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「元米兵逮捕 沖縄の怒りにどう応える」
2016年05月23日 (月)
「元米兵逮捕 沖縄の怒りにどう応える」(時論公論)
西川 龍一 解説委員
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/245493.html
また、沖縄でアメリカ軍関係者による許しがたい犯罪が起きました。アメリカ海兵隊の元隊員の男が20歳の女性の遺体を遺棄したとして逮捕されました。沖縄のアメリカ軍基地の前では、連日抗議活動が行われ、これまで基地問題には関心がなかったという人が怒りの声を上げ始めています。沖縄の怒りにどう応えるのかについて考えます。
事件を受けて沖縄県の翁長知事は、23日、総理大臣官邸で安倍総理大臣と会い、日米地位協定の抜本的な見直しとともに、今週伊勢志摩サミットに出席するため来日するアメリカのオバマ大統領との面会を要請しました。
事件の概要です。アメリカ海兵隊の元隊員で、沖縄のアメリカ軍嘉手納基地で働く軍属のシンザト・ケネフ・フランクリン容疑者が、20歳の会社員の女性の遺体を恩納村にある雑木林に遺棄したとして逮捕されました。警察によりますと、シンザト容疑者は「女性の首を絞め、ナイフで刺した」などと供述しています。死亡した女性とシンザト容疑者は、面識がなかったと言います。女性は、午後8時ごろからウォーキングをしていた時に事件に巻き込まれたと見られています。
沖縄の女性からは、「私たちは普通にウォーキングもできないのか」という声が聞かれました。戦後70年を過ぎてもなくならないアメリカ軍関係者による凶悪犯罪に対する気持ちが如実に表れた言葉です。1995年に起きた海兵隊員による少女暴行事件では、抗議のため8万5千人が参加した「県民大会」が開かれ、その後の普天間基地の閉鎖を求める大規模な動きにつながりました。それから20年、沖縄は何も変わっていないという憤りがあります。
事件を受けて、沖縄のアメリカ軍基地前を中心に、抗議の声が広がっています。今月20日、男が働く極東最大の空軍基地と言われる嘉手納基地の前には、朝から150人が抗議の意志を示そうと集まりました。22日には、沖縄のアメリカ軍全体の司令部が置かれているキャンプ瑞慶覧前で、女性を中心とした36の団体が追悼の抗議集会を開き、1200人が参加しました。さらに今月25日には、県議会与党会派や市民団体などでつくる「オール沖縄会議」が、嘉手納基地前で3000人規模の抗議集会を開くことを決めています。沖縄の怒りの声は高まり続けているのです。
翁長知事は、今回の事件が起きたあと、「基地があるがゆえに起きた事件」と述べました。
その言葉の通り、沖縄が本土復帰して以降もアメリカ軍関係者による凶悪犯罪は一向になくならないという実態があります。1972年、本土復帰を果たして以降、去年までに、アメリカ軍関係者による刑法犯罪は5896件。このうちおよそ10%が殺人や女性への乱暴などの凶悪犯罪です。
アメリカ軍基地のために、県民の安全安心が脅かされている。その気持ちを理解するには、いかに沖縄にアメリカ軍基地が集中しているかを知る必要があります。沖縄の基地の現状です。沖縄本島だけでもこれだけのアメリカ軍施設があります。沖縄県の面積は、日本の国土面積のわずか0.6%。そこに日本に駐留するアメリカ軍専用施設の74%近くが集中しているのです。
安倍内閣は、日米両政府が合意した嘉手納基地より南にあるアメリカ軍基地の整理縮小計画を確実に実行することで、沖縄の負担軽減を進めていると言います。去年3月には、キャンプ瑞慶覧の西普天間住宅地区が返還されています。しかし、すべての計画が実現しても沖縄のアメリカ軍施設の割合が下がるのは、わずか0.7ポイントにとどまります。
普天間基地の辺野古移設に象徴されるように、県内移設を前提とするものが大半を占めるからです。それでは、「基地があるがゆえに起きた事件」がなくなることにはつながらないように思います。
今回の事件を受けて、安倍内閣の閣僚も多くが遺憾の意を表明し、ケネディー駐日大使や在日アメリカ軍関係者に抗議しました。また、安倍総理大臣は、今週行われるオバマ大統領との日米首脳会談で、この問題について厳正な対処を求めるとしています。抗議は当然のこととして、日本側がアメリカ側に求めるべきことがあります。
1つは、アメリカ側に心からの謝罪と再発防止策の徹底を求めることです。ただ求めるだけでは、これまでも事件があるごとに謝罪や再発防止という言葉を何度も聞かされてきた沖縄側は納得できません。今回の事件で男が逮捕された3日後には、アメリカ海軍の3等兵曹が酒気帯び運転の疑いで逮捕されるという事件がありました。アメリカ軍は、綱紀粛正などどこ吹く風という意識ではないのか。沖縄の疑念に応えるためには、政治的・構造的な問題として日米両政府間の正式な協議の場を設け、実効性のある解決策を話し合うことまで求めることが必要です。
さらに翁長知事が安倍総理大臣に求めた日米地位協定の抜本的な見直しです。日米地位協定は、安保条約に基づいて、在日アメリカ軍の法的な地位を決めているものです。公務中のアメリカ兵などが罪を問われた場合、アメリカ側に優先的な裁判権があることや、アメリカ軍基地内では、アメリカの法律が適用されることなどが定められています。このことが沖縄はもとより、日本国内での犯罪などに対するアメリカ軍人の特権意識を生んでいるという根強い意見があります。今回男は、公務中ではなかったため、日本の警察が身柄を拘束することができました。翁長知事は、「日米地位協定の元では、日本のアメリカからの独立は神話だ」と述べ、見直しを強く求めました。地位協定をめぐっては、公務中でも起訴前の身柄の引き渡しが可能になるなど、一部運用の見直しが行われていますが、協定そのものの見直しには、日本政府部内にも慎重論があります。アメリカ側が受け入れるはずはないという考えや、日米関係が悪化するという懸念があるからです。しかし、話し合いを求める前からあきらめるような態度では、沖縄の怒りは収まらないのではないでしょうか。
今回の事件は、オバマ大統領訪日の直前に発覚しました。現職のアメリカ大統領として初めて広島を訪れるなど、日米の友好関係を強調する絶好の機会と捉えてきた政府・与党側からは、最悪のタイミングとの声があるとの報道があります。そのことが、沖縄の人たちをいかに傷つけているか。尊い命を奪われた被害者とその家族にとっては、いつ起きたとしても許しがたい事件であることに変わりはありません。沖縄では、少女暴行事件の時と同じように「県民大会」を開くことが決まりました。数万人規模の県民が集まって抗議の意志を示す沖縄独特の市民運動と言われる県民大会が開かれることの重みを理解できなければ、沖縄の怒りに応えることはできないと思います。
(西川 龍一 解説委員)
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