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レイバーネット総会報告 : ボトムアップの運動で三分の二を阻止しよう!〜中野晃一さん熱く語る
http://www.labornetjp.org/news/2016/0312shasin
2016-03-13 17:41:46 レイバーネット日本
3月12日のレイバーネット総会は約30人の参加だったが、大変刺激的な集いだった。第一部の会活動に続いて、第二部は中野晃一さん(立憲デモクラシーの会/写真)の講演で質疑を含めてたっぷり2時間行った。かれは、90年代から右傾化した日本政治の流れを具体的にわかりやすく展開。安倍政権の暴走や民主党瓦解の問題点がくっきり見えてきた。シールズとともに国会前で声を上げた中野さん。シールズの学生が名前を名乗り、たどたどしくても自分の言葉で思いを語る姿に感動し励まされたという。それは「民主主義が生まれる出産の場に立ち会った気持ち」と表現した。「自分の頭で考え行動する若者」が登場したことの意味は大きく、総がかり行動の成功と相まって「リベラル左派の反転の芽」が出てきたと語る。そして、そうした「市民の力」が野党共闘を押し上げてきた。「しかし現実は甘くない。参院選で改憲勢力が三分の二をとる可能性は大きい。ボトムアップの運動で絶対に三分の二を阻止しよう」と熱く語った。
「これから無関心層にどう広げたらいいのか?」という質問に、中野さんはこう答えた。「シールズの学生と一緒に活動して学んだことがある。私たち学者は声明文などつくったらそれで終わり。これは正しいから伝わるはず。わからないのは相手が悪い、というところで終わっていた。しかしシールズの学生は声明をつくるだけでなく、それをどう伝えるかということを何日もかけて議論する。どんなチラシやパネルにするか、文字の色、フォント、デザインはどうするか、どうしたら人々の興味をひくかを考えている。つまり相手に教えてやるという姿勢ではなく、無関心の相手をリスペクトして一緒に考える姿勢だ。こうしたことを私たちも学ばなくてはいけないと思った」。この話は、レイバーネットも「伝える」ということに力をいれている運動体であり大変刺激を受けたものだった。
総会後の二次会も中野晃一さんの講演の話で持ちきりだった。そのなかでこうした指摘もあった。「中野さんの話はそのとおり。しかしレイバーネット的にはもう一歩すすめたい。トランプやサンダースがアメリカで伸びているがその核心は“雇用問題・貧困格差問題”である。私たち日本も同じ状況を抱えていて、平和・人権だけでなく雇用貧困問題に踏み込んで訴えていかないと勝てない」と。もっともな指摘であり、いちどこのテーマで例会をしようという話に発展した。(M)
<講演要旨>
レイバーネットの松原さんたちとの出会いは、10年前になる。第一次安倍政権のときだ。当時は自分が街頭に立つなど思ってもいなかった。こんにちの情勢の位置づけが大事だ。80年代、日本の保守のあり方が変わった。大転換と言える。これまでは「カネで解決する政治」だった。昨年夏からの抗議行動が成功した理由は、一昨年の12月に発足した「総がかり行動」の存在がある。これは画期的だ。労働運動の右傾化のなかで、連合左派と共産党の連携が実現した。市民社会におけるリベラル左派の反転攻勢が現在の情勢だ。
■保守政治の劣化
一方で、保守政治が劣化している。革新勢力も弱体化した。90年代を通じて政権の中枢を牛耳っていたリベラル派「宏池会」の支配が解体していった。カネで解決する政治が、小泉政権の登場で終焉した。「新自由主義」は経済だけでなく、政治手法をも変えていった。CEO制に見られるような大企業エリートに迎合する規制緩和と、紛争の事後チェック制へと移行した。対をなす弱者救済の官僚制までが、「政治主導」によって崩壊した。民主党がチェック機能の役割を果たすはずだったが、民主党すら政治の舞台から退場した。だが、新自由主義は絵空事に過ぎず、単なる寡頭支配である。 自民党には今、ライバルがいない。首相自身が堂々と原発を売り出すほど、政治が劣化している。チェックが効かない。「改憲か護憲か」という前に、「立憲か非立憲か」という選択を余儀なくされるまでに、議会主義の形骸化と劣化が進んでいる。
■弱さを認める強さ
シールズの若者たちには、自分たちの「弱さを認める強さ」がある。ひたすら強いフリをする安倍とは真逆だ。もとより女性たちは、周囲を暴力的な男たちに囲まれて生きてきた。だから何とかうまくやろうと「外交努力」をしてきた。威張る男たちが中国や北朝鮮の脅威を言うのはおかしい。女には女の平和主義がある。シールズのスピーチには、出産現場に立ち会うようなときめきがある。古い世代のように「正しいこと」を押しつけない。みんなが元気になる。生まれたての平和主義だ。市民の新しい連帯表現として、他者性や多様性を認めること。日本もデモができる社会になった。これまでの運動の成果を、どう国会に持ち込むか。それが課題だ。リベ ラル左派の反転攻勢の始まりだ。
<深まる議論>
講演後の質疑応答では、戦前からの「アジア主義」が日本の保守本流を支えてきたが、冷戦後の政治家と外務省官僚はアメリカ追随一辺倒。アジアをまったく無視している。それが戦後の「安倍談話」にも示されていること。第一次安倍政権の失敗で、「日本会議」はパニックになり、以後入念な準備をして第二次安倍政権を登場させたことなど、質問者への丁寧な解説があった。
そのうえで中野さんは、「今の自民党はデフォルト与党だ。『同一労働同一賃金』など、心にもないことを次々と言う」。「新しい言葉を生み出せば、メディアが自動的に宣伝してくれる。これに対し、野党は対案を持ちようがない」と指摘。また、「現在の選挙制度には復活当選があり、有権者の信任の有無のかかわらず、候補者がまったく反省しないという致命的な欠陥がある」。「今夏の参院選をにらみ、これまで躍進を続けてきた日本共産党が、野党共闘優先で候補者を取り下げるなど、思い切った決断をしている。市民派は共産党の態度をもっと称賛しなければならない」と強調。
「自民党は巧妙な争点隠しで選挙に勝ち続けてきた。これに対し私たちは、安倍首相の『感じの悪さ』や、『このままでは日本が危ない』という危機感を徹底的に煽って支持を増やすことも必要だ」と語った。中野さんは最後に、「市民社会に根ざした野党を作り議会に送り込む、というボトムアップの作業が課題になる。これは中・長期的なプロジェクトになるだろう」と提起した。(報道部・Y)
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