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もしトランプが大統領になったら?クリントンとの対日政策比較
http://diamond.jp/articles/-/90700
2016年5月6日 週刊ダイヤモンド編集部
「TPPはばかげた協定だ。米国が不公平な競争にさらされ、(海外の)安価な労働力によって雇用を奪われ、経済が混乱する」
TPPの頓挫や円安批判による円高進行など、日本の輸出産業は米大統領の政策に大きく左右される Photo:AP/AFLO
日米の主導によって昨年7月、ようやく大筋合意にこぎ着けた環太平洋経済連携協定(TPP)をばっさり切って捨てるのは、ドナルド・トランプ氏だ。彼は自由貿易協定そのものに反対で、もしもトランプ氏が大統領になった場合、TPPは頓挫する可能性が高い。
その場合、日本企業にも悪影響が及ぶ。TPPによって関税が低くなるはずだった自動車や繊維製品は、価格競争力が低下し、企業の業績悪化は避けられないだろう。
大統領の交代でこのように外交政策が変わってしまうリスクがあるわけだ。そこで、予備選でトップを走るトランプ氏とヒラリー・クリントン氏の2人が主張する外交政策、とりわけ主要な五つの対日政策と、それが日本に与える影響について下表のようにまとめてみた。
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では、クリントン氏はTPPについてはどのような立場なのか。
「雇用創出や賃上げ、安保促進につながる場合のみ賛成。現時点では条件を満たしておらず反対」
オバマ政権で積極的にTPPを推進してきた人物とは思えない発言だ。予備選を勝ち抜くための方便だとみる向きもあるが、今回の大統領選では、自由貿易主義を標榜する共和党候補さえもTPPに反対の立場を取っており、一度振り上げた拳を下ろせなくなる可能性もある。
為替政策については、両氏共に日本の円安“誘導”政策を批判している。新大統領の下、もしも円高が進行すれば、自動車や鉄鋼、電子部品など日本の主要輸出産業が大きな影響を受けることになるだろう。一方で、石油や電力・ガス、日用品は円高による輸入価格の低下で恩恵を受けることになる。
■日本への悪影響が大きいのはトランプ氏の方
対中政策についてはどちらも強硬な姿勢だが、一点大きな違いがある。クリントン氏は経済面だけでなく安全保障面でも、中国に対して国際的なルールに従うことを強く求めているが、トランプ氏の対中批判は経済面に偏っている。「中国との安易な“取引”に走るリスクがないとはいえない」(安井明彦・みずほ総合研究所欧米調査部長)。
外務省関係者も、「カネで話がつくとなれば、中国やロシアからすればトランプは御しやすい相手」と警戒する。
トランプ氏の対日政策についての主張で最も衝撃的なのが、日本の安保タダ乗り論だ。「日本が攻撃されれば、米国はすぐに助けに行かなければならないが、われわれが攻撃を受けても、日本は助ける必要はない。条約は片務的であり不公平だ」と、現在の安保条約を批判。いきなり駐日米軍撤退とはならないだろうが、日本にさらなる費用負担を求める交渉材料として使われる懸念がある。
トランプ、クリントン両氏の対日政策を比較すると、やはり日本への悪影響が大きいのはトランプ氏の方だ。予備選を勝ち抜き本選に進めばトランプ氏も変わるとの見方もあるが、「本選になっても中道に修正するのは難しいのではないか」(足立正彦・住友商事グローバルリサーチシニアアナリスト)とみる向きもある。
■トランプは人材募集中
次期政権に入閣しそうなメンバー
さて、次に誰が大統領になろうと、有力な閣僚が脇を固めなければ政策は実現できない。候補者との親しさや選挙への貢献度から、次期政権の中枢メンバーを予測した。
クリントン氏が大統領になる場合、閣僚に選びそうな人材は粒ぞろいだ。しかも、オバマ政権が進めたアジア重視への転換を支えたカート・キャンベル氏ら知日派がそろう。日本政府や経済界が、クリントン氏の大統領就任を期待するのはこのためだ。
他方、トランプ氏の閣僚候補については、外交政策アドバイザーのチームがようやく発表されたばかりで、政権の全容は不透明なままだ。日本との関わりが深い人物も今のところ見当たらない。
米国でもトランプ政権の人材は不安視されている。米紙「ウォールストリート・ジャーナル」は、トランプ氏のアドバイザーについて、「よく知られた人物ではない」と辛口の評価だ。
■知日派の専門家がズバリ解説
次期大統領の下での日米関係
次期大統領は果たしてトランプ氏かクリントン氏か。「知日派」の4人の専門家に、次期大統領の下での日米関係がどう変化するのかを詳細に解説してもらった。
トランプ氏の主張は米国民の代弁ではない
マイケル・グリーン(戦略国際問題研究所上級副所長)
マイケル・グリーン
日本の安全保障政策に精通した知日派として知られる。ジョージ・W・ブッシュ政権時に国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長を務めた。 Photo by T.S.
