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安倍政権の分配政策がアンチビジネスと受け止められるリスク
2016.5.5(木) 黒瀬 浩一
先進諸国の賃金横ばい、国際労働機関が警告
都内の道路を歩く人々(2014年11月28日撮影、資料写真)。(c)AFP/Toru YAMANAKA〔AFPBB News〕
?経済の好循環に向け期待された賃上げだったが、今年も力不足だった。そこで安倍政権は、好循環を力づくでも加速させるため、別の手段に訴え始めた。具体的には、(1)同一労働同一賃金を是とする派遣社員やパ−ト社員の賃上げ、(2)サービス残業に対する監督の強化、(3)下請けいじめ対策、などだ。
?(1)同一労働同一賃金を是とする派遣やパ−トの賃上げについては、一億総活躍国民会議が5月に取りまとめるプランに具体策が盛り込まれる見込みだ。
?基本的な方向性は、正社員の賃金を100とすれば64にとどまる非正規社員の賃金を、欧米並みの80程度に向けて引き上げる方向で調整されている。ただし、賃金の比率だけを見るのなら、正社員の賃金を80に引き下げる企業が続出することも懸念されている。
?(2)サービス残業に対する監視の強化では、厚労省は4月に違法な長時間労働に対する監督指導を強化する部隊として「過重労働撲滅特別対策班(通称「かとく」)」を設け、全国47の労働局に新設の「過重労働特別監督監理官」を配置した。また、立入調査の基準となる残業時間を月100時間超から80時間超に引き下げた。
?4月の厚労省の発表によると、2015年4月から12月の間に調査した8580の事業所のうち、4790の事業所で違法な残業が確認された。大企業ではABCマートやドンキホーテが摘発された。
?(3)下請けいじめ対策では、3月24日の経済財政諮問会議で、安倍総理が下請けの取引条件改善など中小企業支援に万全を尽くすよう閣僚に指示した。これを受け、まず厚労省は、違法残業の背景に下請けいじめがあるとして、中小企業庁や公正取引委員会に通報を始めることとなった。
?経済の好循環は、先行して付加価値の増強に成功したセクターから、他のセクターへと付加価値が移転することで実現する。
?アベノミクスにおいては、先行して付加価値の増強に成功したセクターは、円安もあり大企業製造業、インバウンドや少子高齢化の流れに沿う大企業非製造業だ。この2つのセクターから、賃上げによって家計部門に波及することが期待されていたのだが、今のところ景気を下支えする程の力はない。
?そこで新たな分配政策として、(1)同一労働同一賃金を是とする派遣やパ−トの賃上げと、(2)サービス残業に対する監視の強化による実質的な時給の引き上げにより家計部門へ、(3)下請けいじめ対策により中小企業部門へと好循環を波及させる政策の導入と相成った。これらは、総理が今年の施政方針演説で表明した「成長と分配の好循環」を具体化する政策と見て良いだろう。
?しかし、これらの政策は諸刃の剣だ。というのも、(1)から(3)は、相手が日本人なら「お上」の一言で済む話だ。しかし、そのような常識があり得ない欧米人には、安倍政権がアンチビジネスに転換したかのように受け止められるリスクがある。
?米国の大統領選挙では、社会主義者を自認する民主党のサンダース候補のアンチビジネスな姿勢が産業界では警戒されているが、程度の差こそあれ、安倍政権の分配政策も同種のものとみなされるリスクがある。昨年以来、外国人投資家による日本株の大量売却が続いているが、決して安倍政権の経済政策がアンチビジネスに転換したわけではないと見られる。
(*)本記事は「りそな銀行 エコノミスト・ストラテジスト・レポート 〜鳥瞰の眼・虫瞰の眼〜」より転載したものです。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46764
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