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安倍総理と麻生大臣は「再延期はない」と断言して、'14年末に衆院解散を断行したが……〔PHOTO〕gettyimages
消費税10%に上げるべきか、上げざるべきか〜元大蔵事務次官からメガバンク頭取、上場企業社長まで「私はこう考える」 安倍さん、どうする!?
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48370
2016年04月11日(月) 週刊現代 :現代ビジネス
上がらなければ嬉しい。でも、上げないと社会保障制度が破綻する? 夏の選挙を前に、にわかに政争の具にされ始めた消費増税——。どちらが正しいのか。
元大蔵事務次官、メガバンク頭取、上場企業社長、全国紙経済部記者ら経済のプロ100人に聞いた。
■財界人は「上げろ」と口を揃える
「中国をはじめとして世界経済の状態が悪く、日本の景気が明るいとは思えない。過去の例を見ても増税が消費を細らせ、そこからの復活に相当な時間を要することは明らか。だから消費税を10%に上げるべきではない。
消費者に与える心理的な影響として、一桁と二桁では相当な違いがあるようにも思われる。現在の社会保障制度や財政赤字の規模から考えて、消費税はいずれ必ず上げなければいけないが、急ぐ理由は見当たらない」(神戸学院大学教授・中野雅至氏)
安倍総理は迷っているはずだ。消費税を10%に上げれば、消費は大きく落ち込む。上げなければ、公約違反でアベノミクスの失敗だと野党に責められる。
だが、そんなことを考えている場合ではないと、ファイナンシャルリサーチ代表の深野康彦氏は言う。
「いまだに個人消費が'14年4月に行われた8%への消費増税の影響を引きずっている。そんな中、10%に引き上げれば、消費はますます低迷。内需が盛り上がらずに景気後退し、不景気に突入する。
消費税率を上げたら、税収が減少するという本末転倒な結果を引き起こしかねない。景気を回復させるためには、逆に一時的にでも5%に下げたほうがいい」
'14年末に消費増税を延期した際と同じロジックで、景気を最優先したほうが結果的に税収増につながり、財政が改善するという考え方だ。
信州大学教授の真壁昭夫氏は、安倍総理は現状では消費税を上げないのではないかと考える。
「昨年11月から景況感が著しく悪化している。個人消費が落ち込む一方、食品価格が上がるなど、庶民の生活が苦しくなっている。円高に振れていることもあって企業業績も目先、悪化しており、従業員の給料も上がらない。それでも増税に踏み切れば、夏の選挙で与党に逆風となる。政権が消費税を上げないことを選択してもおかしくない」
それに対し、消費税を断固として「上げるべき」と答えたのは、大蔵省(現・財務省)元事務次官の薄井信明氏だ。
前回の延期後に安倍政権は、景気が悪化した時には増税を停止する「景気弾力条項」を撤廃した。次は景気が悪くても必ず増税を実行すると、有権者に向けて約束したのだ。薄井氏は安倍総理の約束が反故にされるはずはない、と主張する。
「日本経済はやや停滞気味だが、雇用、企業業績などは高い水準を維持している。世界経済も安定に向かっており、現状からはリーマン・ショック級の重大事態が生じるとは考えられず、再延期すべきではない」
やはり、「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない」という前提だが、3メガバンクの一角、三井住友銀行頭取の國部毅氏はこんな意見だ。
「社会保障の充実のための安定財源の確保、財政に対するマーケットや国際社会からの信認確保などは極めて重要な課題であり、消費税率の引き上げは予定通り実施すべきと考えている」
津賀一宏社長が率いるパナソニックも社としてこう回答を寄せた。
「財政再建と持続可能な社会保障制度の維持のため、消費税を10%に上げるべき。同時に消費税引き上げ前後の激変(前倒し需要とその後の反動減)を緩和する政策や消費喚起策、財政・金融による経済対策が必要」
