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2016年03月22日
「アメリカがクシャミをすると、日本は風邪を引く」こんな揶揄的言葉に真実味があったのは、だいぶ昔の話だとばかり思っていたが、小沢・鳩山内閣はアメリカ主導と霞が関の小細工に脆くも崩れ、官僚支配政権となった民主党は、国民の選択を裏切った。鳩山の後から出てきた民主党の菅や野田内閣は、霞が関官僚の操り人形となり、国民に恥を晒し、民主党と云う政党の力を削ぐばかりか、遂には今月27日に消滅すると云うのだから、お笑いだ。ところが、民主党を消滅にまで至らせた、菅直人・野田佳彦という二人のクズがのうのうと党内で生きているのだから、事実は小説よりも奇なりで、国民から大きな支持を得ようと云うのは、笑止な沙汰だ。
性悪女が、同じ街だが、お店が違うと云うことで、“民江”から“進子”と名前を変え、平気で店に出ているようなものだから、福田和子も吃驚だろう。そうは云うものの、多少の見込みはある。無論、その見込みに、民主党本体の実力が反映されていると云うことではない。衆院京都3区では、自民党の擁立見送りになり、民主vs共産の選挙構図さえ見えていたのに、共産が隠忍自重(自主投票)したことで救われると云う、あいも変わらず、腐った儘だ。見込みを齎したのは、共産・生活・社民+“怒れる国民”の協力が見込めるからでしかない。問題は、前原や細野や野田が含まれる“進子(民進党)”を有権者が見過ごしてくれるかどうかと云う問題だろう。
個人的には、「増税する前に、シロアリ退治だ」と散々っぱら言いつのっておきながら、消費増税解散で、みすみす政権を自民党に売ってしまった野田佳彦への有権者の怒りが消えているかどうか、判定が難しい。野田佳彦は、民進党の躍進を望むのであれば、自ら「無所属になる」と宣言するくらいの度量が必要だが、財務省の永遠の諜報員として、活躍を期待されているのかもしれない。永遠の衆議院議席確保と引き換えに?それはさて置き、菅直人が唐突に持ちだしたTPPも、奇妙な形で我が国に出現した。それもこれも、アメリカの差配乃至は外務・経産官僚の忖度政治だろうが、立役者であった、甘利前大臣のUR疑惑がケチのツケ初めかどうか別にして、アメリカ大統領選の成り行きでも「TPP」は成立不能の様相を呈している。以下は、その件に関する硬派ジャーナリスト山田厚史氏のTPP関連コラムだ。二本連続で読んでいただきたい。
≪ 米大統領選で自壊し始めた「強者のためのTPP」
環太平洋経済連携協定(TPP)が、各国の批准を前に、失速し始めた。「21世紀の経済ルールを描く」と主導してきたアメリカで鮮明になっている。オバマ大統領は残る任期で批准を目指すというが、肝心のTPP実施法案の成立は絶望視されている。
大統領候補の指名レースで、「TPP賛成」だった共和党のルビオ候補が地元フロリダで負け、撤退を表明。TPPを担ぐ候補は1人もいなくなった。 トップを走るトランプ候補は「完全に破滅的な合意だ」と歯牙にもかけない。民主党ではオバマ政権でヒラリー・クリントン候補が「反対」を表明。追撃するサンダース候補はTPP批判の急先鋒だ。
TPPは2月4日に各国が署名した。この日を起点に、2年以内に加盟国が国内手続きを終えれば、その60日後から発効する。手続きが終わらない国があっても、6ヵ国以上が手続きを終え、それらの国のGDPを足し合わせ全体の85%を超えれば発効となる。
ということは経済規模が大きい米国と日本の手続き完了が不可欠なのだ。どちらかが批准にしくじればTPPは成立しない。
■米国のグローバル資本に ハイジャックされたTPP
「TPPはアメリカの国益につながる戦略的経済連携」と日本では理解されてきた。シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリという「4つの小国」が自国にない産業を補い合う経済連携だったTPPにアメリカが目をつけ、「アジア太平洋市場」を自分のルールで作ろうとしたのがTPPだ。 「ここでTPPは変質した。投資と金融サービスが新たに盛り込まれ、グローバル資本によるルール作りが前面に出るようになった」
協定文書の分析をしている和田聖仁弁護士は指摘する。
