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日本の「報道の自由」は香港や韓国より下なのか
国連を利用して「醜い日本人」を世界に売り込む活動家
2016.4.29(金) 池田 信夫
報道の自由、世界で低下 日本72位に後退 「国境なき記者団」報告
国連人権理事会の「特別報告者」に「日本の報道の危機」を吹き込んだのは? トルコ・イスタンブールで記者の収監に抗議してデモ行進するジャーナリストたち(2016年1月10日撮影、資料写真)。(c)AFP/OZAN KOSE〔AFPBB News〕
日本の報道機関の状況を調査するため来日した、国連人権理事会の「特別報告者」デービッド・ケイ氏は4月19日、外国特派員協会(FCCJ)で記者会見し、「日本の報道の独立性が重大な脅威に直面している」と述べて、安倍政権を批判した。
国連特別報告者といえば、2015年10月に「日本の女子学生の13%が援助交際をしている」と発言して騒ぎを起こした、マオド・ド・ブーア=ブキッキオ氏を覚えている人もいるだろう。彼らは特別報告者といっても国連職員ではなく、人権活動家にすぎない。日本語も分からない彼らに歪んだ情報を吹き込んでいるのは、日本の活動家だ。
「安倍政権が言論を弾圧している」という幻想
国連人権理事会というと、日本人は各国の代表の集まる国際機関だと思うだろうが、参加している人の多くはNGO(非政府組織)の左翼活動家である。国連ではアメリカも日本も1票、アフリカの小国も1票なので大半は途上国で、今や国連は「途上国クラブ」だ。
そこで正式の機関決定が行なわれるわけでもなく、「特別報告者」は報告するだけで、その内容に何の法的拘束力もない。日本政府も無視していたが、慰安婦問題で国連の報告書が悪用されてから、外務省が出席して反論するようになった。
今回もケイ氏の中立性が疑わしいため、外務省は昨年12月に来日を拒否したが、先方が重ねて要請してきたため、認めた。ただし彼が求めていた高市早苗総務相との会見は、国会日程を理由に拒否した。
彼の記者会見を聞いても、中身がほとんどない。彼が問題視したのは、政治的公平を規定する放送法第4条に違反した場合、政府が停波を命じる可能性があるという高市氏の国会答弁だが、これは免許人が免許要件に違反した場合は免許を取り消す可能性があるという当たり前の話で、問題は放送法の規定だから国会が改正すればいい。
あとは記者クラブが閉鎖的だというおなじみの話で、これは政府の問題ではなく、大手マスコミの談合なのだから、彼らが記者クラブを廃止すればいい。それ以外に、ケイ氏のいう「政府の圧力」の具体的な根拠はなく、「多くのコメンテーターが同時期に一気に降板することが重なった」といった週刊誌レベルの話ばかりだ。
国連を売名に利用する「人権派」弁護士
ケイ氏やブキッキオ氏を日本に連れてきたのは、日本の「人権派」弁護士だ。彼らは国内では相手にされないので、国連の権威を利用して騒ぎを大きくしようとする。その走りが、1996年の「クマラスワミ報告」で慰安婦問題を世界に売り出した戸塚悦朗弁護士だ。
彼は国連のNGOに所属する立場を利用して、慰安婦問題について国連人権委員会が勧告を出すよう執拗に働きかけ、20回近い会合に出席して、吉田清治の「済州島で慰安婦狩りをした」という話を英訳して配布し、慰安婦をSex Slaveと英訳して世界に紹介した。
最近出てきたのが、伊藤和子という弁護士だ。彼女はナビ・ピレイ国連人権高等弁務官が2010年に日本を訪問した際に「日本政府に対し、全ての性的奴隷に関する訴えを調査し、実行者を訴追するために効果的な法的・行政的措置を直ちにとるよう求める」という見解を紹介している。
戦争責任の問題は東京裁判と日韓条約で解決ずみであり、それ以外に訴追や個人補償をすることは国際法違反だ。こうして「醜い日本人」のイメージを世界に拡散して注目を集め、国連を売名に利用するのが、彼らの常套手段だ。ブキッキオ氏のときもケイ氏のときも、伊藤弁護士が同行している。
「黄色人種は醜い」という偏見に迎合する左翼活動家
この記者会見と前後して、20日に「国境なき記者団」というフランスのNGOが「報道の自由度ランキング」なるものを発表した。彼らのランキングによれば、
・香港69位
・韓国70位
・日本72位
となっている。ランキングの根拠は何も書いてないが、中国政府を批判した出版社の社長が拉致された香港や、朴大統領のスキャンダルを書いた産経の記者が出国禁止になった韓国より、なぜ日本が下になったのか。
それも鳩山政権では11位だったのが、安倍政権で72位まで下がった。彼らが日本に報道の自由がない理由としていつも挙げるのは記者クラブだが、民主党政権でもクラブはあった。なぜ自民党政権になってから、急にランキングが下がったのか。
これは彼らにおかしな情報を提供する活動家が、日本にいるためとしか考えられない。FCCJを取り仕切っているのは、デビッド・マクニールというフリー記者だ。「特派員協会」といっても、FCCJのメンバーに大手海外メディアの特派員はほとんどいない。新聞社の経営が悪化して、東京支局が次々に閉鎖されているからだ。
1980年代には東京支局は花形ポストで、90年に『日はまた沈む』を書いた英エコノミスト誌のビル・エモットは、のちに本社の編集長になった。しかし今ではエコノミスト誌に日本発の記事はほとんど出ない。CNNやBBCのニュースを見ても、日本はほとんど話題にならない。
残念なことだが、欧米人は日本にほとんど関心をもっていない。中東では戦争が続き、ヨーロッパでは難民問題、アメリカでは大統領選挙と派手な話題があるが、日本は何もないので、白人の目を引くネタを捏造するしかないのだ。
特に「黄色人種は醜い」という偏見に迎合するのが彼らの手口だ。もちろん直接そう言うと批判を受けるので、「いまだに戦争責任を清算していない日本人」とか「右翼で危険な安倍首相」といったネタで、正義の味方の顔をして人種差別を再生産しているのだ。
戦争で話題になるよりはましだが、これは日本政府が世界に対して情報を発信する努力を怠ったことも原因だ。「クールジャパン」などという自己満足ではなく、悪質な「人権屋」を排除して正しい日本の姿を世界に伝える対外広報の戦略を考える必要がある。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46739
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