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衆参同日選の可能性「ほぼゼロ」〜安倍・菅両氏を取材して、この結論にたどり着いた
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48117
2016年03月08日(火) 田崎 史郎「ニュースの深層」 現代ビジネス
■安倍・菅両氏と話して得た感触
来年度予算案が衆院を通過すると、その後の政局の見通しを書くのが政治報道の習わしである。各新聞社の記事を読み比べると、各紙がどんな政局観を持っているかが浮き彫りになる。今年の場合、7月の参院選に合わせて衆院選を行うかどうか、すなわち衆参同日選の有無について見立てが真っ二つに割れた。
衆院通過翌日の今月1日付朝刊で、同日選の可能性をもっとも強く示唆したのは朝日新聞だった。「予算案通過、年度内に成立」という型通りの主見出しのわきで「同日選・改憲にらむ首相」という見出しを取った。朝日は今年1月1日付朝刊で「首相、衆参同日選も視野」と書いて以来、一貫して同日選があり得るという視点で報道している。
朝日以外で同日選に触れたのは日経、産経の両紙だ。日経は「消費増税先送り 衆参同日選 首相判断、サミット節目」と、産経は「永田町 ダブル選に照準」とそれぞれ書いている。両紙が同日選の可能性を「永田町の観測」としているのに対し、朝日は本文で「安倍晋三首相が衆参同日選も視野に入れ」と書いている。主語が安倍となっていることが両紙と異なっている。
これに対し、読売、毎日の両紙は同日選に触れず、参院選と書いた。読売は「観測」を報じることはあっても、「首相の意向」として書いたことはなく、朝日とは視点がまったく違っている。
「観測」が広がる根拠は確かに多い。以下、列挙すると――。
@安倍が衆院解散の事実上の前提となる衆院の定数削減・是正に積極的に取り組み、今国会での成立を目指している。
A安倍は憲法改正について「在任中に成し遂げたい」と述べるなど、選挙の争点づくりに励んでいる。
B来年4月に予定される消費税率10%への引き上げる条件について、それまでの「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態」から「世界経済の収縮」と微妙に言い回しを変えた。内外の有識者による「国際金融経済分析会合」も設置すると発表した。これらは5、6月ごろに再増税を断念し、それを同日選で問う布石ではないか。
C沖縄県の米軍普天間飛行場移設をめぐる訴訟で、国が県側と和解したのも基地問題の争点化を避けるためではないか。
これらを「兆候」ととらえ、民主党政調会長・細野豪志は5日、静岡県内の会合で「もはやダブル(同日)選は必至だ」と指摘した。
しかし、どんな兆候、観測があっても、解散権を持っているのは安倍だ。安倍本人と、一心同体で動く官房長官・菅義偉がどう考えているかがカギだ。私は二人とそれぞれ話している。だが、二人とも同日選に極めて否定的だ。言葉遣いはともあれ、彼らの思考回路をたどってみたい。
■3分の2を確保することは、実は難しい
彼らが最重視しているのは、衆院で現在公明党と合わせ3分の2の勢力を維持していることだ。これが国会運営の大きな重石になっていることを、彼らは熟知している。
たとえば、昨年秋、安全保障関連法の国会審議で、参院自民党が採決やむ無しという判断を固めた時のこと。党執行部が参院が採決しなければ否決したとみなし、衆院で再可決できる「60日ルール」(憲法59条)の適用を検討し始めたのがきっかけだった。
衆院での3分の2は定数475なので317議席。公明党は30議席前後と仮定すると、自民党は287議席以上獲得しないと、3分の2には達しない。
小選挙区比例代表並立制導入以降、衆院選における自民党の獲得議席は291(14年12月)、294(12年12月)、119(09年8月)、296(05年9月)、237(03年11月)、233(00年6月)、239(96年10月)だった。
290を超える議席数を2回連続して獲得したことは中選挙区時代を含めてない。現在の議席はめったに得ることができない「宝物」であり、安倍政権にとって究極の政権安定装置と言える。
「今、解散したら、自民党の議席は20〜30減るだろう。公明党を合わせて3分の2を確保するのは非常に難しい」
これが選挙のプロたちの読みだ。そんな可能性がある衆院解散・総選挙を断行して、参院選における自民党をバックアップする必要性があるのか−。ここが解散を行うかどうかの判断のポイントだ。
■「虎の子」を危険にさらす必要はない?
過去2回、7月に行われた参院選の自民党議席は13年が65、10年が51。このうち比例代表当選者は13年が18人、10年が12人だった。
10年は自民党が野党時代のことで、業界団体の多くが自民党から離れていた。それが政権復帰後に戻り、かつ現在の政党支持率や参院選投票動向で自民党は2位民主党に3倍前後の差を付けている。このため、よほどの異変がなければ、比例代表で自民党は「16〜18議席を獲得する」とみられている。
選挙区選では、共産党が改選数が1の「1人区」で候補者を降ろし、民主党に協力するため、宮城、新潟、長野、滋賀、三重、岡山などで接戦となりそうだ。しかし、比例議席の上積みによって、自民党が50議席台半ば〜60議席程度を獲得するのは可能だ。非改選議席を含めると、自公で過半数を占めるのは確実で、自民党が27年ぶりに単独過半数を取るのも夢ではない。
こうした情勢を踏まえ、安倍、菅は現段階で「虎の子」の3分の2を危険にさらしてまで、同日選に踏み切る意味はないと考えている。これが真実だ。(敬称略)
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