http://www.asyura2.com/16/senkyo203/msg/506.html
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トランプは在日米軍撤退や日本核武装容認論など、次々と過激な主張を打ち出している。しかし、これらは決して真新しいものではない。アメリカのリアリストと呼ばれる人たちが昔から唱えていたものである。
トランプがここまで支持を集めた以上、たとえトランプが大統領にならなくとも、次の大統領も「トランプ的な政策」をとらざるを得ない。我々はその時に備え、アメリカのリアリストの主張を知る必要がある。
ここでは、リアリスト系国際政治学者クリストファー・レインの翻訳を行った、地政学者の奥山真司氏のインタビュー記事を紹介したい。
月刊日本編集部ブログ「日米安保破棄に備えよ」より
http://gekkan-nippon.com/?p=8735
<オフショア・バランシングは一九世紀英国外交の再来だ>
―― クリストファー・レインはアメリカの外交戦略がどうあるべきだと主張しているのか。
【奥山】 レインらのリアリストが手本としているのが、一九世紀のイギリスの外交戦略だ。当時イギリスは覇権国だったが、自国に対して脅威になる国の出現を防ぐために、ヨーロッパ大陸に対して一歩引いた立場に立ち、巧みな勢力均衡(バランス・オブ・パワー)外交を展開した。ある国を支援して別の国とぶつけさせ、相討ちさせることによって、両国の力を相殺させたり、関係を分断したりするという政策だ。
レインの提唱するオフショア・バランシングとは、「イギリスという島国とヨーロッパという大陸」という関係を、「アメリカという島国とユーラシアという大陸」に置き換えて、イギリス流の勢力均衡策を採用しようとするものだ。自らは「沖合」(オフショア)から、バランサーとして立ち回り、ユーラシア大陸の勢力均衡を図るということだ。
大国の勢力拡大に対して自ら直接対処するのではなく、それを間接的に他国にやらせる。そして最後の段階で、自ら積極的に介入するのではなく、乞われて出て行く方が望ましいと考える。この戦略のキーワードは、責任(バック)を転嫁(パス)すること、つまり「バック・パッシング」である。かつてイギリスは、ナポレオン率いるフランスがヨーロッパ大陸で暴れていた一八世紀後半から一九世紀前半、ヨーロッパ大陸内のバランスがフランス側に大きく傾きつつあることを懸念したが、自ら出ていくのではなく、プロシアやロシアやオーストリアなどの周辺の大国に責任転嫁し、対処させようとした。
―― 外交理念やイデオロギーよりも国益を優先させる冷徹なリアリズムだ。
【奥山】 外交理念に基づいて特定の国と永続的な友好関係を結んだり、特定の国を敵視したりするのではなく、あくまでも国益に基づいて国家関係を規定としようとする。極端に言えば、すべての国は悪であるというところから出発するのだ。
<リアリストは日米安保条約破棄を迫る>
―― オフショア・バランシングが採用されると、アジアでは何が起きるのか。
【奥山】 中国の台頭に対して、アメリカは責任を負わず、アジア各国に責任を持たせるという方向に進む。レインは、台湾、尖閣諸島、南シナ海などは、中国や日本にとっては重要かもしれないが、アメリカにとっては本源的な戦略的価値はないと言いきっている。ジョージ・ワシントン大学のチャールズ・グレイザーは、一層はっきりと、アメリカは台湾に対するコミットメントを取り下げることを検討すべきだと主張している。アメリカが圧倒的な軍事力を誇っていた時代は過ぎ去り、いまや中国はアメリカに対する核報復力を手にした。こうした状況で、台湾や日本を守る際の潜在的なリスクが増大しているのである。
そこで、日本はアメリカに頼るのをやめて、自らの力で中国に対抗しろと主張することになる。具体的には日米安保条約を破棄し、日本の自主核武装を支援すべきだとの主張となる。
海外の紛争にアメリカは巻き込まれるべきではないという主張がリアリストの間で高まっているのだ。キッシンジャーとならぶ国際政治学の大御所ズビグニエフ・ブレジンスキーもまた、近著『Strategic Vision』において、一九世紀のイギリスの戦略に学ぶべきだと主張している。(以下略)
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