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オバマ氏に答えてほしい 原爆投下は必要だったか
http://mainichibooks.com/sundaymainichi/column/2016/05/29/post-868.html
サンデー毎日 2016年5月29日号
倉重篤郎のサンデー時評 連載97
日米関係が重要な年を迎えている。オバマ大統領の広島訪問が決まったこと、トランプ大統領候補の影響で在日米軍駐留体制の見直しが焦点化していることである。
この二つの問題は、一見別々ではあるが、日本の戦後体制の根幹にあるもの、すなわち日米安保体制の過去、現在、未来を考えるうえで、極めて重要な部分を占めている。つまり、広島、長崎への原爆投下は、いまだに日本人の奥深い心の傷(トラウマ)として、従米構造を支える対米畏怖(いふ)の精神的土壌を形成しており、トランプ発言は、この体制に日米いずれがより裨益(ひえき)しているか、という同盟の本質に触ろうとしているからだ。この稿では前者について考える。
オバマ氏は熟考の末、米現職大統領として初の決断をした。
核廃絶を唱えるプラハ演説でノーベル平和賞を受賞した者として、任期8年の最後のレガシー(遺産)を飾るには、その選択肢しかなかったはずだが、最後まで米国内世論動向を慎重に見極めた。
さもあらん。大統領が暗殺されるお国柄(1865年16代リンカーン、81年20代ガーフィールド、1901年25代マッキンリー、63年35代ケネディ)である。アイゼンハワーが大統領退任演説(61年)で警告を発したように世界最強の軍産複合体国家でもある。軍のベテラン(OB)たちが確固たる社会的地位を占め、軍への批判に対しては厳しく目を光らせているからである。
オバマ氏でなくては、できなかったことではないか。黒人初の大統領として、すでに一回米社会のガラスの天井をぶち破っていたこと、イラン核交渉、キューバ国交回復といった外交得点をあげ政権基盤がなお強固なことがその決断の背景にあるように思える。
その意味では、歓迎すべきことであろう。オバマ氏の歴史的役回り、その胆力に敬意を表したい。
もちろん、オバマ氏にもある種の打算があるに違いない。大統領職を引いた後も世界のオバマとして活動を続けるうえで、核廃絶は格好のテーマだからである。広島訪問はその重要な通過儀礼になる。被爆団体からは単なる儀式に留(とど)めることなく、核廃絶の行動に結び付けてほしい、との声も出ている。人類として核の未来を考えるうえで大切な一コマにもなろう。
◇原爆をめぐる日米間の歴史認識の落差解消を
ただ、過去にもしっかり目を向けるべきである。オバマ氏側は原爆投下に対する謝罪はしない、とあらかじめ煙幕を張っている。ただ、オバマ氏がプラハ演説でも「核兵器を使ったことのある唯一の核保有国」としての道義的責任を強調している以上、唯一の被爆国である日本に対していくつかの質問に誠実に答える義務がある。
私が聞きたいのは単純だ。原爆投下は本当に必要だったのか。
『原爆投下決断の内幕』(ほるぷ出版)という大部な検証本がある。米人学者ガー・アルペロビッツ氏が、原爆投下時の米の政策決定者とその周辺にいた政府、軍関係者の膨大な証言、書簡、記録を渉猟し、95年に出版した。
それは、原爆投下正当論、つまり、多くの米国人が依然として信じる「原爆投下は、日本侵攻によって失われたであろう非常に多くの命を救った」との説を完膚なきまでに否定する驚くべき書物だ。
その証拠として、氏はいくつもの証言を並べる。曰(いわ)く。「広島、長崎に対する残忍な兵器使用は対日戦で何ら重要な助けにもならなかった。日本はすでに打ちのめされており降伏寸前だった。あれを最初に使うことで我々は暗黒時代の野蛮人並みの倫理基準を選んだことになると感じた」(レイヒ海軍大将)、「原爆投下は全く不必要との認識だった」(アイゼンハワー陸軍大将=後に大統領)
にもかかわらず、なぜトルーマン政権は原爆投下を選択したのか。それは、当時のバーンズ国務長官が言及したとされる「原爆を保有、その威力を示すことで欧州におけるソ連を御しやすくする」という対ソ戦略であった。つまり原爆投下は、当時すでに米国への一大対抗勢力と化しつつあったスターリンのソ連をにらみ、戦争終結や戦後を想定した対ソ抑止策という外交目的として使われたものであって、日本を壊滅させるという軍事目的が優先されたわけではなかった、というのである。
しかも、トルーマン政権は原爆投下という既成事実を得るため、意図的に戦争終結を遅らせた疑いがある。日本を降伏させるにあたり、日本側が受諾しやすい条件提示、すなわち天皇の形を変えた存続(立憲君主的天皇)の許可を意識的に先送りしていた、というのである。そして、一連の戦略遂行を主導したのがバーンズ氏ではないか、との推論を展開している。
ガー氏は、連邦議会スタッフ、国務省特別補佐官、ブルッキングス研究所研究員を歴任した人物。21年前の本ではあるが、資料的価値は高い、と思われる。昨年は雑誌『ネーション』に「第二次大戦を戦った軍トップにとって、原爆投下は日本を降伏させるためには不必要であり、膨大な数の市民を壊滅させたことは道徳に反する行為だった」と寄稿している。ニューヨークタイムズ電子版(5月11日付)で、「オバマ訪問は広島の亡霊をよみがえらせている」と書いたデビッド・サンガー記者もこれを引用している。
ある意味、米国内での一部世論を形成し始めている、と言っていい。オバマ氏には、来日の際の記者会見で、ぜひこの疑問に誠実に答えてもらいたい。実は、この日米間の歴史認識の落差解消こそ、中韓との間のものに匹敵する、あるいはそれ以上両国の未来にとって重要なものと思うからだ。戦後70年という時間軸は、そのくらいの仕事をする熟度を持っている。
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