小国連合だったTPPはアメリカにハイジャックされ、針路が変わった。操縦桿を握るのはアメリカ発のグローバル資本である。 「米国でTPP交渉を担当するのは通商代表部(USTR)。ここは商務弁護士の巣窟でアメリカに都合のいいルール作って世界で覇権を目指す戦略的部門です」 日本の通商関係者はいう。 TPP交渉は分野が広く、専門性が要求される。USTRの職員だけではカバーできない。企業や業界のロビーストや弁護士が加わって協定の骨格作りが進められた、という。
協定書は英文で5500ページある。運用を左右する付属文書を合わせるとA4版用紙で数10センチになる膨大な協定だ。
交渉は戦争と同じで、総力戦になった。軍隊に当たるのが交渉スタッフだ。アメリカには百戦錬磨の弁護士がうなるほどいる。しかも英語による交渉。「戦闘能力」で小国は歯が立たない。
2国間協議が並行して行われ、TPPは安全保障や援助も含めた総合的外交力が交渉に反映する。アメリカが決めた骨格に各国の事情をどこまで反映するかの交渉となった。
■大統領選で火がついた 強者支配の象徴・TPPへの反発
アメリカの都合が優先されるTPPなのに、なぜアメリカで評判が悪いのか。ここにTPPの本質が滲み出ている。 「アメリカ」と一言で語られるところに盲点がある。アメリカの誰が利益を得るか。アメリカ内部でも利害は錯綜している。
オバマ政権で国務長官を務め「賛成」のはずだったヒラリーが「反対」に回った最大の理由は、労働組合がTPPに反対しているからだ。自由貿易は外 国製品の流入を招き労働者から職場を奪う。1980年代に日米摩擦が吹き荒れたころと同じ論理が持ち出された。当時「雇用の敵」は日本製品だった。今は中 国、韓国などアジアからの輸入が心配されている。
もう一つ異なる変化が起きている。米国資本のグローバル化である。
自動車ビッグ3の筆頭ゼネラルモーターズ(GM)が存亡の危機にさらされた80年代は、米国の企業と労働者には日本メーカーという「共通の敵」がいた。今は違う。グローバル化した資本は、本国で勝てない、と見れば外国に投資して生産を行う。 資本は逃げることができる。労働者は取り残され、雇用を失う。グローバル化は、資本には都合がいいが、ローカルで生きるしかない労働者には迷惑であ る。民主党は労組を支持基盤にしている。不満を吸収し支持を広げたのがサンダースだ。「TPPは1%の強者が世界を支配する仕組み作りだ」と訴えた。
アメリカは訴訟社会だ。高給を食むローファーム(企業弁護士事務所)の弁護士はアメリカのエスタブリッシュメントの象徴でもある。彼らはクライアント企業の要請を受け「TPPのルール作り」の素案を書く。
アメリカ政府はグローバル資本の利益を推し進める舞台装置になっている。
商売はうまくても民間企業のできることには限界がある。グーグルやアマゾンが強くても自力で他国の法律や制度を変えることはできない。外交や政府の出番だ。米国の政治力がなければ他国の市場をこじ開けることはできない。
アメリカの参加で、投資と金融サービスがTPPの主題となった。背景には、成長市場で儲けを狙うグローバル資本がいる。この構造は、本連載バックナンバー「TPP幻想の崩壊が始まった。交渉停滞、困るのは誰か?」などで触れているので端折るが、グローバル資本が先導するTPPという構造は、混戦模様の大統領選挙で炙り出されたのである。
政界で大きな顔をしている政治家が、社会の一握りでしかない強者と結びついていることに有権者は反発し、TPP論議に火がついた。
■政治をカネで買える国・アメリカで 有権者の反乱が起きている
米国はカネで政策が買える国である。政治献金は政治家に直接手渡せないが、日本の政治資金団体のような組織を介せば、「無制限」に政治家は献金を 受けることができる。「スーパーPAC」と呼ばれる政治献金の自由化が2010年から始まった。この制度で、業界団体は堂々と政治家の買収を行うように なった。オバマ大統領が菅直人首相(当時)にTPP参加を求めたのは2010年だった。
米国議会では民主党も共和党も評決に党議拘束はない。議員が自分の判断で賛否を決める。そこで暗躍するのがロビイスト。選挙にはカネがかかるのは いずこも同じ。スーパーPACを媒介して「政策とカネのバーター」が行われる。銃乱射が社会問題になっても、銃規制ができないことが物語るように「政治とカネ」は米国民主主義の恥部となっている。 大統領選挙の裏テーマは「金持ちに支配される政治」への反乱だ。