日本の読者に安心してほしいことがあります。ドナルド・トランプ氏の反日的な主張は、今日の米国の議会や財界、学界、国民の意見とはかなり異なるということです。例えば、2014年にシカゴ国際問題評議会が発表した調査結果の中で、米国人が信頼している国のランキングが登場しますが、1位はカナダ、2位英国、3位ドイツ、そして4位が日本です。
また、米調査機関ピュー・リサーチセンターによる15年の調査結果によると、米国民の約半数が環太平洋経済連携協定(TPP)を支持し、自由貿易が国益になると答えた人は6割弱に上ります。
そして、さまざまな調査で「日本が他国から攻撃を受けた場合、米国は日本を守るべきか」という問いに対して、多くの米国人がYESと答えています。
ですから、トランプ氏の発言は、米国民が持つ日本への不満や怒りを代弁しているのではなく、自分の意見でしかないのです。
過去の例をひもとくと、1976年の大統領選でジミー・カーター元大統領(任期77〜81年)が在韓米軍の全面撤退を公約に掲げて勝利し、1年半くらいは約束を守ると言い続けました。しかし、国防長官や国務長官、議会が歯止めをかけて、結局その公約は実現できずに諦めることになりました。
トランプ氏が在日米軍の撤退命令をするなんて思いませんし、仮にしたとしても、暴走には歯止めをかけられます。また、彼はカーター元大統領のように具体的な公約をしているわけではないので、日米の安保関係者はうまくハンドリングできるのではないかと思います。(談)
誰が大統領になっても外交政策は変わらない
フランク・ジャヌージ(モーリーン・アンド・マイク・マンスフィールド財団理事長)
フランク・ジャヌージ
1997〜2012年、米国上院外交委員会東アジアおよび太平洋地域担当の政策部長として、同委員会委員長のバイデン氏やケリー氏に提言。 Photo by Kazutoshi Sumitomo
大統領選の勝者が共和党であれ民主党であれ、米国の東アジア戦略に大きな差異はありません。ただ、外交政策にはプライオリティーがあります。
オバマ政権の前半4年は、クリントン国務長官がアジア地域における「リバランス」を最優先課題として、後半の4年はケリー国務長官が中東問題を最優先課題として進めました。新大統領が何を最優先課題と位置付けるのかで、外交政策も変わってくるでしょう。
現在、選挙戦ではクリントン氏もトランプ氏も共にTPPに反対の立場を取っています。しかしそれは選挙戦だから。大統領になればもっと実務的になります。
思い出していただきたい。08年の大統領選でオバマ氏は、米韓FTAへの反対を表明していました。しかし大統領になったら合意書にサインしたでしょう。
トランプ氏の国際法を無視した発言に不安を覚える人もいるかもしれません。そこで読者のために、米国政治の根本について説明しておきましょう。
ご存じのように米国では、立法、行政、司法の三権が分立しており、大統領(行政)といえども、議会や裁判所のけん制によって勝手なことはできません。米国は大統領の権力を抑制する組織的制度を備えているのです。
私には、クリントン氏やトランプ氏がどう考えているのかはっきりとは言えません。でもこれだけは言えます。大統領になった人物は、外交経験がなくても学び、適応していくものなのです。(談)
クリントン氏は条件付きでTPP支持
グレン・S・フクシマ(米国先端政策研究所上級研究員)
グレン・S・フクシマ
米国先端政策研究所(CAP)上級研究員。米国通商代表部の日本・中国担当代表補代理、在日米国商工会議所会頭などを歴任。
トランプ氏が7月の共和党大会で大統領候補になれば、米国の対外政策に関する議論に影響があります。彼は日本関連では次の点を主張している。1点目は日本が米国の雇用を奪っている、2点目が貿易協定で、日本の交渉者は賢いが、米国の交渉者は無能であるため、日本のみが得をしている、3点目は日本が円安操作を行っている、そして4点目が安保タダ乗り論です。
ただ、自分はビジネスマンであり現実的であると言っており、彼の対外政策が現実路線に戻るかを、現時点で予想するのは難しい。
一方、クリントン氏は、基本的にはオバマ政権の対外政策を引き継ぐでしょう。彼女はオバマ政権の第1期の4年間、国務長官を務め、アジア回帰戦略を打ち出した本人です。国務長官に就任して初めて訪問した地域もアジアで、中でも最初に日本を訪問しました。明治神宮を訪れ、学生と討論するなど、日本に対する関心も高い。中国に対しては、人権問題、経済問題、安全保障問題のいずれにおいても、厳しい態度で臨むと思います。
TPPについては、メディアではクリントン氏は「反対している」と報道されていますが、彼女の表現は微妙です。TPPを支持するには、雇用の増加、賃金の増加、安全保障の強化の三つを条件に挙げています。ですから、TPPの受け入れを排除しているわけではないのです。(談)
日本に厳しいトランプ氏 クリントン氏はアジア重視
ミレヤ・ソリス(ブルッキングス研究所日本部長)
ミレヤ・ソリス/米ハーバード大学で博士号(政治・政策研究)と修士号(東アジア研究)を取得。専門は比較政治経済学、通商政策、日本の外交・対外経済政策。
仮にクリントン氏が大統領に選出された場合、同氏の外交戦略はアジアにプライオリティーを置いたものになるでしょう。それは同氏が国務長官を経験しており、アジアの戦略的重要性を理解しているからです。
問題はTPPについてです。すでに12カ国が大筋合意にこぎ着けており、各国は批准手続きを終えなければならない。ところがクリントン氏は、大統領選に出馬してからは「現時点で把握している内容は望ましくない」と反対の立場を表明してきました。労働組合に配慮してのことだったのかもしれません。オバマ政権時代に批准手続きが終わらなかった場合、漂流する可能性もあります。
もっとも、予備選中の主張が次期政権の政策になるとは限らない。選挙は選挙であり、いざ政権に就くと現実的になり、態度を変えることも珍しくありません。
現時点では、クリントン氏はファーストレディーで政治家としての実績もありアドバンテージはありますが、前例がないことが起こっているのが今回の選挙。トランプ氏が想定以上に健闘する可能性は否定できません。
米国のメディアでも指摘されているように、トランプ氏は日本に対して非常に厳しい。安全保障についても、日本は米国と同じ義務を負っていないと負担増を主張し、経済政策では保護主義色を強めています。ただ、政策として進めるには、議会で法案を通すなどのプロセスが必要で、その手腕は未知数です。(談)
*「週刊ダイヤモンド」2016年4月9日号特集「踊る米大統領選」の記事を加筆・修正。
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