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後藤健二さん殺害事件、ISと安倍政権
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2016-03-12 19:27:51 【現代と思想】〜ジャーナリスト精神
後藤健二さん殺害事件、ISと安倍政権
櫻井 智志
ISに逮捕されたフォトジャーナリスト後藤健二さんは、母親の控えめで誠実な呼び掛けにもかかわらず、殺害された。
そして、その背景に驚くべき事態があった。安倍政権は、なんら捕虜救出など考えていなかった。しかもアメリカに忠実なしもべとなることを一貫した日本の「政策」としてとり続けた。
小説の形をとりつつ、孫崎享氏の以下の文章は、事実を伝えている。安倍(=麻生=菅)政権は、国民の生命と生きる権利を守ることよりも、アメリカのご意向を尊重しご機嫌を損ねないことを第一としたのだった。
安倍政権やその亜流政権が続くのならば、今後も同様のことは起こりうる。もっと頻繁に。
【孫崎享のつぶやき】
『小説外務省U陰謀渦巻く中東』
何を国民に伝えたいか。ISの後藤健二氏拘束で、日本政府はお金を払うつもりも、ISと交渉するつもりもなかった。米国に指示され、米国に媚をうる、それで対応
2016-03-12 07:034
『小説外務省U 陰謀渦巻く中東』を出した。
『小説外務省T尖閣問題』と同じく、日本の大手マスコミが報じない確信を日本国民に伝えることを最大の問題の狙いとしている。
その意味で、今回の重点はISによる後藤健二氏殺害事件。
関連の引用部分
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麻生太郎副総理兼財務相は「身代金を支払うために政府予算の予備費を使う予定はない。テロに屈しない」と言います。殺してもいいよという事でることし、
西京寺はギュル大使の構想が生かされなかったのは非常に残念だと思っていた。
だから、日本政府が、人質解放にどのような動きを取ったか、誰よりも関心があった。残念ながら、西京寺は東京にいない。テヘランだ。日本の新聞は早くても2,3日遅れだ。それで日本の情報はネットに依存している。
西京寺は目を疑うような記事があった。1月23日朝日新聞デジタル版は次を報じた。
「麻生太郎副総理兼財務相は23日の閣議後の記者会見で“テロリストの要求をのめば、テロリストの要求に屈するのと同じこと”と語った。記者からの“身代金の支払いもテロに屈することに含まれるのか”との質問に答えた。仮に身代金を支払うなら政府予算の予備費を使うのか、という質問には“(テロに)屈する予定がない”と述べた。」
西京寺は「なんだこれは!」とつぶやいた。
身代金支払いなら、財務省が関連する。その大臣がお金を出す方針はないといっている。
まだ人質は捕まっている。その条件はのまないと言っているのだから、「殺してくれ」と言っているのも同然だ。
報道には何の怒りも感じられない。「テロに屈しない」ことが崇高な目的のように書いている。(省略)
麻生氏発言が影響したかはわからない。しかし.ISは身代金要求から人質要求に変えた。(省略)
西京寺はイランの赴任にあたって、過去の人質事件での日本政府の対応を調べておいた。イランでは、邦人が人質になるケースは十分にある。
最も代表的なのは1977年のダッカハイジャック事件である。
羽田行き日本航空472便がムンバイ空港を離陸直後、日本赤軍グループ5名によりハイジャックされた。犯人グループは600万ドルの身代金と日本で服役および勾留中の9名の釈放を要求し、これが拒否された場合、または回答が無い場合は人質を順次殺害すると警告した。
日本政府は10月1日に福田首相が「一人の生命は地球より重い」と述べて、身代金の支払いと、超法規的措置として獄中メンバーなどの引き渡しを決断した。「テロに屈しない」という言葉は吐かれていない。
西京寺には麻生財務大臣の発言は解せなかった。公に「お金を出さない」と言えば殺される危険性がある。何故そんなことをしたのか。
米国は身代金を出さないという方針をもっている。ふと、「米国が圧力をかけたのでないか」と思った。
米国国務省のサイトを見た。ここには、国務省報道官が日々行う「デイリー・ブリーフィング」が掲載されている。
