http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/540.html
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何度か書いてきたが、米国支配層は、日本が主要な条項(天皇条項と戦争放棄第9条が中心)を対象とした憲法の改正を望んでいないし黙って見過ごす気もない。
幹部が会食に励み安倍政権とズブズブの関係と非難もされてる大手新聞系がこぞって“憲法改正は民意にあらず”という内容の世論調査結果を報じているのは、憲法改正!と力んで見せている安倍政権に憲法改正を政策化する意志がないことを示唆している。
「≪2016年3月日本テレビ世論調査≫安倍総理の憲法改正:評価する28.3%安保法:支持しない48.9%」
http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/528.html
早々と第9条は改正の対象にはしないと日和ってしまった安倍首相が今なお憲法改正を高々と掲げているのは、コアの安倍支持層に対するリップサービスという側面が濃厚である。(安倍首相自身は改憲が望ましいと考えてはいる)
保守系とされる大手メディアの世論調査までが憲法改正に否定的という内容を打ち出すことで、時にあらずとなり、憲法改正に動かない安倍首相に対する非難の風が和らぐ。
「新安保法制」(戦争法案)・「原発政策」・「沖縄基地問題」などなど、安倍政権は奇妙な立ち回りで対米面従腹背の政策を推し進めていると言える。
※ 関連参照投稿
「「護憲」で本当に勝てるのか:現憲法の核心部分を変える「改憲」はできない(しない)と理解している安倍首相」
http://www.asyura2.com/16/senkyo202/msg/568.html
「左派(共産党・社民党)と親米派が共有する「戦術的護憲論」:共産党・社民党も安倍政権と同類:米国改憲要求説は捏造か錯覚」
http://www.asyura2.com/15/senkyo186/msg/714.html
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緊急事態条項、憲法に必要か
権力集中、立憲主義壊す 東大教授 石川健治氏
安倍晋三首相が「在任中に成し遂げたい」と意欲をにじませる憲法改正。自民党内などで議論が活発なのが、緊急事態条項の創設だ。有事や大災害など緊急時に一時的に内閣に権限を集中したり、国民の権利の一部制限を認めたりする目的だ。国政選挙の期日延期などの案もある。憲法学の石川健治東大教授と井上武史九州大准教授にその是非を聞いた。
――今の憲法には緊急事態に備えた条項がありません。
「明治憲法には天皇の戒厳大権や緊急事態に人権条項を停止する非常大権、法律に代わる議会閉会中の緊急勅令などがあった。現憲法はこれらを単に占領軍の言いなりになって削除したわけではない」
「非常大権の削除と、国会が閉会中でも活動しうる常置委員会の新設を日本側が当初から主張していた。回り回って結実したのが、参院の緊急集会という制度だ。現憲法も緊急事態を知っている。立憲主義を担保できる仕組みはこれしかないとの判断は重い」
――有事や騒乱への備えをあらかじめ明記する必要は。
「外敵が攻めてくるリスクに対しては日米安保条約があり、在日米軍がいて、今でも緊急事態に備えている。外的な緊急事態条項は、安保条約や基地問題の解消を本気で目指して初めて意味を持つ」
「国内的な騒乱状態に対しても、既に自衛隊法に治安出動の制度がある。そのうえ憲法に条項を置くなら、治安出動を超える自衛隊の対内投入を正当化する機能を持たざるを得ない。それは自衛隊が警察機能ではなく、軍隊として治安維持に当たる戒厳を意味する。そんな狙いはないと言うのなら、これも必要ない」
――大災害も心配ですが。
「既に様々な法律がある。我々は東日本大震災を経験した。千年に一度の地震や津波ももはや想定外とは言えない状況なのだから、必要ならさらに法律を整備して対応するのが正しいやり方だ。それをせず憲法改正で済ませようというのはむしろ不真面目だ」
――自民党の改憲草案は緊急時に衆院は解散されないとか、国政選挙の期日を延ばすなどの条項も含んでいます。
