバンクと大手証券19社に与えている。財務省と意見交換できる利点がある一方、すべての入札で4%以上の応札を義務づけられている。 日銀が2月中旬に導入した「マイナス金利政策」で市場金利は大幅に低下し、10日には10年債利回りが過去最低を更新。小山田氏は「(貸出金利から預金金利を差し引いた)利ざやが圧縮され、国債の落札業務をすべて履行するのは難しい」と説明した。 三菱UFJが資格返上を検討するのは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)の3月末の国債保有残高が28・3兆円(傘下銀行合算)と突出して高いためだ。みずほFGは15・6兆円(同)、三井住友銀行は9・8兆円にとどまる。 日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は追加の金融緩和を示唆し、さらなる市場金利の低下が想定されているが、小山田氏は「副作用も総合的に勘案する必要がある」と牽(けん)制(せい)。市場の一部で噂されている日銀が銀行への貸し出しにマイナス金利を適用する案についても「ハードルの高い話」と疑問視した。 生命保険協会の筒井義信会長(日本生命保険社長)も同日の記者会見で、望ましい金融政策について「さらなるマイナス金利幅の拡大や国債買い入れの増額よりも、上場投資信託(ETF)の買い入れ額を増やしてほしい」と求めた。 2016.6.10 17:59 「国債落札、全て履行は難しい」と三菱UFJ銀頭取 特別資格の返上検討で http://www.sankei.com/economy/news/160610/ecn1606100025-n1.html 大阪銀行協会の会長に就任した三菱東京UFJ銀行の小山田隆頭取は10日、大阪市内で記者会見し、同行が国債の入札に参加する際の特別な資格を国に返上する方向で調整していることに関し、日銀のマイナス金利政策による金利低下で「落札業務を全て履行するのは難しい環境になっている」と述べ、検討している事実を認めた。 小山田頭取は「問題意識を持ちながらさまざまな観点から検討している」と説明。一方で、引き続き、国債の安定消化などを通じ「国債市場の発展に貢献していくことは不変だ」と強調した。 マイナス金利政策に関しては、需要を喚起する効果は不動産など一部業種に限られ「広範囲に広がっていない」と指摘。貸出金利の低下による銀行業績への負の影響が「本年度本格的に出てくる」として、収益力強化へ証券や信託などグループ会社との連携を深める考えを示した。 2016.6.8 21:58 三菱UFJ銀 国債入札「特別資格」返上へ、日銀に反旗! マイナス金利引き金に http://www.sankei.com/economy/news/160608/ecn1606080042-n1.html 国内最大手の三菱東京UFJ銀行が、国債入札に有利な条件で参加できる特別資格を国に返上する方向で検討していることが8日、分かった。日銀の「マイナス金利政策」の影響で国債利回りが歴史的低水準に陥る中、保有を続ければ損失が出かねないと判断した。 特別資格は「国債市場特別参加者」と呼ばれ、同資格を保有する金融機関は、国債の入札について財務省と意見交換できる一方、すべての入札で発行予定額の4%以上の応札が義務づけられている。 三菱UFJが特別資格の返上を検討しているのは、長期金利の指標である10年債利回りまでマイナス圏に沈み、マイナス金利で落札した国債を満期まで保有すると損失が発生するからだ。 また、いったん金利が急騰(価格は急落)すれば多額の含み損を抱えてしまうため、今後は国債の大量購入を控える方針とみられる。資格返上が実現すれば、国内金融機関では初となる。 今回の三菱UFJの動きについて、複数の専門家は「これまで大量の国債を日銀に売って大規模金融緩和に協力したにもかかわらず、マイナス金利を予告なく導入した日銀への『反旗』」と分析する。 国、銀行、日銀で国債消化を支え合う構図がマイナス金利で崩れてしまった格好だ。他の大手行も国債の残高を積み増す利点は少なく、「将来の選択肢として資格返上はあり得る」(幹部)と打ち明ける。 8日の債券市場では国債が小幅に売られた。三菱UFJの動きで、日銀の金融政策や国債発行への悪影響が懸念されたためだ。 証券系エコノミストは「大手行は金融・財政当局と距離を置き始めている。日銀がマイナス金利を深掘りしても反発し、企業への貸し出しを増やさないだろう」と指摘する。さらに、政府は来春に予定していた消費税増税を2年半先送りすると決めたばかりだ。国債の安定消化に疑念が生じれば、財政への信認が揺らぐリスクも出てくる。 ■国債市場特別参加者 国債の安定消化のため、財務省が平成16年に導入した資格で、プライマリー・ディーラーとも呼ばれる。3メガバンクを含む銀行や大手証券など22社に与えている。同資格がなくても国債入札には参加できる。
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