22日サキ報道官との質疑応答があった
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問:日本に対する身代金要求についてあなたは何か助言がありますか
サキ氏:あなた方は、「身代金支払いは米国市民に危険をもたらす」という我々の考え方になじみがあると思います。
身代金支払いは我々が支持する政策ではありません。
日本は我々の姿勢を理解していると考えます。
問:身代金を支払うのは望ましくないことを告げるために、日本側と接触をもってきましたか。
サキ氏:我々は個人的に我々の立場を伝えてきています
問:日米間の具体的連携があるか
サキ氏:ご存知のように、国務長官は岸田外務大臣と2日前話しています。
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やはり、米国が絡んでいたのである。
麻生大臣は日本国民に向かって述べたのではない。米国に聞こえるようにしゃべったのだ。「私は貴方方の指示を守っていますよ」と公の場を使って伝達したのだ。
西京寺は後藤氏の殺害後、日本の世論がどのような反響を持ったか、調べていた。思いがけない報道があった。
[東京 2日 ロイター] - 菅義偉官房長官は2日午後の会見で、過激派組織「イスラム国」とみられるグループに日本人2人が殺害された事件に関して、政府としては身代金を用意せず、犯人側と交渉するつもりはなかったことを明らかにした。
イスラム国は1月20日にインターネット上に投稿した映像の中で、拘束していた湯川遥菜さんと後藤健二さん解放の条件として、身代金2億ドルを要求していた。菅官房長官は会見で、身代金を用意していたかについて記者から問われ、“それは全くない。100%ない”と明確に否定した。さらに、イスラム国と交渉する気は“全くなかった”」と述べた。」(省略)
湯川氏が拘束されてから、日本政府はあらゆる手段を探して人質解放につとめるといったはずである。
西京寺は「菅官房長官が何故、身代金を用意していたかについて記者から問われ、“それは全くない。100%ない”と明確に否定し、イスラム国と交渉する気は“全くなかった”」と述べたかを考えた。
政府は国内向けには「ありとあらゆる手段を模索する」と言ってきたはずである。菅官房長官だって自ら、「邦人の早期解放にむけ最大限の努力を尽くす所存であります」と述べていたはずである。それを全面否定することを何故言ったかを西京寺は考えた。
西京寺は結論を持った。
「これは日本国民向けではない。麻生大臣と同じように、米国向けに述べたんだ。私は貴方の指示通りに実施しましたよ“といったのだ。日本政府は日本国民に責任を負う政策を行っているのではなくて、米国に責任を負う政治をやっているんだ。それがここでもでたのだ」
西京寺は驚かなかった。
日本は最早、アメリカの指示でしか動けない国になっている。
国民を守るために外交を行い意思はない。
ただただ、米国に言われたことを実施する、こういう国になっていた。それは西京寺がずっと経験してきたことだった。(省略)
西京寺は後藤さんの殺害から数日たっても、インターネットで、IS人質殺害事件で何か新しい記事がないかを探した。単に新聞社のサイトを見るだけでなく、ソーシャルメディアを追っかけた。
そして一つの記事に出会った。3月3日付神奈川新聞記事である。
記事は「「過激派組織“イスラム国”による邦人人質事件で2人が殺害されてから1カ月が過ぎた。テロを含めた国際情勢にどう向き合っていくのか−。米有力紙ニューヨーク・タイムズ東京支局長のマーティン・ファクラーさんは、“日本が重大な局面を迎えているにもかかわらずさほど論議が交わされていないことが不思議でならない。その背景にメディアが機能していないことを指摘する”と書きだしている。
そして、「湯川遥菜さん、後藤さんの殺害が予告された後も、安倍首相は“テロに屈しない”と強硬姿勢を崩さず、最終的に2人は殺害されました。私にとって、政府がテロリストとの交渉を拒んだことは、何の驚きもありませんでした。安倍首相は今回の事件を“国民が犠牲になったが、テロリストとは交渉しなかった”と米国や英国にアピールする材料にするつもりだろうと思っていました」と書いていた。
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