「改憲でそこがまず提案されそうだとの観測もあるが、典型的な緊急事態論とはおよそレベルが違う話だろう。災害が起きて被災地で選挙が実施できなくなり、やむなく期日を延ばしたとして、裁判所が違法と判断するのかどうかだ。例外を認める論理が考えられないわけでもない」
「今の衆参両院も、1票の格差が違憲状態で選挙に瑕疵(かし)があった、と最高裁に断じられ、それでも選挙は無効とまでは言えない、との評価を受けて成り立っているではないか。それと大災害で完璧な選挙ができなかった場合とは質的に変わりがない。選挙をやり直す方策だってある。わざわざ改憲しなくてはいけない理由にはならない」
――そもそも緊急事態条項は必要ないとお考えですか。
「緊急や非常、例外といわれる事態は起きうる。人を殺しても、正当防衛や緊急避難なら処罰されないように、例外状況を法はもともと想定している。ただし、その際、法的な評価を下す裁判所という第三者的な審査機関が用意されている。ここが大事だ。これに対して緊急事態条項は、緊急事態での国家の政治部門の行為については、そうした審査を外す効果を持つ」
「今の最高裁は、高度に政治的な国家行為は司法審査の対象から外す統治行為論を採っている。このままで緊急時に政治部門に権限を集中する憲法条項を置けば、完全な無統制状態、専制権力を創ってしまう。第三者的な統制主体を置くことこそ立憲主義であり、政治部門と対等な憲法裁判所の新設の是非など、統制主体への考慮がまず必要だ」
――立憲主義の根幹に関わる論点だということですか。
「立憲主義の城内にトロイの木馬を引き入れるようなもので、よほど慎重な議論が必要だ。一定の例外的事態を想定して憲法に書くと、さらにその先の例外に備えなくてよいのか、と穴を広げる議論を呼びこむ危うい構造もある。例えばドイツではいくつもの類型に条文を分け、議会の審査を絡ませて発動手続きを多段階にするなど、あえて動かしにくい仕組みにしている」
――安倍首相が意欲を示す改憲そのものに反対ですか。
「フラットな立憲主義の土俵が共有されたうえで議論できるなら、緊急事態条項も論じるに値する内容を含む。だが、現状では日本国憲法は押しつけ憲法だ、などと敵意を持つ勢力が政権側で改憲論の原動力になっており、土俵が非立憲側に傾きがちだ。これをまずフラットに戻したい」
「社会に出て発言する以上は、今の土俵のゆがみに自覚的でなければならない。学会のサロンで、学者同士で自由闊達に議論しようという話とは次元が違う。立憲か非立憲か。私自身はこの一点に絞って発言しようと決めている」
いしかわ・けんじ 東大法卒、東京都立大教授を経て現職。立憲デモクラシーの会呼びかけ人。著書に「自由と特権の距離」。54歳。
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平時に議論積み重ねを 九州大准教授 井上武史氏
――パリ同時テロ後のフランスで白熱する改憲論議に学ぼうと説いておられますね。
「仏政府がテロ直後に緊急事態を布告したのは、もともとあった法律による対応だ。1週間後に法改正し、司法官憲の令状によらず昼夜の家宅捜索を認めるとか、移動の自由の制限などで政府権限を強化した。これは今も延長されている。ただ、この改正法には人権侵害との訴えも多い。政府は憲法院から違憲と判断されるリスクも考え、緊急事態法の骨格を憲法に格上げする改憲案も議会に提出した」
「緊急事態は閣議により布告され、政府がとった措置はすぐ議会に伝えること、期間延長には法律が要ることなどを憲法に書きこむ案で幅広い合意に至りつつある。結局、憲法院は改正法を合憲としたので、改憲は不要とも言えるが、議論も冷静さを取り戻してきた。第二院の上院では権力の統制を強める方向で下院案を修正している。緊急事態の対象を狭め、延長できる期間を短くした。人身の自由を守る司法の権限も明記した」
――日本の緊急事態論議で教訓にすべき論点も多いと。
「まず緊急事態下で立法や、まして改憲に取り組むのは望ましくない。テロ直後の国民感情が高ぶった状況で、法改正も改憲案も慌てて出すはめになった面がある。2008年の憲法大改正の際に緊急事態条項の議論もあったので、全く唐突だったわけではないが、やはり平時に議論を積み重ねておくのが大事だ」