共和党のトランプ氏もサンダース氏も企業献金を受けていない。これまでの大統領選挙では、産業界やユダヤ人団体など強者からの支援なしに出馬できなかった。資産家であるトランプ氏、市民から小口の献金を集めるサンダース候補の登場が、タブーを破る論戦を生んだ。
製薬会社が強者の象徴として矢面に立っている。「国民は満足な医療を受けられないのに、製薬会社は高価な薬品を売りつけ大儲けしている」と製薬会 社はやり玉に挙がった。ファイザーを始めとする米国の製薬業界は豊富な資金力を使い、TPPを動かす有力ロビー団体だ。交渉の最終局面でも知的所有権問題 で、新薬特許の有効期限を長期化するよう圧力をかけ続けた。
今やTPPは「既存政治の象徴」になった。共和党で本命視されたルビオ候補は「TPP賛成」で票を減らしている。民主党はもともとTPPに懐疑的だったが、共和党は賛成だった。ところが選挙戦で評判の悪いTPPを前面に掲げることができなくなった。
オバマ大統領は、TPP実施法案で共和党に協力を求めたが、上院の実力者・マコーネル共和党院内総務は、大統領選挙前に法案を議会に出すことに反対した。
態度を決めかねていた末に「反対」を表明したヒラリー候補は苦しい。「無理して反対と言っているだけだ」とサンダース候補に攻められ「反対」を強調するようになった。
米国では政治家は発言への責任を問われる。当選して大統領になっても簡単に手のひらを返すことはできないだろう。足元の民主党が「TPP反対」を鮮明にしている。
国際社会で力が衰えたアメリカは、国内では政治家の在り方が問われ始めた。「ワシントン・コンセンサス」と呼ばれていた政権とグローバル資本の特殊な関係に有権者が疑問を抱き始めた。「ウォール街を占拠しよう」という運動はその一端だろう。
既存の政治が自分たちの方を向いていないと気づき始めた民衆が、TPPの胡散臭さにも気づいたのである。
■TPPは「成長戦略の要」とする日本 何を得て何を失ったのかの検証が重要だ
日本はどうか。政府は4月1日、TPP関連法案を閣議で決定した。4月中に国会で審議し、法案を通す構えだ。米国で「反市民的」と見られ始めたTPPが日本では、「成長戦略の要」として吹聴されている。 秘密交渉ですべての資料が非公開とされ、協定全文が「公表」されたものの膨大かつ専門的で読めるものではない。議員や専門家が調べても、細部は分 かっても全貌は掴みづらい。政府は都合よい試算を示すだけで、全体像を分かりやすく国民に示す気はない。国民や国会の無理解をいいことに形式的な審議で 国会を通してしまおう、という魂胆だ。
メディアの動きも鈍い。情報や解説を役所に依存している。TPPで得をするのは誰で、損をするのは誰か。農業の問題はいろいろ議論されたが、農業はTPPの中心テーマではない。
誰が得をするのか、を探るなら、TPPを推進したのは誰かを見れば分かることだ。
米国の「TPP交渉推進企業連合」に参加するグローバル企業が旗頭である。これらの企業が何を求め、どれだけ実現されたのか。その結果、日本でどんな変化が起こるのか。将来に向けていかなる布石が打たれたか。
日本に限って言えば、米国の年次改革要望書に沿った市場開放要求がTPPの骨格になっている。ではその見返りに日本は何を取ったのか。防戦を強い られ、大幅に譲歩した農業分野の陰で、日本は何を失ったのか。その検証が必要だ。米国と同じように、日本のグローバル企業は途上国で活動の自由を広げただろう。しかしアメリカ市場では乗用車の関税撤廃が30年後になったように、抑え込まれた分野は少なくない。
政府がやりたがらないなら、国会とメディアの出番だが、一部を除いて無気力さは目を覆うばかりだ。このことは改めて書く。
アメリカでは、強者に丸め込まれる政治に有権権者の怒りが爆発した。TPPまで問題にされた。「21世紀の経済ルール」というもっともらしい表書きの裏に「強者による市場支配」が潜んでいることに市民が気づき始めた。日本はまだそこに届いていない。
≫(ダイアモンドONLINE:山田厚史の「世界かわら版」)
≪ TPP幻想の崩壊が始まった 交渉停滞、困るのは誰か?
