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平和条約を求める北朝鮮と冷戦を終わらせたくない米国−(田中良紹氏)
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14th Feb 2016 市村 悦延 · @hellotomhanks
北朝鮮の「ミサイル発射」報道を見ていると、
いつものことながら国民の不安を扇動する情報操作がやたら目につく。
北朝鮮の軍事的脅威をなくすには
冷戦によって分断された南北朝鮮の統一が最善の道であるにもかかわらず、
議論は常に目の前の危機だけに集中し問題解決の方向を示さない。
北朝鮮がなぜ核とミサイルの開発を行うかといえば「朝鮮戦争」が終わっていないにもかかわらず
冷戦体制が崩壊したからである。北朝鮮は冷戦中は旧ソ連の核の傘に守られていたが、
それがなくなった現在、朝鮮戦争を終わらせて米国と平和条約を結ぶには、
外交カードとして自前の「核抑止力」を持つ必要があると考えている。
北朝鮮は工業国であるから電力が何よりも重要で、
そのため冷戦時代にはソ連から原子力発電の技術を導入した。
しかしソ連は北朝鮮に核兵器を持つことは許さなかった。
朝鮮戦争を共に戦った中国も核兵器を持つことを許さない。
北朝鮮はNPT(核拡散防止条約)に加盟して、
金日成は核兵器を持つことに一貫して否定的な発言を繰り返した。
ところが1991年に旧ソ連が崩壊すると、
米国は真っ先にソ連に管理されていた核物質や核技術の流出を懸念する。
米国議会では連日にわたりいかに核拡散を防止するかが議論され、
中東のイラン、イラクと北朝鮮が注目されるようになった。
1993年、北朝鮮が原子力発電所の査察を拒否した事から第一次核疑惑が起こる。
クリントン大統領は発電所空爆を決意するが、第二次朝鮮戦争が起きた場合、
想定された韓国の被害の大きさに空爆は見送られ、
北朝鮮は核を放棄する見返りに各国からエネルギー資源の提供を受けることになった。
しかしこの時点で北朝鮮が核兵器を保有していたとは言えず、あくまでも疑惑の段階である。
疑惑が疑惑でなくなるのは、
いったん核放棄を宣言した北朝鮮が再び査察を拒否してNPTを脱退した2003年である。
その前年にブッシュ大統領はイラン、イラク、北朝鮮を「悪の枢軸」と呼んで
大量破壊兵器を保有していると非難し、2003年にはイラクに先制攻撃を仕掛けた。
金正日は父親と異なり核兵器を持つことに積極的になる。
2005年に公式に核保有を宣言、2006年に長距離弾道ミサイルの発射実験を行った後、
第一回地下核実験を行う。この時点で北朝鮮は事実上の「核保有国」となった。
その後、北朝鮮は3年おきにミサイルの発射実験と地下核実験を繰り返すのである。
金正恩は金正日よりさらに核とミサイル開発に積極的だ。
2012年12月に人工衛星打ち上げと称してテポドン2を発射し、
13年2月には3度目の地下核実験、そして今年になって1月に水爆と称する核実験、
2月に再びテポドン2の改良型で人工衛星打ち上げを行った。
人工衛星は地球を回る周回軌道に打ち上げられ、
BBCなどはこれを「ロケット発射」と報道している。
今回「ミサイル発射」と報道して不安を煽っているのは日本だけではないか。
これがアメリカを狙う大陸間弾道ミサイルだとすれば大気圏に再突入させる技術が必要で、
今回の打ち上げにはそうした技術がない。
しかも偵察衛星から見える固定の発射台で打ち上げられるミサイルなら
米国にとって何の脅威でもない。それをあたかも日本も狙われるかのような報道を見ると、あまりの幼稚さに馬鹿馬鹿しくなる。北朝鮮の目的はあくまでも米国と平和条約を結んで朝鮮戦争を終わらせるためである。そのための「核カード」だが両国の核とミサイルのレベルには月とスッポンの差がある。
そして北朝鮮が日本を攻撃するのにミサイルを使う必要などない。
稼働している原子力発電所の電源を止めるか、
あるいはスーツケースに入った核爆弾を東京で爆発させれば
一極集中のこの国は致命的打撃を受ける。
しかし将来に賠償金を取れる可能性のある日本の経済を破綻させても北朝鮮の利益に全くならない。
自衛隊は迎撃と称してPAC3を沖縄の宮古島や石垣島に配備したがお笑いである。
撃ち落とせるはずもないし撃ち落とす必要もない。
ただ米国を目標にしたミサイルを日本が迎撃する格好を見せないと日米同盟にひびが入る。
それを怖れているだけだ。
米国はこの打ち上げを契機に韓国にMD配備を要求した。
昔の自民党は拳銃の弾を拳銃で撃ち落とせるわけはないとMD配備に否定的だったが、
1998年に北朝鮮のミサイルが日本列島の上空を飛んだことで世論が一変し、
2003年に小泉政権が導入を決めた。
それでも韓国は導入しなかった。
それが今回の発射を受けて米国と導入に向けた交渉に入るようだ。
これに中国が反発している。
当然のことながら日韓が米国と組んで軍事的な中国包囲網を構築する一環と
受け止められるからだ。つまり北朝鮮のやる事は米国にとって誠に都合よく出来ている。
北朝鮮は米国の歓心を買うために核とミサイル開発を行っているかのように見える。
これが冷戦後に起きている東アジアの安全保障問題の核心である。
米国は「アジアの冷戦は終わっていない」と言うが、
フーテンから見れば「終わらせないようにしている」のは米国である。
南北朝鮮が対立している方が米国の利益になる。
日本と韓国に米軍基地を置く事は米国に世界で最高レベルの収入をもたらす。
また米国製兵器を売りつけ、日韓の軍隊を米軍の指揮下に置くことも出来る。
もとより米国は中国と軍事的対立をする気はない。
経済的な結びつきはそれ以上に大きいし、軍事技術面での結び付きもある。
日本人が考える以上に米中の結びつきは強い。
しかし米国はまだ北朝鮮と中国を日韓に敵視させる方が利益になると考えている。
何度も言うが北朝鮮が核とミサイルの開発にこだわるのは
米国と平和条約を結ぶのが目的である。
中国にしても米国と軍事的に対立する事など全く考えていない。
米中の軍事力には歴然たる差があるからだ。
北朝鮮と中国がそうなのにこの地域の軍事的脅威がなくならないのは
米国が「アジアの冷戦を終わらせたくない」だけの話である。
それが米国の情報操作によって日本では見えなくなっている。
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