「フランスにはもともと緊急事態法があり、政府が動ける限界はこのあたりで、その先に踏み込むなら改憲という流れで具体論が進んだ。法律で何ができる、できないの仕分けが先で、憲法論議は出口だ。日本はいきなり憲法に書くべきか否かの論争になりがちなのが妙だ。初めから改憲ありきも説得力がないし、頭から改憲など必要ないと決めつける議論も誠実ではない」
――どんな事態を想定するかでも議論は変わりますね。
「20年の東京五輪・パラリンピックを見据えれば、テロ対策でどんな法整備が必要かは議論すべきだと思う。フランス並みの政府権限の拡大を考えるなら、日本で法改正だけで全てをやれるとはとても思えない。一方、災害対策では、大震災の経験を踏まえ、改憲で何ができるようになるかを具体的に議論すべきだ」
――自民党改憲草案が示した緊急事態条項への評価は。
「多くの事項を具体的には法律で定める、と規定しながら、その原案を示していない点は無責任だ。これでは議論が進まない。緊急事態下で、法律と同一の効力を持つ政令を内閣が制定できるとした点も全く良くない。これでは国会の否定だ。政府を統制するために法律があるのに、それ自体を政府が創れるのでは独裁と言われても仕方がない」
「ただ、これらがダメだからすべてダメという議論はすべきでない。迅速な立法が必要なら、フランスのように、政府の要請を受けて国会が優先的に審議する規定を置くなどの手もある。首相が閣議を経て緊急事態を布告する点、それに事前または事後の国会承認を要求する点、緊急事態で衆院解散を禁止する点などは仏改憲案と比べて遜色なく、仕組みとして悪くはない」
――自民党案は司法の関与のあり方に触れていません。
「緊急事態への対応で政府がとった行為も、当然、司法審査の対象となる。執行停止などの救済手続きも取りうるはずで、そこはあえて書かなくても良いと考えたのではないか。人権侵害に関しては、政府の高度に政治的な行為は司法審査の対象外だとする統治行為論は当てはまらない」
――立憲主義の危機を訴える憲法学者が目立ちます。
「立憲主義は憲法の特徴を測る時に使う概念だ。権力分立と人権保障がきっちり入っていれば、立憲主義的な憲法と評価する。ただ、法律や政府の行為となると『憲法に反する』かどうかは議論できるが、『立憲主義に反する』と言っても法的に意味がなく、外国語に訳せない。どうもマジックワードになっている」
「集団的自衛権論議も緻密な法律論より政治闘争になっていないか。安倍晋三首相の手法が横暴だと言うなら、憲法が統治者の行為を統制しきれていないのでは、と憲法の不備を検証するのが立憲主義の本来の問いのはずだ。例えば、論争のある法律を素早く審査する憲法裁判所を創設する、内閣法制局の独立性を高めるなど建設的な改革案を示すのが憲法学の使命だろう」
いのうえ・たけし 京大院修、岡山大准教授を経て現職。著書に「結社の自由の法理」。統治機構やフランス憲法も研究。38歳。
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<聞き手から>「お試し改憲」は許されぬ
緊急事態が起きても政治権力が法の支配を逸脱しないよう、あらかじめ憲法に書き込んで権力の行使を枠づけるべきか。それとも、例外がさらなる例外を呼びかねない危うさを警戒し、憲法に取り込むのはよほど慎重にすべきか。どちらが立憲主義にかなうかで憲法学にも両論がある。
政治はある政策目標を設定し、その達成にどんな手段が必要かの現実から出発して権力を使う。それを違法なのか合法なのか、という物差しで測るのが法治国家の論理だ。
「法と政治」の関係は根源的に緊張をはらむ。それがのぞく一場面が緊急事態だ。「お試し改憲」では到底済まされない詰めた議論を訴える点は論者2人に共通する。
温度差が大きいのは憲法論議が置かれた時代状況をどう考えるかだ。井上氏は眼前の政治情勢には距離を置き、専門家の立場から是々非々で統治機構改革の立論を試みる。石川氏には純粋に学問的な論争に徹したくとも今の政治環境がそれを許さない、との危機感がにじむ。
(編集委員 清水真人)
[日経新聞3月27日朝刊P.11]
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