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甘利氏の後任の石原氏(左)と談笑する安倍首相 (c)朝日新聞社
安倍政権「7月参院選、12月総選挙で大勝」構想崩す大票田・農協の逆襲〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160302-00000003-sasahi-pol
週刊朝日 2016年3月11日号
7月の参院選挙は、衆院解散でダブルとなるのか、それとも──。永田町の住人たちが浮足立っている。
2月26日、菅義偉官房長官は記者会見で、来年4月の消費税率10%への再引き上げについて「税率を上げて税収が上がらないのなら、消費税の引き上げはあり得ない」と述べた。霞が関では、「2度目の消費増税延期解散で、ダブル選挙か」との臆測が広がる。だが、自民党国対幹部は、安倍首相の本音をこう打ち明けた。
「ダブル選挙はない。公明が嫌がっている。軽減税率であそこまで公明に譲歩したのは、参院選で勝つため。ダブルになると投票所で、衆参の両方で選挙区と比例の候補者の名前を自民、公明と有権者が書き分けなければならず、票の配分が難しく、リスクがある」
現実的なのは、11月に臨時国会を開き、「憲法改正」と「消費増税の再延期」をぶち上げ、解散。12月に総選挙を打つことだ。
「そして橋下徹前大阪市長が改憲を旗印におおさか維新を率いて、出馬。自、公と合わせて3分の2の議席を目指す。すると、東京五輪がある2020年の12月まで衆院選をしなくていい。安倍さんが圧勝した過去2回の衆院選はいずれも12月。ゲンを担ぎたいとの思いもあるようだ」(同)
自、公、おおさか維新の連携は水面下で着々と進んでいるという。
「1月24日の宜野湾市長選挙では予想に反し、翁長雄志沖縄県知事が推した候補が自民推薦候補に大差で敗れた。その要因は公明とおおさか維新の票が自民推薦候補に大量に流れたから。菅さんは総選挙を見据え、公明だけでなく、おおさか維新とも裏で連携している」(自民党議員)
一方の野党は、にわかに吹き始めた解散風への対応に追われている。
共産党は2月22日、参院選の勝敗の帰趨を決める1人区で候補者を取り下げる方針を決めた。26日には、民主の岡田克也代表と維新の松野頼久代表が会談し、3月中に両党が合流することで正式合意した。それでも、いまだ展望は見えない。維新幹部が嘆く。
「民主とは対等合併ではないから、旧みんな系など不満分子は多い。江田(憲司・前代表)さんもそうで、新党のネーミングで民主との協議を担うことになったから、またゴタゴタする。選挙区調整も手つかずのままだ」
野党の体たらくを尻目に、着々と進む安倍首相の選挙シナリオ。ところが、その戦略を根底から覆す組織がある。正組合員と准組合員を合わせて1千万人以上の組織で、自民党の大票田である農協だ。
2月下旬、都内某所で全国各地の地域農協幹部ら約50人が集まる勉強会が開かれた。テーマはTPP。講師として招かれた海外の専門家は、TPPが発効すれば、農業だけでなく医療や金融にも大きな変化が起きると解説。その会の最後で、ある地域農協の組合長が発言を促された。その言葉は、怒気を帯びていた。
「農業団体から(参院選で自民党の)候補者を出すなんて愚かだ。戦いはこれからだ。我々は、組合員にお願いし、自民党議員を減らさないといけない」
農協は、参院選の全国比例区で組織内候補を1人擁立するが、それについても「推薦の取り下げを求めていく」(組合長)という。
安倍政権による“農家いじめ”とも思える農政改革に、農協組合員から怒りの声が噴出している。さらに、自民党議員の稚拙な発言と行動の数々も目立つ。
TPP交渉の旗振り役だった甘利明氏は、“賄賂疑惑”で辞任。ドタバタの中で、失言癖のある石原伸晃氏がTPP担当相に選ばれたが、甘利氏からの引き継ぎは電話でわずか20分だったという。ある省庁の官僚は、その“ド素人”ぶりに不安を募らせる。
「TPP政府対策本部でまとめ役をしないといけないのに、務まるのか……」
支える高鳥修一内閣府副大臣も情けない。高鳥氏は過去にTPPについて「平成の売国」と述べるほどの反対派だった。それが副大臣就任で推進派に転向。甘利氏の代理でニュージーランドの署名式に参加した際は、署名式後に現地の警備体制を写真付きでブログに暴露し、厳重注意を受けた。農協幹部は、あきれている。
「自民党の政治家は、農家を『既得権益』と言うが、能天気に世襲で政治家をやっている人間こそが日本最大の既得権益者じゃないか」(本誌取材班 西岡千史、亀井洋志/上垣喜寛)
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