日本オリンピック委員会と政府は、東京オリンピック招致委員会が「ブラック・タイディング」口座に2億円以上の支払い送金を行った事実を認めたが、それを受けての日本における議論は不思議に的外れだ。東京オリンピック招致委員会が送金した「ブラック・タイディング」口座は、とんでもない口座だ。これが実体のない怪しいコンサルタントの口座であれば、そんないい加減なコンサルタントを使って「無駄遣い」したのは怪しからんという議論になるが、この「ブラック・タイディング」口座は以下に述べるように、大変に強力で実効性のあるエージェントの口座だ。だから東京はオリンピック招致に成功している。 5月12日付で"The Gurardian"が暴露した「ブラック・タイディング」口座に関する事実関係がちゃんと日本国内に伝えられていないから「そんな怪しいコンサルタントに金を払ったのは無駄遣いだ」という不思議な議論になっているのだと思う。英国の一流クオリティペイパーが報じた情報が正確に流通しないなんて、まさに日本が、マスゴミの怠慢(ないしは意図的な情報遮断)のために、21世紀の今日においても情報鎖国状態にあるということだ。 5月12日付"The Gurardian”記事にしたがって、なぜこの「ブラック・タイディング」口座に東京オリンピック招致委員会が大金を送金したことが、ほぼ日本がオリンピックを金で買ったことの確証となるのかを書きたい。 まず、最終的に東京オリンピック招致委員会の金が渡ったとされるラミーヌ・ディアック(1999年から2013年までのIOC委員、2014年以降は名誉委員)は、1999年から国際陸連(IAAF)会長の地位にあったものの昨年11月辞任した。それは、彼が100万ユーロの賄賂を受け取って、陽性反応が出たロシア陸上選手のドーピングテスト陽性結果をもみ消そうとしたとの嫌疑を受けたからだ。このため彼は現在フランス捜査当局からフランス出国禁止処分を受けている。 その息子がパパ・マッサタ・ディアックで、この息子は親父の威光で国際陸連(IAAF)にコンサルタントとして雇用されていた。この息子ももちろんこのドーピングテスト結果もみ消しに関与しており、インターポールから逮捕状が出ているが、現在母国セネガルに逃げている。 国際陸連(IAAF)は、日本の広告代理店「電通」に対して包括的スポンサー契約を与えており、その契約はラミーヌ・ディアック(父)の会長在任最後の数ヶ月間に国際陸連側から2029年まで延長されているが、パパ・マッサタ・ディアック(息子)は、その電通との包括パートナー契約においてスポンサーシップ開発の自由裁量権を与えられている。それで、パパ・マッサタ・ディアック(息子)は、カタールの2017年の世界陸上選手権大会招致と2020年のオリンピック招致に際して、同国に500万ドル(350万ユーロ)の支払いを要求した疑いがある(ガーディアンが既報)。さらに、パパ・マッサタ・ディアック(息子)は、2008年カタールの2016年オリンピック招致に際して、国際オリンピック委員会の有力6委員に「小包」が配られた事件にも関与していたものと思われる(今年1月ガーディアン紙が暴露)。 問題の「ブラック・タイディング」(”Black Tidings”)秘密口座は、前述のドラッグテスト陽性隠蔽工作が失敗したため、2014年3月にロシアのマラソン走者リリア・ショブコーバへ30万ユーロをリファンドした際その窓口に使われたことで露見した。「ブラック・タイディング」(”Black Tidings”)口座こそが、ラミーヌ・ディアック(父)とパパ・マッサタ・ディアック(息子)の国際陸連( IAAF)をめぐるスキャンダルの焦点である。 世界反ドーピング機関(World Anti-Doping Agency, WADA)が設置した独立倫理委員会(ディック・パウンド委員長)は、同2014年にこのドラッグテスト陽性隠蔽工作の調査を開始し、その調査結果は今年(2016年1月)に170ページの報告書として公表された。この調査報告を受けて、国際陸連は、パパ・マッサタ・ディアックを含めた四人の幹部を、汚職と収賄の科で追放している。 その独立委員会報告書が、その脚注において(調査の過程で浮上したが報告書の主目的でないため)、東京オリンピック招致疑惑、すなわち、東京が国際陸連(IAAF)との取引に応じたためラミーヌ・ディアックはその支持をイスタンブールから東京に切り替えたとの疑いについて言及している。 