シンガポールで行われていたTPP交渉閣僚会議が、次回会合の日程さえ決められないまま閉会した。昨年末に「大筋合意」するはずだった交渉は、いよ いよ漂流しそうな気配である。新聞は、「長引けば経済政策に影」(朝日新聞)などと書いている。「交渉の停滞=困ったこと」という捉え方だ。
このマインドセットが、誤っている。TPPは農業交渉ではない。その他の分野で、何が決まったのか。どの国が、誰のために、どんな主張をしている のか。説明も報道もない。中身さえ分からない協定は疑ってかかるのがメディアの仕事である。交渉停滞は大いに結構。TPPとは何か、誰が得し、損するのは誰か。じっくり考えよう。
■熱心な記者ほど「同調思考」にはまる
私も記者クラブで仕事をしていたから、分かる。経験が浅く、熱心な記者ほど、「同調思考」にはまる。TPPでいえば、取材記者の頭の中は、交渉担 当者や、後ろから指示を出す官僚などと波長が重なってくる。記者と官僚(あるいは政治家)とは対等ではない。権力者は情報を持っている。記者は教えてもらわなければ仕事にならない。TPPは「秘密交渉」(たいした秘密ではないが)なので、官僚は「守秘義務」を盾に、口を噤(つぐ)む。「そこを何とか」とにじり寄り、「迷惑かけないから」と相手の歓心を買ってちょっぴり話をしてもらう。当然、権力側に都合いい情報しか出てこない。
秘密交渉なのに、交渉24分野の進展状況や、合意の一部が報道されている。政府に都合いい情報を並べるとTPPとはこんな姿です、ということだ。
メディアは、中身が分からないから、交渉のスケジュールや、自民党内の関心事項、大臣の談話などでお茶を濁す。一方で声の大きい団体の反対論を紹介する。その結果、TPPはあたかも関税交渉で、農産品以外は大した問題ではないような刷り込みを世間に与えてきた。 「国際的な貿易のルール作りは大事なことだ。しかし、農業団体がいうこともよく分かる。上手く調整できないものか」とか「日本は貿易立国だから自 由貿易促進は国益だ。農家は大変かもしれないが、農業も国際競争に曝されることは覚悟しなければ」などという世論が形成されつつある。
メディアの論調もこの域を出ていない。 だが「TPPが築こうとする国際的な貿易のルール作り」とはどんなものか。そのルールが出来ると、どんないいことがあるのか。
交渉内容の全体像は明らかにされていないが、公表されている範囲で考えれば
@関税を限りなくゼロにする
A知的財産権を持つ者に高額の特許料や著作権を認める
B国有企業の優遇は認めない
C政府や自治体の事業を外国企業に無条件で解放する
D外資企業が不利になる制度は廃止する
E国内の法制度をTPP基準に合わせる
F不当な扱いを受けた外国企業は政府を訴えることができる
こんなところだろう。一言でいえば、地球規模の規制緩和だ。強い企業が思い切りビジネスできる環境を作ろう、という試みだ。
企業は競争によって強くなる。劣るものは市場から退場する。その新陳代謝で、世界は成長する、という思想が背景にある。一理ある考えだが、力が拮抗する者の競争は切磋琢磨につながるが、大きな力の差があると、弱者は根こそぎ奪われる。
■米国の狙いはアジアでの経済覇権
TPPはもともと、持ち味が違う4ヵ国、シンガポール(運輸、化学)、ブルネイ(資源)、ニュージーランド(農業)、チリ(鉱物)の集まりだった。そこに米国が加わりアジア太平洋の経済圏を目指したところから変質した。 米国という強い経済が、アジアで経済覇権を握る足がかりとなった。
みすみす米国企業が勝つTPPに、なぜアジアや中南米の途上国が加わるのか。
米国の強みである「総合的な外交力」の成果である。日本だって断われなかった。米国には強大な軍事力があり、世界の保安官としての役割をになって いる。国連、IMF、世銀など国際機関を牛耳り、軍隊と金融を握り、豊穣な国内市場をかかえている。米国を敵に回すと国内政局での厄介なことになる。思い 出して見たらいい。日本で最初にTPPに同調したのは民主党の菅直人首相だ。不安定な政権を維持するために米国との摩擦を避けた。 ベトナムやマレーシア、アルゼンチンなどは、対中国との関係や軍事・資金で世話になり、米国の意向を無視できない、という事情がある。
