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オバマ大統領は広島で「謝罪ごっこ」の清算を
70年前の戦争に誰も責任を負ってはいない
2016.5.13(金) 池田 信夫
70年前の出来事への謝罪の有無より不安定化する東アジア情勢への対応を考えるべきだ(資料写真)
オバマ米大統領が、5月27日に広島を訪問することが決まった。これはアメリカの現職大統領としては初だが、演説や記者会見は予定されていない。それでもこれが大ニュースになるのは、広島訪問に重象徴的な意味が含まれているからだ。
アメリカ政府の公式見解によれば、1945年8月に原爆を投下しなかったら日本の降伏が遅れ、11月には100万人の兵力による本土上陸作戦が予定されていたので、原爆は終戦を早め、多くの人命を救ったことになっているが、それは本当だろうか。
原爆投下は史上最大の国際法違反
広島平和記念公園にある原爆慰霊碑には「安らかに眠って下さい過ちは繰返しませぬから」と刻まれている。この文章には主語がないが、これを「日本人は過ちは繰返しませぬから」と解釈するのはおかしい。
広島平和記念公園の原爆慰霊碑(出所:Wikimedia Commons)
主語は「人類」だというのが公式の説明だが、これもおかしい。人類が人類に爆弾を落とすはずはない。原爆はアメリカが日本に落としたのだから、「アメリカ人は過ちは繰返しませぬから」と書くのが正しい。
広島と長崎で非戦闘員を20万人以上も殺した原爆投下は明白な国際法違反である。日本政府は1945年8月10日にアメリカに対して「ハーグ陸戦条約違反だ」という抗議声明を出し、東京地裁は1963年、原爆投下は国際法違反であるという判決を下した。法的には、それが史上最大の違法行為であることは疑問の余地がない。
では原爆投下が「多くの命を救った」というのは事実だろうか。当時の大統領トルーマンは、回想録で「7月26日にポツダム宣言を出したのは、日本人を完全な破壊から救うためだった。彼らの指導者はこの最後通牒をただちに拒否した」と、日本が宣言を受諾していれば原爆は投下されなかったかのように書いているが、これは嘘である。
原爆投下はスティムソン陸軍長官が1945年7月25日に決定し、トルーマン大統領に承認された。これは26日にポツダム宣言の発表される前日で、スターリンも原爆投下を知っていたが、ポツダム宣言はスターリンの署名を拒否して出された。原爆投下の計画は8月上旬と決まっており、ポツダム宣言はこれを正当化するために急いで出されたのだ。
これに対して日本政府は明確な回答をしなかったため、原爆は予定通り広島と長崎(当初の予定は小倉)に投下され、その直後の8月14日に日本政府はポツダム宣言を受諾した。この意味で原爆が降伏の決定的な要因だったことは確かだが、原爆が投下されなかったら、日本は本土決戦をしただろうか。
日本は原爆投下の前に終戦工作を始めていた
1945年6月8日の御前会議で本土決戦の方針が確認されたが、3月からの沖縄戦で日本軍はほとんどの戦力を失っていた。翌9日に梅津美治郎参謀総長は天皇に異例の上奏を行ない、「支那派遣軍と関東軍が壊滅状態だ」と報告した。
本土決戦の要員としては「支那に温存している200万の精鋭部隊」が想定されていたが、それが存在しないのでは、国内の留守部隊だけではとても戦えない。あえて本土決戦の決定直後に上奏した梅津の意図は「本土決戦は不可能だ」という陸軍の判断を暗に伝えるものだったと思われる。
天皇はこの上奏を重くみて木戸内大臣に独自に情報の収集を命じ、その報告を踏まえて6月22日にあらためて御前会議を開いた。ここで天皇は「戦争の指導に就ては先に御前会議に於て決定を見たるところ、他面戦争の終結に就きても此際従来の観念に囚はるゝことなく速に具体的研究を遂げ、之が実現に努力せむことを望む」と、政府首脳や大本営に申し渡した。
「従来の観念に囚はるゝことなく」というのは、本土決戦という既定方針を見直せということで、これには軍も反対しなかった。つまり実質的な「聖断」は6月に下っていたのだが、秘密裏にソ連などを通じて終戦工作が行われていた。
軍は「停戦」という形の敗戦の道を探っていたが、ポツダム宣言で「降伏」を要求されたため、「国体の護持」をめぐって不毛な論争が始まり、貴重な時間が空費されているうちに原爆が投下され、ソ連が参戦した。だから原爆が終戦を早めたのではなく、6月に決まっていた方針の実行が遅れ、終戦工作に手間どっている間に原爆が投下されたのだ。
だから原爆投下には戦略的な意味がなく、アイゼンハワーやマッカーサーなど陸海軍の首脳も反対していた。アメリカは日本の暗号を解読していたので終戦工作が進んでいることを知っていたが、ルーズベルトの急死で副大統領から大統領になったトルーマンは、国家の指導者としての地位を誇示して1948年の大統領選挙に勝つ必要があった。
彼がソ連参戦の前に原爆を投下したのは、その前に日本を降伏させてアメリカが占領統治の主導権を握るためだった。もう少し日本の降伏が遅れていたら、北海道はソ連軍の支配下になり、日本は朝鮮半島のように分割されたかも知れない。
未来志向で東アジア情勢への対応を
オバマ大統領が広島を訪問することは、今まで自国の戦争犯罪に口をぬぐってきたアメリカが、その歴史を客観的にみるようになった点では大きな進歩だが、彼が謝罪する予定はない。アメリカ国民の大多数が今も「原爆投下は必要だった」と信じているからだ。
日本政府に「性奴隷」の謝罪を求めた海外メディアも、朝日新聞をはじめとするリベラル系メディアも、彼に謝罪を求める様子はない。それは当然だろう。原爆が投下されたときはオバマ氏は生まれてもいなかったので、彼は何の責任も負っていない。
同じことが安倍首相にもいえる。昨年の「戦後70年談話」については、「侵略戦争の謝罪がない」などと批判するメディアもあったが、侵略も無差別爆撃も同じく国際法違反であり、安倍氏も日本の責任を否定はしていない。
それより問題は、不安定化する東アジア情勢にどう対応するかだ。安保法制では明示的に書かれていないが、朝鮮半島ではいつ戦争が起ってもおかしくない。日米が連携して戦争を未然に防ぎ、また犠牲を最小限に防ぐためにも、くだらない「謝罪ごっこ」はやめ、未来志向で日米同盟を守るべきだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46845
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