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ダブル選政局 二つの真実 首相の勝負時とそのレガシー
http://mainichibooks.com/sundaymainichi/column/2016/04/10/post-776.html
サンデー毎日 2016年4月10日号
倉重篤郎のサンデー時評 連載94
真実は常に二面性を持つ。
この夏に衆参ダブル選挙があるかどうか、もこの例にもれず。
不思議なこと、永田町の中でも政権から遠い人ほどダブルは必定と言い、政権に近づくほどダブルあり得ず、となる。これいかに。
ダブル派の論拠は以下である。
一つは、タイミングだ。アベノミクスはこれからあまりいいことがないだろう。株価も為替も企業収益も求人増も今がピーク。頼みの金融政策は、すでにマイナス金利で袋小路入り。財政出動と言っても1000兆円の赤字を無視はできず。成長戦略も1億総活躍と局面転換したが「保育園落ちた。日本死ね」という厳しい現実の前には夢物語チックになってしまった。
何よりも世界経済が不透明だ。中国は不良債権、設備の過剰処理で当面は成長速度を落とさざるを得ず、そのあおりで他の新興国、資源供給国経済もまた下り坂、米国もいまいちである。日本経済もまた影響を受けざるを得ない。
安倍政権としては、経済が悪くならない段階での選挙に持ち込みたいところである。そこで、5月の伊勢志摩サミットが意味を持ってくる。世界的に金融政策の限界が露呈する中、主催国・日本のイニシアチブでG7が協調して財政出動による経済のテコ入れで合意できれば、政権への求心力は高まり、かつ政策の幅が広がる。その余勢をかったダブル選は乾坤一擲(けんこんいつてき)のチャンスとなる。ちなみに、直近のダブル選は1986年の中曽根康弘政権によるもので、この時も東京サミットが舞台を引き立て自民党が衆参で大勝した。
野党の態勢の整わないうちに勝負をかける、という戦略的なメリットもある。少なくとも前回2014年の衆院選はそうだった。
二つに、大義名分がある。このかつてない好機に憲法改正の必要性と消費税の10%上げ先送りを問う、というのである。確かに、いずれも衆院を解散するに値するテーマだ。改憲は国の基に関わるし、消費税先送りはまたもやではあるが、国民との約束変更である。
安倍氏にとって改憲は、祖父岸信介元首相からの悲願であり、ダブル選効果で参院を発議に必要な与党3分の2体制に近づかせることができる。消費税については、その8%上げがアベノミクスの好循環を阻んだと見ており、もともと10%上げには消極的だった。
野党の大勢はこういった見方をしている。自民党内でも若手、中堅にはダブル説に傾く人が多い。
◇強運を背負って前に出てくる安倍政権 野党は戦略的想像力を
ただ、解散権の行使こそ権力中枢のごく一部の人たちの間で決められることである。衆目の見立てとは別次元で判断されることが多い。そこで、私がアクセスできる複数の中枢氏に聞いてみた。ダブルをやるんですか? 彼らの見解をまとめると以下のようになる。
結論から言うと、改憲、消費増税先送りを争点にしたダブルの可能性はほぼゼロという。まずは、ダブル選を打つ意味がない。ダブルは、参院議員にとってはありがたい。衆院議員の後援会組織が一緒に動いてくれ票の掘り起こしができるからだ。ただ、衆院議員にとってダブルは公明・創価学会票の協力が従前ほど得にくくなる。これは選挙地盤の軟弱な若手にとってはつらく、共産票が反自公候補に回るとなると致命傷となる。
中枢氏によると、12、14年衆院選で自民は取り過ぎており、次の選挙では20、30議席は減る。そうなると、参院に多少良い結果が出ても、肝心の衆院が与党3分の2体制を失うリスクに直面する。一方で、参院単独選挙でも、与野党の彼我の力を考えると、1989年以来約30年ぶりに参院での自民単独過半数回復という偉業は達成できる。
改憲名分もあり得ない。そもそも国会答弁などで改憲に言及するのは、野党からの質問に対し改憲を党是とする自民総裁として正直に答えただけ、であり、とても国民意識がそこまで熟したとは判断していない、という。しかも、本音としては憲法9条以外の、いわゆるお試し改憲には否定的だ。
消費増税先送りも然(しか)り。軽減税率制度まで詰めた以上、政治的に二度も先送りはできない。増税が前提だったはずのアベノミクスの失敗と批判される。そもそも来年4月の10%上げを7月段階で先送りしても経済効果がない、という。
では、いつどういう名分で解散を打つのか。と詰めていくと、年内もあり得ない。参院単独で勝つと必ず揺り戻しが来て衆院で負けるからだ。2016年以降は消費増税の影響もあり当面解散を打ちにくい。解散権を留保し続けることがポスト安倍をめぐる党内政局に向けて大きな意味を持つ、のであり、結果的に解散を打たずに18年9月総裁任期を終えることも十分あり得る、というのだ。衆院選は後継総裁(首相)の手で任期満了の12月までに実施されることになる。
ダブル選をめぐるこの真逆(まぎやく)の見立て、読者諸氏はどう思われるか。好機論は正しい。ただ、中枢氏が嘘(うそ)をついているとも思えない。
一つだけ見えてきたことがある。ダブルは9割方ないだろう。だが、以下の3条件が惑星直列のようにそろった時だけはあり得るのではないか。4月の二つの衆院補選(北海道5区、京都3区)で野党側が2連敗する。サミットが大成功し内閣支持率が一時的に上昇する。そして、7月段階で株価などアベノミクス関連経済指標がなお下降していないことである。
もちろん、そうなる可能性は低い。ただ、安倍政権が強運を背負ってきたことも事実だ。好機と見たら必ずや前に出てくる。争点は、改憲、しかも、9条改正を正面から問うてくることはないのか。衆参両院での過半数獲得もまた政権のレガシー(遺産)となり得るからだ。野党は戦略的想像力を膨らませる局面である。
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