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日ロ首脳会談は「ネギしょった鴨が這いつくばるの図」再びー(田中良紹氏)
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8th May 2016 市村 悦延 · @hellotomhanks
安倍総理は昨年のゴールデンウィークに米国を訪問し、
4月29日に連邦議会の上下両院合同会議で演説した。
演説は日本が米国に完全隷属することを宣言する内容であった。
直後にフーテンは「ネギしょった鴨が這いつくばるの図」というブログを書いた。
今年のゴールデンウィークは安倍総理が欧州に続いてロシアのソチを訪問し、
5月6日にプーチン大統領と平和条約締結交渉を巡って会談した。
これまでの報道から伝わってくるのは、再び「ネギしょった鴨が這いつくばるの図」と書きたくなる内容である。
昨年の安倍総理の米議会演説については
佐藤健志著『戦後脱却で、日本は「右傾化」して属国化する』(徳岡書店)が詳しく論評しており、
フーテンと考え方が近いのでその内容を紹介する。
著者は岸信介の60年安保改定について「とりあえずは対米従属を受け入れつつ、
長期的には従属を脱却できるようにしておくという配慮がみられる」として、
安倍総理の米議会演説とは対照的だとしている。
フーテンが「岸信介と安倍晋三はこれほど違う」を書いたように、この著者も二人を真逆の政治家と見ている。
著者はまず45分間に及ぶ演説の中に日本の歴史や伝統、文化についての言及がないことに驚いている。
そして演説の冒頭で安倍総理が歴代の駐日米国大使を
「民主主義の輝けるチャンピオン」と呼んだことに注目する。
彼らによって日本は民主主義を教えられたと安倍総理は考えているのである。
安倍総理は演説の冒頭で米国は日本に教える側であり、日本は学ぶ側であることを認めた。
そして安倍総理は「日本にとってアメリカとの出会いは、民主主義との出会いでもあった」と述べ、
19世紀後半の黒船来航以来、日本がアメリカ民主主義にあこがれてきたかのように演説する。
しかし歴史の現実は、明治維新以降、
日本は天皇制国家としてプロシア憲法や英国の議会制度を採り入れ、
国民主権ではないことから「民主主義」を「民本主義」と言い換え、結局は米国と戦争することになる。
そのため日米戦争について安倍総理は「深い後悔」や「痛切な自責の念」を表明する。
そして「昨日の敵が今日の友」になったことを強調し、
戦後の米国が復興や繁栄の後押しをしてくれたことを称賛するのである。
従ってそこからは世界平和と繁栄のため日本は二度と過ちを犯さず、
米国の戦略にどこまでもついていくという論理になる。
演説で安倍総理は日本はTPPと積極的平和主義に向かって未来への道を進むと訴えた。
そして安倍総理は「日米同盟」を「希望の同盟」と呼ぼうと提案する。
安倍総理によればその「希望」を与えてくれるのは過去も現在も未来も米国である。
つまり過去も現在も未来も米国の正義が絶対であり、
日本はそれに従うと約束したのが安倍総理の米議会演説だった。
この演説に米国議員が拍手喝采したのは当然である。
ここまで米国を絶対視し米国の国益に従属することを約束した日本の政治指導者はいないからだ。
しかしだからと言って米国が日本に寛容になることはない。
従属すると表明した以上、あくまでもどこまでも米国は自国の利益を要求し続けることになる。
安倍政権が昨年の国会で安保法制を変え、
地球規模で日本の自衛隊が米軍を支援することを決めた後に、
国益を追求する米国の姿勢が明らかになる。
日本は金を出すだけでなく血を流す覚悟をしたのだから、米軍支援予算を減らすと考えるのは自然である。
ところが思いやり予算の減額を要求する日本政府を米国は一蹴した。
むしろ兵器の購入などで日本から金を吸い上げる作業に本腰を入れてくる。
米国は今後さらに日本の防衛予算を増額させ、日本から金も人も提供させる腹づもりになっている。
そうさせたのは安倍総理の米議会演説である。
今年のゴールデンウィークの安倍総理の外遊は、
選挙をにらんだパフォーマンスをメディアに報道させるのが目的であった。
しかし伊勢志摩サミットを前にイギリスやドイツと財政出動で共同歩調をとる目的は達することができず、
大したパフォーマンスにならない。
むしろフーテンは日ロ首脳会談で昨年の米議会演説を思い出し、2年続きの憂鬱を味わった。
日ロ首脳会談での安倍総理の狙いは北方領土問題での進展を演出することにある。
国民の目の前に「領土が帰ってくる」というニンジンをぶら下げ、
その期待感を持続させて選挙を有利にしようというわけだ。
ところがこの総理は「すり寄る」以外の交渉術を持たない。
そのため今回も相手の要求に応ずる姿勢を安易に見せただけに終わった。
安倍総理の頭の中には原油安とウクライナ問題を巡る経済制裁で
ロシア経済が弱体化しているとの認識がある。
だから餌を撒けばプーチンは譲歩すると考える。
しかし弱みがあればあるほど自らの弱みを見せずに我慢し、相手の弱みをついてくるのが外交の常識である。
今回の会談を見ているとしきりに動くのは安倍総理でプーチンは受け身である。
プーチンはじっと安倍総理の弱点を見極めている。
すると安倍総理は8項目の経済協力と、
北方領土問題を含む平和条約交渉には「新たな発想に基づくアプローチ」で進めることを提案した。
プーチンはマイナスにならない話なので合意した。
「新アプローチ」の内容は明らかにされていないが、
あくまでも安倍総理とプーチン大統領とで平和条約交渉を成し遂げるため、
安倍総理の自民党総裁任期とプーチン大統領の大統領任期が切れる2018年を
それぞれ「ロシアの年」と「日本の年」と呼ぶことにするという。
いかにも日本国民に対し思わせぶりなニンジンのぶら下げ方である。
しかし「新冷戦体制」に入った世界情勢の中で、ロシアが領土問題で譲歩することは全く考えられない。
ところが二人だけの会談を持ちかけて選挙用のパフォーマンスに仕上げたがる安倍総理を見ると
「焦り」というか「弱み」を感じさせる。
それを感じればプーチンは経済制裁包囲網の最も弱い環として日本を揺さぶってくることは間違いない。
もはや勝負はついたとみるべきである。
このまま安倍総理に交渉を任せれば日本は揺さぶられて金だけむしり取られる可能性がある。
プーチンはサービスとして時々安倍総理を喜ばせながら、
しかし自国の国益を求めて日本を操れるだけ操るだろう。
その姿を見なければならないかと思うと憂鬱になる。
昨年と今年の二度にわたってまともな外交ができる人間でないことを見せつけられたのだから、
自民党はそろそろ誰かが安倍総理の首に鈴をつけに行った方が良い。
それにしても保守を自認する連中が昨年の米議会演説や今年の日ロ首脳会談を批判しないのが
フーテンには理解できない。
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