独立倫理委員会報告書が報告する「ブラック・タイディング」(”Black Tiding”)口座に関わる事実関係は以下のとおり。 1. ラミーヌ・ディアック(父)とパパ・マッサタ・ディアック(息子)は、ディアックのもう一人の息子であるカリル・ディアックとハビブ・シッセなる弁護士とともに国際陸連(IAAF)の「非公式で非合法な支配体制」(”an informal illegitimate governance structute")を構成していた。 2. 「ブラック・タイディング」(”Black Tidings”)名義の秘密口座がシンガポールに存在し、それはイアン・タン・トン・ハンなる人物の所有している。タンは、電通が、国際陸連(IAAF)から認められた包括的マーケティングと商業権を行使するために設立したルツェルンにある子会社AMS(Athlete Management and Service)社のコンサルタントである。 3. イアン・タン・トン・ハンは、そのコンピューター通信の分析から、定期的にラミーヌ・ディアック(父)を含めた国際陸連(IAAF)幹部と連絡を取り合っており、「幹部レベルで国際陸連( IAAF)の一部となっていて」("integrated into the IAAF at the executive level”)、さらに「国際陸連(IAAF)の「非公式で非合法な支配体制」に属しているように思われる」("appeared to be a part of the informal illegitimate governance system for the IAAF")。 4. イアン・タン・トン・ハンはパパ・マッサタ・ディアック(息子)と大変親しく、2014年に生まれた彼の息子を「マッセタ」と名付けたほどである。タンは、シンガポールとセネガルにおけるディアック親子との継続中のビジネスに利害関係を有しているものと思われる。 5. 「ブラック・タイディング」(”Black Tidings”)は、ヒンドゥー語で「ブラック・マーケティング」(”Black Marketing”)とか「裏資金洗浄」(”Launder Black Money”)を意味する。 以上から明らかなように、「ブラック・タイディング」(”Black Tidings”)口座は、ラミーヌ・ディアック(父)、パパ・マッサタ・ディアック(息子)、カリル・ディアック(もう一人の息子)とハビブ・シッセ(国際陸連(IAAF)弁護士)から成る国際陸連(IAAF)の「非公式で非合法な支配体制」(”an informal illegitimate governance structute”)の裏金収納(収賄と必要があればそのリファンド)用口座であり、すでにその実績(実際に使われた証拠)がある。だからこそ、この口座に東京招致委員会が2億円以上もの金を送金したということは、日本が、ラミーヌ・ディアック(父)やパパ・マッサタ・ディアック(息子)らの国際陸連(IAAF)「非公式で非合法な支配体制」(”an informal illegitimate governance structute”)への支払いを行ったということであり、そのような支払いの目的が「東京オリンピック招致」であればその賄賂性を否定することは極めて難しい。 以上、阿修羅の所見の参考に供す。 私はペンネームを使わないため、以上のガーディアン紙の要約は、他のスレへは投稿することができない。阿修羅のシステムから二重投稿としてはねられてしまうからである。したがって、ペンネームをお持ちの方々は、私がこのコメに書いたことを遠慮なくコピペして他のスレでも拡散してほしい。 こういう欧米では周知の基本的事実が日本において隠されているために(本当にマスゴミはひどい)、日本における議論が歪曲され(わたしは、この件に関するやさしい批判コメの多くが自民党ネトサポによる事件の矮小化努力であると思う)、自らの手での不正の追求という自浄がまったく行われず、ますます国際社会において日本は大恥をかくことになってしまう。 フランス検察当局がこの件をどうするかはわからないが(フランスの司法の正義に期待したいが)、そもそも自分の国が行った国際的贈賄について自らで追求し起訴できないのは民主主義国家として異常で恥ずかしいことと言わなければならない。 日本の名誉のためにも、(オリンピックをやりたい、やりたくない、は関係なく)本件に正義を実現したい。
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