http://www.asyura2.com/16/senkyo201/msg/781.html
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※関連参照投稿
「発送電の分離 改正案が衆院本会議を通過:本旨は料金の自由化、電力会社の利益のため大企業は安く一般家庭は高くなるという話」
http://www.asyura2.com/15/senkyo185/msg/368.html
「“旧電力”9社で発電総量の96.5%シェア:その自由化が電力会社に対する“勝手気まま優遇政策”になると理解されぬ日本」
http://www.asyura2.com/12/senkyo141/msg/816.html
「「電力自由化」と電力供給活動の特殊性:「電力自由化」は電力会社の勝手気ままな利益追求を許しかねない政策」
http://www.asyura2.com/12/senkyo142/msg/113.html
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電力自由化
(上)得するのは誰? 安さの恩恵に偏り
「そんなに安くなるなら乗り換える」。2月初旬、神奈川県大磯町に住む主婦(64)は営業担当者が持参した料金メニューを見て電力会社の切り替えを即決した。東京電力に払っている電気代は年約18万2000円。石油元売り最大手、JXエネルギーの「ENEOSでんき」に契約を切り替えれば、1万6000円ほど減らせるとわかったからだ。
▼都市ガスとセットでお得に(東京ガス)
▼ガソリンが1リットル10円引き(昭和シェル石油)
▼携帯と一緒で5%安く(KDDI)
▼ケーブルテレビのお客様は電気も(ジュピターテレコム)
これまで東電など大手電力10社が独占してきた約8兆円の家庭用電気の市場。門戸が開かれた途端、「規制に守られてきた大手電力よりも安くできる」と各社がこぞって名乗りを上げる。
料金プラン乱立
カカクコムは1月、居住地域や家族の人数などから簡単に電気料金を比較できるサイトを開設した。乱立する料金プランの内容は複雑。生活実態に合った電気を選ぶのはもはや至難の業だ。「2009年の家電エコポイント導入時以来の盛り上がり。電気も家電と同じように比べて選ばれる商品になった」(サービスマーケティング部の下宮慎平マネージャー)
経済産業省が小売電気事業者として登録した企業は169社に上る。しかし、自由化がもたらす価格競争の恩恵をすべての消費者が等しく享受できるわけではない。
「電気使用量で上位3割の顧客を死守せよ」。東電社内では小売り部隊に号令がかかる。現行の電気料金は使用量が多い世帯ほど高く、利幅も大きい。逆に使用量が少ないと、赤字で供給している例もある。東電が導入する値引きプランは一戸建てに住む4人以上の家族など、確実に利益を生む得意客向けだ。
単身者不利に
全世帯に供給する必要がない新電力も「ボリュームゾーンを狙う」(新電力大手)。値引きプランの対象は平均的な月300〜400キロワット時を上回る使用量が中心だ。日本の総世帯の半数は電気をあまり使わない単身や夫婦のみ。使用量の多寡で値引き額には年1万円以上の差ができる。
電力自由化の温度差は世帯間だけでなく、地域間にも存在する。
経産省の認可法人がまとめた電力切り替え状況によると、2月12日時点の申し込みは約14万件に達した。ただ、96%は東電と関西電力の管内に集中し、北陸は300件、四国は200件、中国はゼロといういびつな状況にある。地方は電力小売りに新規参入する事業者が少なく、自由化の認知度も低いためだ。
新電力169社の本社所在地も関東、関西、中部で8割を超える。人口が集中する都市部を狙う傾向は顕著だ。地方の大手電力幹部は「本格的な競争が始まるまで値下げ幅を最低限に抑える」と明かす。
日本の家庭向け電気料金は東日本大震災後に約2割上がった。規制産業から自由競争への移行は値下げ圧力となり、事業者は収益重視の戦略にかじを切る。副作用として「公平感」は薄れる。
◇
4月の電力小売り全面自由化に伴い、誰もが電気を買う会社を選べるようになる。米国や韓国の2倍という料金水準は下がるのか。最前線の動きを追う。
[日経新聞2月20日朝刊P.1]
(中)早くも消耗戦 値下げの先が勝負
2月1日、横浜市の工業地帯にあるガス火力発電所が出力を約5割拡大した。規模は原子力発電所に匹敵する122万キロワット。東京ガスと昭和シェル石油が共同運営する。家庭向け電力小売りはいかに安く電気を調達するかが勝負になる。発電効率が高い最先端の火力発電を自前で増やし、値下げの原資をひねり出す。
電力自由化を受けJXエネルギーや出光興産、新日鉄住金やJFEスチールなども発電設備の増強を計画。合計規模は1000万キロワットを超える。増設ラッシュが進むなか、淘汰も始まった。
「電気は供給過剰になる。とても採算が合わない」。大阪ガスは2015年末、茨城県で検討していた石炭火力発電所の建設を断念した。出力10万キロワットの小型設備で17〜18年度の早期稼働を目指す戦略。他社の相次ぐ大型計画を受け、見直しを余儀なくされた。
大手は「越境」
約20兆円という国内の電力市場。しかし、経済産業省が予測する30年度の電力需要は13年度比で1.5%増とわずかな伸びにとどまる。限られたパイの争奪戦は必至だ。