G2時代と言われるように、米国は中国の巨大化を意識している。中国には13億人がいる。遠からず経済規模で中国に抜かれる。アジア太平洋に経済圏を広げ、ここで作ったルールを国際標準にすることで 、やがて中国を米国のルールに巻き込み、米国企業が自由に羽ばたける市場にする。
日本のTPP担当者は言う。
「米国のTPP戦略は明白です。中国が強くならないうちに米国流の経済ルールを作ること。勝敗はルールで決まるから」
日本政府の立場を一言でいえば、 「日本には強い産業があるから、世界規模の規制緩和は賛成。だが、農産物市場を開放すると地域経済に激震が走る。政治的にも都合が悪い。自動車や保険で米国の要求を飲み、農業は形だけの関税撤廃でなんとかまとめよう」 というものだ。
交渉を担当する経産省と財界は、その線で合意している。だから、米国が自動車関税を20年継続、と無茶を言っても飲んだ。アジアで儲ければいい、と思っている。
このほどホンダがメキシコで新工場を稼働させた。日本から米国に輸出すれば2.5%の関税がかかるがメキシコからならゼロ。グローバル企業は、対応できる。日本の産業界大手は基本的にアメリカと一緒だ。
■「目立った成果」を早急に求めるオバマ政権
米国は国をあげてTPPに賛成か、というとそんなことはない。米国は強い産業ばかりではないからだ。日米交渉で明らかなように自動車業界は関税撤廃に反対している。オバマ政権の足元で、議会の民主党議員が反対している。 「TPPは弱者切り捨てだ」という声が米国でも強まっている。オバマは、年頭教書で「格差との戦い」を強調した。ウォール街が占拠されたように米国では「1%の強者が99%を支配することの不当」が叫ばれている。 ホワイトハウスに働きかけているのは、多国籍企業で構成するTPP推進企業連合である。薬品の特許期間を長くしろと主張をするファイザー、コン ピュータソフトの著作権を主張するマイクロソフト、日本に攻勢をかけている米国保険会社協会、金融ビジネスの拡大を目指すシティバンクなど、そうそうたる 企業が名を連ねている。米国の政党は党議拘束がないので、政治資金が豊富なビッグビジネスの攻勢に弱い。グローバル企業に雇われたロビーストがTPP推進 をオバマ政権に振り付けたのだろう。その一方で「反グルーバリズム」の潮流も増している。
資金力ではTPP推進派が有利でも、格差社会の敗者は頭数で上回る。11月には議会の中間選挙が行われる。上院議員の3分の1、下院議員は全員が改選される選挙でTPPが争点になれば、一波乱あるだろう。
それを見越してオバマ政権は、「目立った成果」を早急に求めている。その矛先の一つが日本に向かっているのだ。オバマ政権は、少なくとも牛肉・豚肉の関税を限りなくゼロに引き下げたい。小麦やコメも同様である。目に見える成果が必要なのだ。
■悲劇か、それともチャンスか
安倍政権は甘かった。昨年秋にバイデン副大統領が来て、「関税ゼロ」の要求は建前でなく、本音だと知った。
日本は、重要5品目のコメ、ムギ、肉、乳製品、砂糖で関税表に載っている586品目の中で、あまり重要でない品目を選んで形だけの関税撤廃で凌ごうとしていた。役人流の判断なら「日本は聖域に踏み込んで身を切った」となり、農協の非難を浴びても、実質的には本丸は護(まも)った、という形を作りた かった。
そんな芝居はオバマ政権には通じなかった。
米側の強行姿勢を知って甘利明TPP担当相は「ワシントンに行かなければよかった」悔やんだ、というが、見方が甘かったというしかない。
