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安倍政治はこうしてメディアを支配した? テレビ局が政権の「ご機嫌取り」に徹するワケ
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48847
2016年06月11日(土) 日本一の書評 週刊現代 :現代ビジネス
■永田町を向くテレビ局
明治期の資料を調べていると、興味深い記事に出会った。
明治9年6月、浅草観音堂に新聞各社が集まって「供養祭」が開かれた。何を供養するかといえば「新聞」だという。政府の言論弾圧によって死した新聞を供養するという、いわば政府に抗う試みで、弔辞は翌日の朝刊に掲載された。
そのくらいのことをするのだから、もちろん新聞は死んでいない。この後に難癖をつけられて投獄された記者たちは、釈放後、獄中体験記を連載にまでしている。権力がメディアを操作しようとするのはいつの世も同じだが、当時の新聞人たちには気骨があった。
新聞の始まりは木製の瓦版だ。今も昔も「知りたい・伝えたい」という欲求によって成り立つ商売である。テレビにネットと情報伝達のツールは発達してきたが、伝え手の仕事ぶりはどうか。
砂川浩慶著『安倍官邸とテレビ』は、官邸にコントロールされっぱなしの主要メディアの凋落を余すところなく解説している。
本書によると、最近は政権がメディアを選別して取材に応じ、選ばれたメディアは独占取材と大々的にアピール。政権に批判的な新聞社やテレビ局は徹底して干されている。
しかも、この問題を記事に取り上げた全国紙は皆無で、発信しているのは地方のブロック紙ばかりとか。永田町からの距離が、報道の自由度に比例しているのか。
■結局は政権の思うツボ
さらに本書には各局のニュース番組を検証したデータが掲載されている。特にNHKで、安保関連法など政権にマイナスとなるニュースを極力伝えない傾向が顕著という結果が出た。記者解説が政府広報になっているという批判も多い。
その内幕は、週刊金曜日編『安倍政治と言論統制』に詳しい。本書はテレビ現場で働く職員が匿名で内情を告発している。
それによると、「政府が右と言うことを左とは言えない」と言ってのけた籾井会長が直接に指示を下しているわけではない。
その意向を忖度した幹部職員が、原発や安全保障、歴史問題については事細かに現場に指示を出し、出演者を差し替えたりもする。中間管理職の多くは上層部の意向を気にして穏便に済ませ、忖度→萎縮という図式があるという。
本書に実名で寄稿した外国人ジャーナリストは、こう総括している。
〈結局のところ、安倍政権よりも問題なのは主流メディアである。主流メディアの見下げ果てた弱腰と、民主主義の原理を守るという義務の欠如が、安倍首相とその派閥の手による「抑圧」を招いたのだ〉。
この春、「クローズアップ現代」「報道ステーション」「ニュース23」と、硬派な報道番組で政権に物申してきたキャスターたちが全て降板した。それぞれ事情はあるのだろうが、結局のところ、政権の思うツボ。冒頭で新聞供養の話を書いたが、今はテレビ供養が必要なのか。テレビ報道に、本当に死んでもらっては困るのだが。
こんな危うい状況の中で、7月には参議院選挙が行われる。大手メディアの報道の在り様も気になるが、今回から選挙権年齢が18歳以上となることに注目したい。
若い人たちの投票の参考に、藤田孝典著『貧困世代』をお勧めする。著者はかつて『下流老人』でベストセラーを放ったが、今回はそれ以上に深刻な内容を含んでいる。タイトルの貧困世代とは、若者なのだ。
■若者にとって結婚は「贅沢」
本書によると主要先進国において、若者(15〜34歳)の死因のトップが自殺というのは日本だけ。それも死因の2割という数字は突出している。日本は、どうやら若者にとっては生きにくい国らしい。
この20年、若者(20〜24歳)の貧困率は10%も上昇、もはや一時的な現象ではなく悪化しながら常態化している。家庭の貧困が進学を阻み、格差は固定化され再生産されていく。「若いうちは苦労しろ」などという説教は昔の話。若者の多くは、「自分の力では身動きの取れない社会の監獄に閉じ込められている」と著者は言う。
必要な支援策のひとつとして、特に住宅問題への手当てが急務という。首都圏・関西圏の年収200万円未満の若者を調べると、実に77.4%が実家から出られない状況にあった。つまり自立できていない。大半は非正規雇用で、企業の福利厚生から除外された身だ。頼みの綱の親に何かあれば、即ホームレスになりかねない。現実に、4人に1人が広義のホームレス状態を経験したことがあると答えている。
海外では、若者向けの公的住宅整備が進むほど世帯形成率が高くなり、家賃補助が出生率を上げるというデータもあるそうだ。なのに日本の福祉政策は、依然として高齢者しか見ていない。「出生率を上げろ」と発破をかけられても、若者たちからすれば「結婚・出産なんてぜいたく」なのだ。
若者の抱える問題はいずれ社会基盤を揺るがすことになる。この夏、自分の一票をどこへ投じるか。期待できる先もなく、絶望的な気分は隠せない。それでもやはり、投票にだけは行かねばならない。ここで諦めたら、本当に後戻りできない所にまで追いやられてしまいそうだ。
ほりかわ・けいこ/'69年、広島県生まれ。ジャーナリスト。『教誨師』で城山三郎賞。『原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年』(文藝春秋)で大宅壮一ノンフィクション賞。月刊誌「本」(講談社)に『戦禍に生きた俳優たち』を連載中
※この欄は中島丈博、堀川惠子、熊谷達也、生島淳の4氏によるリレー連載です
『週刊現代』2016年6月18日号より
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