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熊本地震を口実に、日本の「ナチス化」が進む危険性
http://nikkan-spa.jp/1106506
2016.05.10 日刊SPA!
熊本地震の被害状況を視察する安倍首相
◆首相が「緊急事態」を宣言すれば、政令を出し、基本的人権を制限できる
熊本地震が発生した翌日の4月15日。菅義偉官房長官は記者会見で、緊急時の政府の権限拡大を憲法に定める「緊急事態条項」創設の必要性についてこう強調した。
「今回のような大規模災害が発生したような緊急時において、国民の安全を守るために国家や国民自らがどのような役割を果たすべきかを、憲法にどのように位置づけていくかは極めて重く大切な課題であると思っています。具体的には、国民的な議論と理解の深まりの中でおのずと決まっていくだろうと思います」
熊本地震発生の翌日、被災者救出の真っ最中に菅義偉官房長官は「(緊急事態条項創設は)極めて重く大切な課題」と会見で強調した
自民党は、野党時代の2012年にまとめた憲法改正草案に緊急事態条項を盛り込んでいる。首相が「緊急事態」を宣言すれば、法律と同じ効果を持つ政令を出すことや、基本的人権を制限することができるなどとする内容だ。
安倍晋三首相も、昨年11月の衆院予算委員会で「草案のどこから始めるべきか。緊急事態条項からやるべきだという議論もかなり有力だ」と意気込んでいた。
菅長官の発言から4日後の4月19日、憲法学者の樋口陽一東大名誉教授ら「立憲政治を取り戻す国民運動委員会」が記者会見を開いた。
そこで、「熊本地震を奇貨として憲法に緊急事態条項を導入しようとする意図を示したが、それは、冷静な議論を省略する惨事便乗型全体主義で、許されることではない」という声明文を発表した。
◆緊急事態条項には、「災害」だけでなく「戦争」(武力攻撃)も含まれる
古賀茂明氏
元経産官僚の古賀茂明氏はこう語る。
「地震発生の翌日は災害対応に専念するのが普通の政治家の責務。それなのに、菅官房長官は熊本地震にかこつけて緊急事態条項に言及した。『東日本大震災の時に災害対応が上手くいかなかったのは、緊急事態法がなかったため。緊急事態法があれば、被災者にプラス』という雰囲気作りをしたいのでしょう。
いまや安倍政権の最大の狙いが、参院選で3分の2以上の議席を得て、憲法改正で緊急事態条項を創設することだとわかります。憲法9条を改正するとなればハードルが高いのですが、緊急事態条項であれば、『戦争』と言わずに『災害』と言いながら進められる。この緊急事態条項の中には、戦争(武力攻撃)のことも入っているのですが……」
たしかに自民党の改憲草案にある「緊急事態の宣言」(第98条)は、次のように書かれていた。
「内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる」
そして緊急事態の際には「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる」と規定している。国会審議の過程を経ることなく、首相の独断で法律同等の政令を作ることができてしまうのだ。
「災害対応のため」と思って緊急事態法が創設されると、戦争など災害以外の場面でも、首相の一存で国会の縛りを受けない「独裁状態」が可能になるともいえる。多くの識者がこの点についての危険性を指摘している。
それでは、具体的にどのような「独裁化」が進んでいくのか? 5/10発売の週刊SPA!「熊本地震を口実に『ナチス化』する日本」では、国民によく知られていない「緊急事態条項」の中身を検証。知らず知らずのうちに少しずつ「独裁化」が進んでいく危険性についてリポートした。 <取材・文・撮影/横田 一>
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