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斡旋利得処罰法違反罪で告発されていた甘利明と元秘書2名を東京地検特捜部は不起訴にしたという。都市再生機構(UR)に対する甘利側の働きかけは、一般の政治活動の範囲内にとどまり、「国会議員」としての「権限に基づく影響力の行使」があったことを立証する必要があるため、違法性を問うのは困難だとマスコミは「解説」している。
問題の遣り取りは2013年から14年にかけて行われているが、この当時、甘利は単なる国会議員でなく、内閣府特命担当大臣(経済財政政策)。経済再生担当、社会保障・税一体改革、そしてTPP担当の国務大臣でもあった。「国会議員」を強調するのは人びとをミスリードしたいからだろう。
検察が不起訴を発表する前、元長崎地検次席検事の郷原信郎は「絵に描いたような斡旋利得」と表現していた。報道が正しいとするなら、甘利の秘書は「お願い」というレベルをはるかに超えて補償金額にまで介入、その報酬として金銭や接待を受けていた。しかも甘利本人は現職閣僚。当然、与党内でも大きな発言力を持ち、「権限に基づく影響力」を発揮することが十分に可能な立場だったと指摘している。
郷原は甘利たちを起訴できるかどうかは「特捜部長、地検幹部がどこまで腹をくくれるのか」だとしているが、腹はくくれなかった。次期首相が確実視されていた小沢一郎に対する姿勢とは全く違う。
小沢が起訴されたのは、2004年に購入した土地代金の支出を翌年の政治資金収支報告書に記載、土地購入に際して小沢が4億円を立て替えたことを報告書に記載せず、小沢の他の政治団体との間で行った資金の融通を報告書に記載しなかったという疑い。言いがかりのような理由で強引に起訴へ持ち込んでいる。
当初、検察は「水谷建設からの闇献金1億円」で小沢を起訴しようと考えていたという。闇献金の話は、水谷建設の川村尚元社長が「六本木のホテルで石川秘書(当時)に5000万円入りの紙袋を渡した」と供述したことから出たストーリーなのだが、水谷建設の運転士が記録していた運転日誌には該当する記載がなく、「社長をそのホテルに送ったのはい翌年以降」だと運転手は証言している。そのほかにも証拠が全くない。同社では裏金を渡す際、必ず受け渡しを目撃する「見届け人」を同席させるルールがあったが、川村はそのルールにも従っていない。
その後、2010年1月に東京地検特捜部は石川知裕衆議院議員や小沢の秘書ふたりを政治資金規正法違反容疑で逮捕、11年1月には小沢が強制起訴されている。いずれも「市民団体」の告発に基づくのだが、起訴へ導いたのは検察だ。裁判の中で、検察が「事実に反する内容の捜査報告書を作成」するなど不適切な取り調べがあったことが判明、この告発は事実上の冤罪だということが明確になっている。
小沢攻撃が続いていた2009年、漆間巌官房副長官(当時)が「今回の疑惑追及が与党に波及することはない」と記者に語り、問題になった。漆間は警備公安畑(特高の人脈)を歩き、警察庁長官も経験した。長官時代(2004年から07年)には安倍晋三と頻繁に会っていたという。ジャーナリストの青木理によると、漆間長官時代の警察は事実に基づかない、あるいは事実を誇張したり歪曲した捜査が横行していた。甘利問題は漆間発言を思い起こさせる。
甘利と小沢に対する地検特捜部の動きを見れば、官僚が従っているのは日本の内閣でないことがわかる。日本をアメリカの巨大資本が支配する仕組み、TPPを成立させるために甘利が活動していたことは象徴的だ。
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