経団連が消費増税を「予定通りに行うべきだ」(榊原定征会長)と強調するように、財界は消費増税の方向で足並みを揃える構えだ。
■「上げたら地方が壊滅する」
そもそも、現在の日本経済は消費増税を再延期するほど悪くないと分析するのは、元日銀参事で慶応義塾大学商学部教授(国際金融論)の深尾光洋氏である。
「財政赤字を出し続けると、人口が減少する将来世代の負担を増やし続けるこ とになる。景気が比較的良い現在のようなときには、歳出の抑制と併せて、徐々に増税を実施していくべきだ。企業収益はバブル期ピークの1・5倍と高く、求 人倍率で見てもバブル期に匹敵する労働市場の状況から判断すると、景気の現状はむしろ堅調」
日本総合研究所副理事長の湯元健治氏も経済状況が好調だと判断し、増税の再延期に反対する。
「引き上げは短期的には経済に打撃を与え、国民に痛みを強いることは間違いない。しかし、増税延期は、将来世代に大きな負担を先送りすることに他ならない。少子高齢化、人口減少という厳しい状況を考えると、将来的には20%程度までの引き上げが必要になる。'20年代前半に団塊世代が後期高齢者となり、医療費が大膨張することが確実視されるため、できるだけ早い時期に引き上げることが不可欠」
冒頭では、景気浮揚のためには「上げないべき」という意見を紹介したが、別の観点から「上げないべき」と言う人もいる。
「増税の前に、まずは政府と官僚が責任を取るべき」だと主張するのは、政治評論家・浅川博忠氏だ。社会保障のためだから増税は仕方がないというが、ならば、破綻寸前になるまで放置したのは誰なのか。
「消費増税は、政治家と官僚が身を切る改革をすることが条件。議員を1割くらい減らしても、国会は成立する。同様に役人も1割減らす」
また、増税論者の多くは、景気は悪くないというが、それは大企業や都市部に限った話ではないか。地方の中小企業の経営は苦しい。東京商工リサーチ情報本部長の友田信男氏は、そう指摘する。
「企業業績は規模、地域、業種で二極化が進んでいる。特に、消費者に近い卸売業や小売業では、中小企業(資本金1億円以下)の業績改善が遅れている。実質賃金の減少などで個人消費は想定以上に冷え込んでいると見ることができる。消費税率10%への引き上げは消費者を痛め、一段と消費を後退させかねない」
増税派と延期派の意見はまったく異なるが、多くの識者に共通するのが、いずれにしても日本経済の再生が急務だという一点だ。では、そのための処方箋は何か。
人口が減り、国内需要が先細っていく中で、海外からの人材流入やインバウンド需要を喚起することが必要だという。
「まずはデフレからの脱却と、経済を成長軌道に乗せることに注力すべき。アクセル(経済成長)とブレーキ(消費増税)を同時に踏むべきではない。
経済再生には、外国からの人材受け入れを拡大することが重要だ。大相撲のように、外国から才能を受け入れれば、彼らと競って国内の人材のレベルも上がる」(政策工房代表取締役・原英史氏)
また、アベノミクスが当初、掲げていた「3本の矢」のうち、「成長戦略」を徹底して模索するしかないと、多くの識者は口を揃える。経済アナリスト・池田健三郎氏の話。
「アベノミクスでは『民間投資を喚起する成長戦略』が謳われていたが、その前提となる『規制緩和』が実現しないまま、『新3本の矢』に移行してしまった。だが、『新3本の矢』は政策手段ではなく、目標であり、市場の期待を醸成するには至っていない。
農業や医療の分野での大胆な規制緩和の実施や、高齢者への3万円バラマキ給付金をやめて大学の授業料を無料にするなど、若者の将来に向けた教育投資を政府はするべき」
■東京五輪まで再延期せよ
地方の景気は、依然として改善の兆しが見えない。アベノミクスはもっと中小企業に光を当てるべきではないかと、帝京大学経済学部教授・黒崎誠氏は主張する。
「就労人口の70%強は中小企業で働いている。経済再生のためには、彼らの給与を引き上げて個人消費の拡大を図ることが必要。安倍政権は大企業優遇に偏りすぎている」