というより日米に互いを理解するパイプがなく、米国の事情がわからなかった。 底流には安倍晋三首相の登場がある。支持勢力の期待に沿って国粋的な言動を繰り返す。靖国参拝問題では「失望」と米政府が表明するほど険悪な状況の中で、TPP交渉が大詰めを迎えてしまった。これを悲劇と見るか、チャンスとみるかは、立場によって違う。
私は、国際的な通商ルールを創ることは大事なことと思う。ただ、どんなルールを作るかが問題なのだ。1%の強者を喜ばすルールであってはならない。地域の文化や特性を大事にする配慮も必要だ。大事なことは公開の原則に立ち、多くの立場の人が参加する民主的な話し合いだ。
そんなことをしていたら決まらない、というかもしれないが、合意形成への努力が互いを知ることに繋がる。急ぐ必要はない。
日本のグローバル企業はTPP推進だが、大企業の利益=国益という考えも再検討すべきだろう。21世紀になって企業利益が雇用や賃金に連動しなくなった。民主主義になっても、カネと情報と人脈を持つ強者が政府を動かし、自分たちに有利な政策を進めているのは現実である。
官僚もグローバル企業の幹部も、それぞれ善良な人たちだが、所属する組織の都合や利益で動く。その限りでは正しい判断でも、全体の流れの中では誰かを痛めつけている。TPPはそうした個別の利益を積み上げた、地球規模の強者支配の道具になりかねない。
TPPが秘密協議になっているのは、公開したら交渉が瓦解する、という事情があるからだ。人々が気付かないうちにサッサと決めてしまおう、というのが推進側の事情だ。立ち止まってもう一度、TPPとは 何か、考えよう。
≫(ダイアモンドONLINE:山田厚史の「世界かわら版」)
正直、TPPのとん挫は、日本社会全体には良い傾向だと云えるだろう。農業分野の問題などは、些末な話で、本質的狙いは「知財の独占」が主力のテーマだったろうから、医薬品関連だけでも、充分に救われたと言えるだろう。また、グローバリズム企業(資本)の貪欲に対するアンチテーゼが、本家の足元で大きなウネリになっていることは心強い。トランプが大統領になった場合は当然だが、クリントンが就任しても、国民への掌返しが容易ではないアメリカにおいては、とん挫の可能性の方が高いだろう。政権公約をコロコロ変えても、許される民主国家は日本くらいのもので、他の国なら、政変になる。またまた、世界の潮流やアメリカの潮流で、日本は救われることになるのかもしれない。
安倍政権は、TPP関連法案を閣議で決定した。4月中に国会で審議し、法案を通すつもりのようだが、アメリカ大統領選を眺めていれば、戦意喪失になっても不思議ではないのが、現状なのだが、果たして、独り興奮状態で、TPP法案を通過させるかもしれない。安倍政権なら、闇雲にやってしまいそうだ。ただ、甘利問題に触れずにTPP法案通過は厳しいので、W選等々が頭にあれば、モラトリアムにする可能性も残される。ただ、政府は、TPPの経済効果の試算をまとめ、貿易や投資でGDPを約14兆円押し上げる効果があると嘘をつき、損害軽微と云う試算を出している。GDP600兆円の話もまだ生きているので引くに引けないだろう。また、アメリカに逆らう気もないので、阿呆のような立場に取り残されても、実行すると見るのが順当だ。
何とか、一度くらいは、「日本による、世界のための、情報発信」そう云う歴史を作ってみたいものだが、安倍政権レベルだと、文化の日本回帰を明治維新に持って行くか、戦前に持って行くか、国家神道に傾注するかがオチで、地域の特性を生かすことに尽力した藩と云う地域共同体に目を向ける知的レベルはないだろう。民進党でも怪しいし、現状の日本人の「空気」では、まだまだ、無理な領域なのだろう。日本を文化大国として、売り出す力は、日本と云う国にも、日本人にも潜在的に存在する。残念なことは、それを引き出す、何ものもないことだ。やはり、どこまで行っても「茹で蛙」の世界から抜け出せそうもない。
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