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クロ現・国谷裕子さんが月刊誌「世界」に書いたこと
2016年5月9日 山田道子 / 毎日新聞紙面審査委員
http://mainichi.jp/premier/business/articles/20160506/biz/00m/010/003000c?fm=mnm
NHKの番組「クローズアップ現代」で23年にわたってキャスターを務めた国谷裕子氏=2001年11月、松田嘉徳撮影
「時代が大きく変化し続ける中で、物事を伝えることが次第に難しくなってきた」。1993年4月に始まったNHKの報道番組「クローズアップ現代」の3月17日の最終回終了後、こんなコメントを残したキャスターの国谷裕子氏(59)。その言葉の意味をそんたくする人は多かったが、国谷氏は4月8日発売の「世界」(岩波書店)5月号に「インタビューという仕事『クローズアップ現代』の23年」を寄せた。
月刊誌「世界」2016年5月号に掲載された記事
国谷氏といえば、2014年7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定後、菅義偉官房長官が生出演した際、国谷氏の重ねての質問に官邸筋がNHKに猛烈抗議、国谷氏は楽屋で涙したと写真週刊誌「フライデー」が報じたことを思い出す。
キャスター降板の理由ともされるこの“事件”について「世界」に書いている。
集団的自衛権の行使容認で憲法解釈を変更したことへの違和感や不安をどう払拭するのかという国谷氏の問いに、菅官房長官が答えている途中に放送が終わった。「生放送における時間キープも当然キャスターの仕事であり私のミスだった」と書いた後、続ける。「聞くべきことはきちんと角度を変えて繰り返し聞く、とりわけ批判的な側面からインタビューをし、そのことによって事実を浮かび上がらせる、それがフェアなインタビューではないだろうか」と。
私が何よりインパクトを感じたのは、国谷氏の文章が「世界」に載ったこと。新聞を含め多くのメディアが取材を申し込んでいただろう中、国谷氏がまず選んだのは反安倍政権の「世界」だった。
というのもこんな場合、すなわち有名人の節目の独占手記や独占インタビューの場として選ばれるのは月刊「文芸春秋」が多いからだ。
文芸春秋を選んだ小泉元首相、みのもんたさん、筑紫さん……
例えば、16年1月号の小泉純一郎元首相。題して「小泉純一郎独白録 首相退任後初のロングインタビュー4時間半 安倍政権、進次郎、原発……すべてを語り尽くした」。安倍晋三首相も第1次政権後の独占手記「わが告白 総理辞任の真相」を08年2月号に寄せている。
タレントのみのもんたさんは次男の窃盗未遂などで週刊文春でたたかれるも、13年12月号に独占手記「私はなぜここまで嫌われたのか」。ジャーナリストの筑紫哲也さんは08年11月に肺がんで亡くなった後の09年2月号に、「がん残日録 告知から死までの五百日の闘い」を残した。
「文芸春秋」の発売日は毎月10日。「世界」とほぼ同じ時期で、両誌のカラーは対照的とみられてきた。「世界」の特集タイトルが「テレビに未来はあるか」ということを差し引いても国谷氏の強い意思を感じる。
国谷氏は「婦人公論」5月10日号(4月26日発売)のインタビューも受けている。TBSの報道番組「NEWS23」のメインキャスターだった岸井成格氏を批判する全面広告を載せた読売新聞。その傘下の中央公論新社が発行する雑誌で、さらりと「フェアなキャスターとは何か」について語る。ここにも意思があると思うのはゲスの勘ぐりだろうか。
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