そんなアベノミクスをサポートし、古巣・財務省の思惑通り消費増税につなげようと画策しているのが、日銀の黒田東彦総裁だ。「異次元の金融緩和」に続けて、今年2月には「マイナス金利」を導入した。クレディ・スイス証券チーフエコノミストの白川浩道氏は、この政策が国民を貯蓄から投資へと動かすきっかけになると評価する。
「民間銀行の預金金利をマイナスにすることを認めるかどうかの政策論議を巻き起こすべき。(貯蓄から投資へと)国民が動かないのであれば、預金金利を強引にマイナスにする。あるいは財政政策としての『貯蓄税』の導入を検討すべき」
ただし、その弊害も別の識者から指摘されている。慶応義塾大学経済学部教授・塩澤修平氏はこう言う。
「投資促進の効果より、『マイナス』という言葉による消費行動への影響のほうが大きく、全体的に見て、経済活動に対し『マイナス』の効果になる可能性が高い」
経済政策を日々取材する新聞記者はどう見ているのか。朝日、読売、日経、毎日、産経、東京、共同、時事、ロイターの新聞、通信各社の記者にアンケートを行った。その結果が上に掲げた円グラフである。
消費増税に関しては、意見がほぼ拮抗した。主な意見を紹介する。
「安倍政権は国内消費が落ち込んでいることを先の消費増税のせいにしているがまったく違う。20~40代の子育て世代は、年金をはじめとする脆弱な社会保障のせいで将来に不安を感じており、老後のための貯蓄に走っている。いち早く増税して、財政規律を確保し、社会保障の基盤を確立することが政権のやるべきこと。そうすれば、景気は浮揚する」(朝日・40代男性)
「将来的に消費税を上げることは必須だが、このタイミングで上げなければ日本経済がすぐに破綻するわけではない。どういう判断が国内世論や国際的な評価に堪えうるかという政治的な判断なので、『べき』論で答えられない」(読売・30代男性)
「消費税引き上げによって、国と地方の税収全体が逆に落ち込みかねない。10%に上げるなら、五輪景気との相殺が可能な'19年4月までの延期が妥当ではないか」(ロイター・30代男性)
■マイナス金利の効果は?
マイナス金利については賛成が3分の1、反対が約半数を占め、判断を保留する声も目立った。
「マイナス金利への対応が準備できていない金融機関への経営圧迫など、弊害がはっきりしている一方、景気刺激や物価上昇を促す効果は不明確。10年もの国債の金利までマイナスになっているが、これらの割高になった国債は日銀が『買いオペ』で吸収することになる。その結果、将来、日銀に損失が発生する可能性が高く、それは結局、国民の税金で穴埋めされる」(毎日・40代男性)
「民間銀行が積極的に貸し出しをすることを想定しているのだろうが、銀行は融資先企業の経営状態を見て判断するわけで、手持ち資金があるからといって、ジャブジャブ貸し出すものではない。政府と日銀が期待したような効果があるとは思えない」(東京・40代男性)
だが、そもそも景気回復を国に頼ってばかりでいいのか。政府や官僚に責任をなすりつける風潮に警鐘を鳴らすのは、岡山商科大学経営学部長・長田貴仁氏である。
「政府がどうのこうのと言う前に、民間企業は『誰にも頼らない』という気概を取り戻し、『稼げるビジネス』を真剣に考案する新産業創出力を高めてもらいたい。ろくな経営もしないで、億単位の報酬を得ている大企業経営者は大いに反省してほしい。日本を救うのは、頼りない官ではなく、たくましい民(民間企業)である。企業が日本経済を引っ張っていくようにならない限り、増税どころではない」
消費税を上げる前にやるべきことはまだまだあるのではないか。今回のアンケートは、安倍政権が推し進めるアベノミクスがどこかチグハグなことを浮かび上がらせた。
消費税は日本経済の形を大きく変える。あなたはどう考えるか。
「週刊現代」2016年4月9日号より
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