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2016年03月17日 (木) 午前0:00〜[NHK]
時論公論 「賃上げ減速 経済への影響は?」
今井 純子 解説委員
3月16日は、自動車や電機など、大企業の春闘の集中回答日でした。多くの企業で、なんとか、3年連続の賃金引き上げは実現しました。ですが、その水準は、去年を下回りました。賃金引き上げが、景気回復に向けた「カギ」と言われている中、この結果は経済にどのような影響を与えるのでしょうか。
【春闘の結果】
まず、主な企業の結果です。
(ベア減少)
各社とも、年齢や働いている年数に応じて、賃金が上がる仕組みの定期昇給は確保して、その上で、基本給を引き上げるベースアップ=いわゆるベアの引き上げ分として、
▼ 例えば、トヨタが、平均で一か月1500円。日産は3000円。
▼ 電機の主な5社が1500円と、
いずれも、3年連続のベアを確保しました。ですが、その上げ幅をみてみますと、去年より低く、また、ベアが復活したおととしより低い、上げ幅となりました。
(要求より大幅低水準)
▼ また、2年に1度の交渉となる鉄鋼4社は、今後2年で、1500円と1000円。2年前よりは高い水準でしたが、それぞれ4000円とした要求額は大きく下回りました。
(そもそも、ベア断念の動きも・・)
▼ さらに、去年ベアを実施したメガバンクや生命保険では、マイナス金利が業績に悪影響を与えかねないとして、そもそも、ベアの要求を見送る動きも相次ぎました。
(ベア続伸の企業は一部にとどまる)
中には、
▼ キリンビールが15年ぶりのベア実施を決めたほか
▼ 全日空や大林組など、去年を上回るベアを決めた企業もありましたが、一部にとどまりました。
【春闘の評価】
(焦点)
今年の春闘は、勢いが弱まっている日本経済を再び回復軌道に乗せる「カギ」として、注目されてきました。
中国経済の低迷に加えて、年明け以降、世界的な金融市場の混乱が続き、円高が進みました。消費も低迷し、日本経済は、去年の10月から12月はマイナス成長に陥りました。
一方、大企業は、業績拡大の勢いが弱まっていると言っても、今年度も、全体で、過去最高益の水準です。企業が抱える現金預金も、250兆円近くに達しています。
このため、消費を増やし、デフレ脱却・経済再生の勢いを取り戻すためには、3年連続で、しかも、去年を上回る賃金引き上げが必要だとして、今年は、安倍総理大臣に加えて、日銀の黒田総裁も、強く、賃金引き上げを促してきました。
(評価)
では、これまでの結果をどうみたらいいのでしょうか。
大企業の多くは、なんとか、3年連続で、ベア=基本給の底上げは実現できました。
逆風が吹き始めている中、賃金引き上げの流れを途切れさせなかった、と言うことはできるでしょう。
(消費を増やすには力不足)
ただ、この水準で、消費を増やし、経済再生を促す原動力になるのか、と言うと、それは、力不足と言わざるをえないでしょう。
日本総研は、過去の賃金上昇とGDPなどのデータから、
「名目2%の成長率を達成するためには、毎年、最低でも、ベア=基本給を1%ずつ上げていかなければいけない」と試算しています。
これは、政府がデフレ脱却・経済再生のために掲げている成長率3%より低い目標ですが、それでも、おととしの大企業のベアの実績は、せいぜい0.4%の伸び。1%より低かった分、去年は、その低い水準から0.6%の伸び。今年は、さらに、低い伸びと、目標との差は広がるばかりになっています。
そう考えると、今回の春闘は、やはり、期待はずれ。もう少し上げられた企業も多かったのではないか、というのが率直な印象です。
【春闘減速の要因】
では、なぜ、賃金引き上げの流れが減速したのか。要因を見て行くと、組合と経営側、それぞれの「弱気」が浮き上がってきます。
(組合側の責任)
まず、組合側については、そもそも、要求が低かったという点です。政府の後押しもあったのに、自動車や電機の要求は、去年の半分以下の水準でした。今年は、中小の底上げに力を入れたい。高い要求をすると、中小企業がついてこられず、格差が広がってしまう、というのが理由でした。ただ、企業の利益の水準、そして、身近な食料品などの値上げが続いていることを考えると、働く側としては、納得がいかない。経営側の顔色を見て、要求を引き下げた弱腰ではないか、と受け止めた人も多いのではないでしょうか。
(企業の責任)
そして、経営側。低い要求よりさらに回答を引き下げた。その理由としては、「中国経済の低迷や円高で、経営の先行きが不透明になってきた」ことや、「物価上昇の勢いが弱まっている」ことをあげています。
ですが、海外が厳しいのなら、なおさら、国内の消費を増やすことが大事になってきます。また、円高と言っても、一時期の一ドル=80円を切る水準と比べると、はるかに円安です。金融緩和や原油価格の下落という、多くの企業にとっての追い風も吹いています。この程度の逆風に、身をすくめるようでは、経営に自信が持てていない証拠。これまで、円安頼みの経営で、本当の意味で、企業の体質を強くできていない、ということを示しているのではないでしょうか。
また、物価が上がっていないので、賃金を上げなくても従業員が困らないという、企業の姿勢こそが、デフレを招いてきたと指摘されています。賃金から物価が上がった分を差し引いた実質賃金は、去年も減って、4年連続のマイナスです。物価より先行して、賃金をあげていかないと、いつまでたっても、消費は増えず、デフレ脱却は果たせません。
(アベノミクスのほころび)
さらに、一歩引いてみると、円安や法人税の減税で、まず、企業を潤わせて、賃金や投資に回してもらうというのが安倍政権の狙いでした。ですが、現金預金をこれだけ増やしながらも、狙い通りに賃金や投資が増えて行かない。そのことは、アベノミクスのほころびを表しているとも言えるのではないでしょうか。
【格差是正は?】
さて、組合側が掲げていた格差の是正は、どうなったのでしょうか。
(非正規底上げの動き)
大企業を含めて、40%近い人は、非正規社員の立場で働いています。この点については、
▼ KDDIが、非正規社員の賃金引き上げ幅を、正社員の10倍以上にしたほか、
▼ トヨタやカルビーも2倍にするなど、底上げをはかろうという動きが、一部、でてきました。こうした動きを、広げて行くことは、今後の課題です。
(中小企業はこれから)
一方、働く人の70%が勤める中小企業では、これから交渉が本格化します。
帝国データバンクが1月に行った調査をみてみると、およそ8200社の中小企業のうち、何らかの形で、賃金を引き上げると答えた企業は、47.3%。去年よりおよそ2ポイント減りました。一方、わからないと答えた企業は、6ポイント近く増えています。
人手不足に対応するため、賃金を上げなければいけないのはわかっていても、経済情勢を見て、躊躇する経営者が増えていることがわかります。例えば、低い金利を活用して、古くなった設備を新しくしたり、ロボットやITを導入したりして、生産性を上げる。あるいは、増え続けている外国人観光客向けの新しい製品やサービスを開発する。そうした取組をすることで、なんとか、賃金引き上げの動きを進めてほしいと思います。
【まとめ】
経済を取り巻く環境は、厳しさを増しています。ですが、ここで、経済再生への流れを途切れさせないためにも、中小企業などの賃金底上げ。そして、来年以降も、継続的に賃金が上がることが欠かせません。今後の企業の取り組みが、ますます重要になってくると思います。
(今井純子 解説委員)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/240106.html#more
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