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安倍晋三首相
安倍首相「消費増税なければ、アベノミクスはうまくいっていた」「失敗であった」
http://biz-journal.jp/2016/03/post_14174.html
2016.03.10 文=渡邉哲也/経済評論家 Business Journal
2016年に入り、世界同時株安など世界経済の縮小がささやかれている。そして、それは日本の消費税増税にも大きな影響を与えつつある。
周知の通り、安倍晋三政権は17年4月から、消費税を現行の8%から10%に引き上げる予定だ。これは、14年4月の5%から8%への増税に続く流れである。
しかし、8%に引き上げたことによって、日本経済は消費が落ち込み、安倍首相自身も「消費税を8%にしなかったら、アベノミクスはもっとうまくいっていただろう」という旨の発言をしている。また、首相の側近である菅義偉官房長官も、最近は消費税増税について否定的な言動が目立つ。
筆者が伝え聞くところによれば、首相官邸側は「できる限り、消費税増税はしたくない」と考えているようだ。前述したように、前回の増税によって日本の景気回復が遅れ、アベノミクスの先行きが不安定になりつつあることは間違いないため、官邸側の判断もうなずける。
そして、安倍首相と日本銀行が目標としている物価上昇率2%には、現時点で到達できていないどころか、逆にデフレがいまだに改善されていない状況だ。
15年4月、安倍首相は「来年の2月までに物価目標2%を達成できないのであれば、アベノミクスは失敗であったと言わざるを得ない」という旨の発言をしている。
つまり、現状を客観的に見る限り、アベノミクスは事実上の失敗に終わったといえるわけだ。そして、そんな状況下において「では、消費税の増税はどうするのか」という問題が、自民党内で大きくクローズアップされている。
■消費税増税は延期、衆参ダブル選挙か
現在、民主党は維新の党との新党設立に向けて動いているが、枝野幸男幹事長は消費税増税に対して反対を表明している。
そもそも、消費税の増税は民主党政権下で決められたものであり、当時与党だった民主党、野党だった自民党、公明党の3党合意に基づく政策である。そういった経緯を踏まえて、「民主党は、消費税増税に反対しない」という前提があったわけだが、これが根底から覆された。
そして、3党合意に参加していない維新の党側は、当然ながら増税に反対するだろう。また、現在は共産党、社民党、生活の党と山本太郎となかまたちなどが「野党連合」というかたちで選挙協力すると報じられているが、野党連合が実現した場合、「消費税増税に賛成です」というのはあり得ない。
共産党はかねてから消費税増税に否定的であり、社民党も同様である。政策合意をする上で「消費税増税に反対」というのは彼らの命題であると同時に、選挙戦術として合意できるのは、その部分以外にないと思われる。
7月には参議院議員選挙が予定されているが、選挙の際、消費税増税に対して「賛成」と「反対」という二者択一になった時、多くの国民は「反対」を公約に掲げるほうを選ぶだろう。そのため、自民党・公明党が「賛成」を選ぶというのは現実的ではなく、「反対」の立場で選挙戦を戦わざるを得ない。
だからこそ、昨年末頃から「消費税増税を延期して、衆参ダブル選挙」という予想が生まれてきているわけだ。また、それを受けて、各派閥や国会議員に「選挙準備をしておくように」といった通達が出たという話も聞こえる。
■4月の衆議院解散総選挙もあり得る?
実際、衆参ダブル選挙はあるのだろうか。現実的な選挙日程を考えてみよう。1年で最も大切な政治日程は、予算の成立である。新年度の予算が成立しなければ、4月1日からの公費の支出が止まり、日本経済に大きなダメージを与えてしまうからだ。
3月1日、平成28年度予算案が衆議院を通過した。憲法規定の「衆議院の優越」により、参議院に送られてから30日で自動成立するため、年度内の3月末には成立する見込みだ。
しかし、予算成立後にも大きな仕事がある。予算とともに、予算関連法案を通す必要があるのだ。これは、赤字国債発行のための特例公債法案や、かつてガソリン税の暫定税率が問題になった税制改正法案などが当てはまるものである。
これは予算案と違って自動成立の規定がないため、参議院で可決する必要がある。そして、成立しないと政治的に不安定な状況を生んでしまう。
現在、参議院の議席は与党が過半数を握っており、容易に成立させられる状況ではあるが、あまりに急げば、野党から「強行採決だ」と批判の声が上がることは間違いない。
そのため、「しっかりと議論をした上で、予算案および予算関連法案を早期に成立させる」というのが、今国会の役割だ。安倍首相が、予算案通過後に「来年度予算案の早期成立こそが、最大の景気対策」「1日も早い成立を目指して、緊張感を持って取り組んでいきたい」と語っているのも、そのためである。
そして、予算が成立した後、「では、消費税増税についてはどうするか」という議論が本格化するものと思われる。
さらに、日本は今年、もうひとつ国際的かつ大きな政治日程を抱えている。それは、5月26、27日に三重県で行われる第42回先進国首脳会議(伊勢志摩サミット)だ。当然ながら、政治的な空白を生んでしまうため、サミット期間中は選挙を行うことができない。
また、サミット開催前には政治的に安定した体制を見せておかないと、日本は国際社会から批判の的になってしまう。そういった事情を鑑みた時、まず「サミットの2週間程度前には、選挙を終わらせておく」という選択肢がある。つまり、電撃的な「4月に衆議院解散→総選挙」という流れだ。
あるいは、サミット開催後に選挙を行うという選択肢である。この場合、前述した衆参ダブル選挙という構図になるわけだ。より具体的な、消費税増税延期と選挙をめぐる政府と財務省の駆け引きについては、次稿で詳しく述べることとしたい。
(文=渡邉哲也/経済評論家)
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