今回の自由化で営業区域の縛りもなくなる。新電力の攻勢を受ける東京電力など大手電力は「越境」に打って出る。
東電が1月に発表した新しい料金メニューに関西電力の営業担当幹部は度肝を抜かれた。関西向け料金が関電の現行料金を約1割下回っていたからだ。全国の大半の原発が停止するなか、電源の原発比率が高い関電は懐事情が厳しい。東電幹部は「首都圏では顧客を取られる。蓄えた利益をはき出しても域外を取りに行く」と容赦ない。
関電も電力会社の変更を考える顧客の引き留めに必死だ。高浜原発3号機が稼働した1月29日、八木誠社長は「新年度のできるだけ早い時期に値下げする」と表明した。再稼働する原発が増えれば、首都圏進出による反転攻勢も視野に入る。
電気料金の8〜9割は発電や電気を家庭に届ける託送にかかるコストが占める。さらに値下げが進めば、薄利多売に拍車がかかり、消耗戦の様相は色濃くなる。
「電気でもうけるつもりは全くない」。東京急行電鉄子会社の新電力、東急パワーサプライ(東京・世田谷)の村井健二社長は言い切る。
囲い込みが目的
誰もが使い続ける電気は顧客を囲い込むための手段。グループの鉄道定期券やケーブルテレビ、クレジットカードとのセット契約で値引きを設定し、「生活サービス全般をワンストップで提供する」(村井社長)。
ガス会社や通信会社などセット販売で参入する新電力の多くは同じ狙いを持つ。日本総合研究所の滝口信一郎氏は「料金に加え、サービス面の充実を打ち出せるかが勝負になる」と指摘する。
自由化の先進国、米国で11年からガスと電力をセット販売するLPガス大手の日本瓦斯。消費者は不満を持てば、次々と電力会社を乗り換える。進出したテキサス州は新電力が60社以上に増える一方、倒産や合併も相次ぐ。日本瓦斯は保険の取り扱いなどにサービスを広げ、いまは8州に17万件の顧客を持つ。
電力はそもそも大きなもうけが出るビジネスではない。コスト競争力を磨きながら、消費者をつなぎ留めるサービスをどう打ち出すか。値下げの先の一手が問われる。
[日経新聞2月21日朝刊P.1]
(下)競争の先はバラ色か 海外では失敗例も
電力の小売り自由化をにらみ17日、経済産業省が開いた説明会。市場の番人の大役を担う電力取引監視等委員会の稲垣隆一委員は8兆円市場の開放に沸く関連産業に言い含めるように強調した。「消費者の主体的な選択こそが、電力改革の重要な推進力だ」
戦後60年以上続いた大手電力による小売市場の独占。それを崩す制度改正のきっかけは、2011年の東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所の事故だ。
震災直後の東電の計画停電は利用者に不自由を強いた。原発停止で全国の家庭向け電気料金も震災前より25%上がった。
自由化による競争で料金を下げ利用者の負担を減らさねば――。世論を意識する政府はそう判断した。「消費者の約8割が電力会社の切り替えを検討していると聞く」。安倍晋三首相は成果に自信を示すが、自由化後の世界はバラ色なのか。
不当な契約監視
政府は自由化を進めるにあたり2つの補助輪をはかせた。一つが電力監視委で、消費者に不利益を与えかねない契約などに目を光らせる。もう一つが電力広域的運営推進機関。大規模な災害時の停電などを防ぐため、電力各社による電力の融通を促す調整役だ。
これで公正な競争と安定供給への「器」がまずは整ったが、これで安心とは言い切れない。
1990年代に自由化の先陣を切った英国。新規参入が増え、料金が下がったのは当初だけ。00年代に入るとM&A(合併・買収)で発電、小売市場の寡占化が進んだ。
各社は燃料高騰を理由に値上げを繰り返し、15年の一般家庭の電気料金は04年の2.4倍に急騰。企業向け料金も欧州全体の平均より6割高となった。「もう英国で鉄はつくれない」。電力を多く消費する鉄鋼業界からは悲鳴があがる。
自由化はコストを電気料金に転嫁できた寡占市場のぬるま湯体質を変えるきっかけとなる。だが市場の監視を抜かれば、大手業者の逆襲で寡占がむしろ進みかねない。
米企業から忠告
電力の安定供給が脅かされたのは米国だ。
「エンロンのような業者に気をつけろ」。1月下旬、米カリフォルニア州。日本の電力市場への進出を促そうと電力関係者を回った経産省幹部は逆に忠告を受けた。
90年代後半に電力自由化を進めた同州。猛暑で需要が増えると、後に破綻することになるエンロンなどの電力卸売業者は価格つり上げを狙い電気を売り渋った。これが00年から01年にかけて大規模な停電が相次ぐ原因となった。
その後、ニューメキシコやアーカンソーなど多くの州が自由化の計画を撤回。米国で自由化の機運は急速にしぼんた。
自由化と両立させるべき課題はまだある。例えば国際公約となった温暖化ガスの排出削減だ。
ドイツ第3の都市、ミュンヘン市。風力など再生エネルギーを主体とする新興勢力のシェアは2割を超えた。こうした例はドイツ全土で広がる。
ただ天候頼みの再生エネの発電量は不安定。安定確保への費用増で電気料金は上昇傾向だ。
料金、安定供給、電源の構成――。そのバランスはどこにあるのか。電力自由化の号砲とともに利用者と国と業者の大いなる実験が始まる。
西岡貴司、鈴木大祐、指宿伸一郎、中戸川誠、小野沢健一、加藤貴行が担当しました。
[日経新聞2月22日朝刊P.1]
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